戦略5の「人財・組織力の最大化」では、「当社にとって人財は重要な財産・資産だが、さまざまな取り組みを通してNTT DATAの一員としての意識を高めることで人財の定着化を図る。成果の一例として、2024年は世界29カ国と4地域で『Top Employer 2024』として認定され、グローバル認定を受けた企業17社のうちの1社となり、人材獲得やキャリア開発、ダイバーシティー・エクイティー・インクルージョンの3つの領域で高い評価を獲得している。引き続き、社内外から見て、より魅力的な企業になるための変革を進めたい」とのことだ(図5)。
以上が、NTTデータグループが現在進めている中期経営計画における5つの戦略だが、これらの内容は他のITサービス事業者、さらにはITサービスを有効活用したいユーザーの今後の方向性にも当てはまるところがあるのではないか。
ちなみに本連載では、同社が上記の中期経営計画を発表したタイミングの2022年5月16日掲載記事で「これからのITサービスはどう変わっていくか――NTTデータの新中期経営計画から読み解く」と題して解説し、本間氏に「SIer(システムインテグレーター)はDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応していけるのか」と問いかけた。また、2023年3月27日掲載記事では本間氏に単独インタビューし、「『SIerはもう古い?』という問いにNTTデータの本間社長はどう答えたか DX時代のSIerの在り方を聞いてみた」と題して、これまでITサービス事業者の核心部分だったSIerの在り方を探った。そう捉えると、今回は上記の記事の延長線上であり、社長としての本間氏の最後のメッセージとなる。
そこで、今回の会見の質疑応答で、「今後、ユーザーに求められるITサービス事業者とはどのような姿か。ITサービス事業者がこれから果たすべき役割とは何か」と質問した。これに対し、本間氏は次のように答えた。
「ITサービス事業者には、大きく3つの役割があると考えている。1つ目は、お客さまの基幹システムを引き続きしっかりと支えることだ。日本の企業や組織の基幹システムのモダナイゼーションはこれから大きな需要がある。ここをしっかりと支えるのが、まずはITサービス事業者の使命だ。2つ目は、生成AIをはじめとした新しいデジタル技術をお客さまが効果的に利用できるように注力することだ。とりわけ、生成AIはこれから幅広い業務やサービスに組み込まれていく。それをどうお客さまに効果的に使ってもらえるようにするか、ITサービス事業者の腕の見せ所だ。これら2つは、要するにお客さまである企業や組織の事業に貢献することだ」
「3つ目は社会課題の解決に貢献することだ。サステナビリティーへの対応をはじめ、さまざまな社会課題がグローズアップされるようになってきた。この課題解決に向けて難しいのは、業界の枠組みを超えた連携が不可欠なことだ。ただし、手段はある。IT、デジタルを活用すれば連携が可能になる。ITサービス事業者はこれからこの役割を果たす必要がある。その意味では、ITサービス事業者にとって社会課題の解決に貢献することは責務だと、私は考えている」
「3つの役割」はいずれもオーソドックスな内容だ。ITサービス事業者の「現在地」を捉えた上での「果たすべき役割」といえる。もちろん、これらを遂行するためにはさまざまなケイパビリティーが必要となるが、まずは「ITサービス事業者はこれから何のために存在するのか」と、今一度、立ち止まって考えることも大事だろう。
さらに、このことはユーザーにとってもDXを推進する上で非常に重要な要件になる。ITサービス事業者との関係が、近い将来「ビジネスのパートナー」になるかもしれないのだから。
フリージャーナリストとして「ビジネス」「マネジメント」「IT/デジタル」の3分野をテーマに、複数のメディアで多様な見方を提供する記事を執筆している。電波新聞社、日刊工業新聞社などで記者およびITビジネス系月刊誌編集長を歴任後、フリーに。主な著書に『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。1957年8月生まれ、大阪府出身。
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