あなたの組織にはどのようなログ(記録)が存在しているだろうか? 紙で書かれた伝票や報告書、コンピュータが自動的に記録するアクセスログや障害記録もあるだろう。数えだしたらその多さに驚くはずだ。そして、中には作成されていることすら知らない記録もあったりする。
ログの洗い出しができたら、次にそのログがどのくらい信用できるものか調べてもらいたい。業務日誌の天気は気象庁の気象観測結果と一致しているだろうか。営業日報、業務日誌で「本日は特に変わったことなし」という記載があったとしたら、それはどうやって検証できるだろうか。その日の来客者や勤務者にも聞いてみる必要はないだろうか。そうやって、信頼できそうなログを特定できたら、そのログこそ、会社にとって大変貴重な無形財産だ。ナレッジとして紛失や破壊、改ざんなどされないように、情報セキュリティ対策することをお勧めする。
もし、会社の活動を知るための信頼できるログが不足していると感じたならば、会社としての警ら活動を確立するところから始めるべきだ。記録を取るということがいかにビジネスにおいても重要なことかということを従業員に教えなければならない。あるいはスコアラーを雇うことを考える必要もあるかもしれない。
信頼できるログが特定できたら、最後にそのログに対して過去にどのような分析をしたのか調べてみてほしい。十分な分析ができていないのならば、そこから新しいチャンスやリスクを発見できる余地がある可能性が高い。社内での分析に自信がないのであれば、外部の専門家に分析を依頼すればよい。
コストばかり掛かって信頼性が低い新たなリサーチをするくらいならば、過去の議事録を分析するべきだ。刑事も探偵もコンサルタントも、そこにすでにある資料から捜査を開始する。顧客や従業員の不満が高まっているのであれば、議事録や過去に実施したアンケートを見れば、ずっと前からその兆候が見え隠れしていたことが分かることが多い。
今回は、捜査の技術第5条「足元を固める情報収集活動がターゲット像を絞り込ませる」について説明した。
次回は、捜査の技術第6条「捜査のプロは分類能力が極めて高い」について説明する。蓄えた情報や知識を体系化すると、新たに出てきた問題が過去のどの情報や知識に関係するかを推理できるようになる。プロファイリングやリーディングのベースとなっているテクニックだ。
最近の天気予報の当たる確率が高いのも同じ原理といえる。新たに取引が始まった顧客が、次に持つ関心事を先回りして推測してリコメンデーションメールを送るインターネット事業者が操っているCRMシステムもまた同じ原理だ。
しかし、捜査の技術第6条は、捜査の技術第5条にまじめに取り組んだ組織だけが学ぶことができるということを忘れないでいただきたい。
杉浦 司(すぎうら つかさ)
杉浦システムコンサルティング,Inc 代表取締役
京都生まれ。
京都府警で情報システム開発、ハイテク犯罪捜査支援などに従事。退職後、大和総研を経て独立。ファーストリテイリング、ソフトバンクなど、システム、マーケティングコンサルティング実績多数。
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