図7は、この図の理解に必要な基本原理の大半が標準コースの教材ではカバーされていないために本コースで教えるのが最も難しい話題を詳細に示している。この新たな基本原理を提供することも本稿の目的の1つだ。
図7は、ビジネスモデルにあるものと、各自のシステムユースケースモデルにあるものを明確にマッピングしている。この特定の例では、システムが業務従事者の作業を自動化できることが示されている。また、重要な業務従事者が自動化の候補になっていることも示されている。
ビジネスモデルがビジネスユースケースモデルとビジネス分析モデルの両方で構成されていることを覚えておきたい。ビジネス分析モデルはビジネスユースケースモデルを描写したものであり、密接に統合され、トレーサビリティがある。システムユースケースモデルはビジネス分析モデルにさかのぼることができる。そして、ビジネス分析モデルはビジネスユースケースモデルにさかのぼることができる。
このアプローチを使えば、ビジネス分析モデルから下へと流れたシステムユースケースモデルを構築することができる。これにより、UMLモデル全体で一貫性とトレーサビリティが実現する。
では、システムアクターとシステムユースケースはどこから来ているのだろうか? システムアクターは、ビジネス分析モデルのビジネスアクターと業務従事者を基本にして作成されている。業務従事者の自動化候補とやりとりするビジネスアクターは、常にシステムアクターになる。また、業務従事者自動化候補とやりとりはするが自動化候補ではない業務従事者は、システムアクターになる。例えば、ISMビジネス分析モデルの「警察」と「裁判所」はシステムアクターになる。ISM Brokerは「純粋な」自動化候補であり、これがシステムアクターになることはない。
ここで筆者が使った「純粋な」とはどういう意味だろうか? それは、開発中のソフトウェアソリューションの代用になることが自動化候補の唯一の目的であることを意味する。図7の「ローン担当者」に注目したい。「ローン担当者」という業務従事者は、システムアクターにもシステムユースケースにも変化する。説明しよう。
「ローン担当者」は図7で示されるビジネスモデルの役割の1つだ。ここのシステムユースケースモデルでは、「ローン担当者」の役割を担うアクターが必要だ。しかし、新たに開発中のソフトウェアソリューションでは「ローン担当者」の業務のいくつかについて自動化も進めている。ビジネス分析モデルの中のこれらの業務が、システムユースケースモデルの中のシステムユースケースになる。
このほかの純粋な業務従事者の自動化候補は、システムユースケースモデルのシステムアクターには変化しない。これが、「システムユースケースはどこから来ているのだろうか?」という疑問に対する回答だ。システムユースケースは、ビジネス分析モデルにおいて業務従事者自動化候補の業務をベースにして作成される。図5を見ると、VOPC図からISM Brokerや「情報の問い合わせ」などの各業務がシステムユースケースモデルのシステムユースケースに変換されるのが分かる。
分析モデルは、ビジネス要素がシステム分析モデルのクラスにマッピングされる様子を示している。これらのクラスは、システムが処理する「データ」を示しているのだ。
システムユースケースのモデリングと比較したRUPビジネスモデリングの概要を説明するのが筆者の目標だった。ここまで、類似点と相違点のほか、ビジネスユースケースモデルとシステムユースケースモデルの間の関係を解説した。これらの比較や関係について質問があれば、arthur.english@unisys.comまで問い合わせていただきたい。
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