企業においては、一般のユーザーが見るストアに自社の業務で利用するアプリを登録するというのは問題がある。また、UWPアプリ(Appx)を手動で全てのPCにインストールするのも、手間の問題で現実的ではない。そこでMicrosoftは、企業向けのストアを別に作成できるようにしている。
この機能を利用すれば、オンプレミスのサーバーにストアを作成するだけでなく、Microsoft社のクラウド(Office365のユーザー)に企業独自のストアが用意されて、そこに自社の業務アプリを登録することができる。このストアには、企業が認めた他社のアプリなども登録できるため、従業員がライセンス違反や違法なアプリをインストールしないようにすることもできる(セルフポータルで従業員が企業が認めたアプリをインストールできる)。
便利なのは、一度アプリをインストールすれば、ストアがアプリを監視しているため、バージョンアップなどがあれば、自動的にアップデートしてくれる。これは、企業でアプリを使用する場合、バージョンが異なって、セキュリティホールになったり、操作方法の問い合わせが来たときに、バージョン毎に答えを確認しなくてもいい。ストアを使えば、企業内に複数のバージョンのアプリが存在することはなくなる。常に最新のアプリがインストールされている状態になる。
Creators Updateでは、デフォルト設定では、Win32アプリケーションなどのインストールが制限されることはない。しかし、これは始まりであって、後戻りはしないと思われる。筆者自身は、Windows 7の延長サポートが終了する2020年1月を目処に、Win32アプリケーションに対する制限が強められていき、最終的に2023年1月のWindows 8の延長サポート終了時には、Windows 10で動作するアプリのすべてはUWPアプリ化して、ストア経由での配布に変わると考えている。
一部のドライバなどの配布に関しては、新たな方法を考える必要はあるが、ストアというアプリ配布のシステムを用意しても、ほとんど利用されていない状態を大きく変えるために舵を切ったといえる。
Microsoftにとっては、一般のストアで有料ソフトを販売したときには、手数料収入が入るため、できるだけアプリをストアに集めて、ストアをもっと活用してもらおうと考えているようだ。もしかすると、ストアでの手数料収入が見込めるようになれば、Windows 10 OS自体を無償で提供するという選択肢も考えられているのかもしれない。
企業は、このようなMicrosoftの流れを考えて、徐々にUWPアプリの開発、既存のWin32アプリケーションのUWPアプリ化、企業向けストアの採用などを進めて行く必要があるだろう。
特にUWPアプリに関しては、企業での開発経験値が少ないため、まだまだ試行錯誤が続くと考えられる。ただ、数年後にはUWPアプリに完全移行していく可能性があるということを思えば、今から徐々に対処していく必要がある。
この原稿を書いている時点では、Creators Updateのリリース時期は発表されていない。しかし、3月の定例セキュリティアップデートにおいて、Windows 10のWindows UpdateのページにCreators Updateに関する項目が追加された。
Insider Previewでも、新たな機能の追加は2月末からは終了して、バグフィック版の提供が行われている。また、Creators Updateのバージョン番号が1703となるといわれている。
今までのWindows 10では、リリースの年月日をバージョン番号としているため、3月中、遅れたとしても4月にはリリースされるだろう。
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