専門家に聞くモデル駆動開発のメカニズムThe Rational Edge

The Rational Edgeより:WebSphereコンサルタントのChris Gerken氏がモデル駆動開発(MDD)や、実行イメージパターン、Java Emitter Templates(JET)、そしてDesign Pattern Toolkit(DPTK)のオーサリングおよびその使用によるアプリケーションのソース生成に関する質問に答える。

» 2007年03月15日 12時00分 公開
[Chris Gerken(IBMシニアコンサルタント),@IT]

 MDD変換は、現在は実行イメージパターンとして利用されている。これらは、慣例、最優良事例、およびガイドラインの整合的な適用を自動化する。EclipseやRSA(Rational Software Architect)の重要な新機能により、これらのパターンのオーサリングによるアプリケーションのソース(Java、COBOL、JSP、XML、プロパティファイルなど)生成が簡単になった。

質問 UMLのアクティビティモデルがあった場合、モデル間変換(UML2からDSL Ecore)を実行し、モデルの中の情報を使い、Java Emitter Templates(JET)でコードを生成しながらも、これをシームレスかつプログラム的に行うプラグインはどうすれば作成できるのか。

ALT 本記事は、IBM developerWorksからアットマーク・アイティが許諾を得て翻訳、転載したものです。

回答 一般には、MITM(meet-in-the-middle)アプローチを使いたい。まず はJET変換を作成する(まだRational Software Architect V6.xを使っている場合は、alphaWorks のDesign Pattern Toolkitを使用)。このインプットモデルは、テンプレート内のモデルアクセスがかなりシンプルになるよう最適化されている。

 M2T(モデルからテキスト)変換を書き上げたら、UMLモデルのナビゲーションと、JET変換が要求するインプットモデルのような内部モデルの構築を行うRational Software Architect(RSA)変換が書ける。RSA変換の最後は、構築した内部モデルをJET変換が簡単に活用できるフォーマット(XML文字列もしくはEMFインメモリモデル)に変換し、プログラムでJET(もしくはDPTK)を呼び出す作業になる。

質問 「エグザンプラー(exemplar)」とは何か。また、M2T変換を構築する際どのように役立つのか。

回答 エグザンプラーは、M2T変換で生成するものの代表例。RSAのエグザンプラーオーサリングツールが利用し、インプットモデルスキーマとM2Tテンプレートを素早く抽出するために使用される。エグザンプラーのオーサリング中は、該当するすべての最優良事例、ガイドライン、慣例などに合わせてエグザンプラーが書かれているものと仮定される。これは、変換がサポートするすべての可変点を示す。最初は感じないかもしれないが、エグザンプラーを構築して認証し、これを変換オーサリングプロセスの入力に使うと相当な時間の節約になる。

質問 M2T変換を書くときに、JETではなくDPTKを使うのはどのような場合か。

回答 Eclipse 3.2、Rational Application Developer(RAD)V7、あるいはRational Software Architect V7上で変換を行うつもりであればJETを使う。これ以前のバージョンのRSA、RAD、あるいはEclipseであればDPTKを使う。

質問 JET変換のインプットモデルとして配備記述子(web.xml)を使いたいが、この配備記述子に分類できない新しいデータもいくつか必要だ。この場合はどうすればよいのか。

回答 2番目のXMLファイルに追加情報を入れることができる。変換では、2つのうちの1つのファイルを主入力とし、コンテンツタグを使って2番目のファイルのリード、パーシング、メモリへの読み込みを行う。2つのファイルからの両モデルの読み込みが終了すれば、ファイル生成に必要なテンプレート処理が何でも可能になる。

質問 パターンはM2T変換とどのような関係があるのか?

回答 Grady Booch氏はかつて、パターンとは所定の状況において繰り返し発生する問題に対するソリューションである、と定義した。この定義は、最優良事例、ガイドライン、命名慣例がいずれもパターンであることを示唆している。M2T変換は最優良事例、ガイドライン、そして命名慣例の適用を自動化できるため、M2T変換(およびモデル間変換)はパターンの適用も自動化できる。筆者は、「変換」と「パターン」の両方の用語を併用することが多くなっている。

質問 唯一苦労するのがエグザンプラーとパターンの適用範囲だ。M2T変換を活用できるよう十分広い範囲を確保したいが、最初の変換で閉口するほどの広範囲を望まない場合はどうするか。

回答 エグザンプラーの範囲を決定するにはいくつか方法がある。

 最初は 、「パターンとは所定の状況において繰り返し発生する問題に対するソリューションである」という点だ。ソリューションは最優良事例、慣例、ガイドライン、設計書などの形態になる。オブジェクト(「doc」や「j-unit」テストファイルなど)を存続させる方法など、特定の問題を解決できる一連のファイルを探していただきたい。もちろん、この問題は、アプリケーションスイート全体で解決されるケースが多ければ多いほどよい。

 筆者は、それぞれのファイルの生成に必要なモデルデータの2つの集合が重複することを2つのファイルが「MDD関係にある」(筆者独自の用語)といっている。例としては、別のファイルのために、あるファイルのクラスもしくはファイルの名前がソース中で呼ばれる場合や、同じプロパティ名(もしくは「getter」や「setter」の名前といったその変種)がこれら2つのファイルのソース中にある場合がある。また、MDD関係は強い(インターフェイスおよびインプリメントクラス)もしくは弱い(Javaプロジェクトのjar名や参照するadminスクリプト)と呼び分けることができる。強いMDD関連ファイル(数学の閉包を思い出していただきたい)のグループを探したい。

 これらのアプローチは、いずれも最終的には同じファイルグループを特定する。入門に適したエグザンプラーとしては、約20のファイルで構成されるようなファイルグループを探すといいだろう。筆者が見たところ、1つのパターン中およそ80%のテンプレートは平凡なもので、15%は分かりやすくて完成もさせやすく5%はやや扱いづらい。

 もしパターンのオーサリングに関する経験がもっと豊かならば、ファイルを見て、いくつか質問しただけで、テンプレートの数や複雑性、そしてモデルのサイズや形もだいたい分かるようになる。筆者なら、そのテーマの専門家や、パターンのテーマの専門家がほかのテーマの専門領域に不慣れであるなど、まだ目に見えない複雑性のリスク要因も計算に入れるだろう。

 大胆に簡略化するため、筆者なら最初の 変換用に5〜10種類のテンプレートを作成する。これより多いとなかなかすぐには満足感を得られないし、これより少ないとM2T変換の力を実感できなくなる。

質問 JETでの生成に非常に適したJavaクラスがいくつかあるが、それぞれの中には、生成がかなり難しいと思われる業務ロジックも多い。クラスのソースを一度生成し、開発者にそれぞれの業務ロジックを追加させることもできると思われるが、生成し直さなければならないときには、どうすればこれらのロジックを書き直さずに済むだろうか。

回答 JETの「userRegion」タグを使う必要がある。このタグは、生成されたテキストからユーザーが修正できるセクションを特定する。変換を再度実行すると、開発者が加えた変更は生成作業全体を通じて保存される。つまり、ソースを生成するためにテンプレートを作成し、生成されたソースの中で開発者が修正したいと思うセクションを特定し、最後にこれらのセクションをuserRegionタグで囲むのだ。

質問 すでにM2T変換で生成されたアプリケーションとしてはどのようなものがあるか。

回答 RSA V7は最近登場したばかりであるため、M2T変換の大半はDPTKを使って書かれている。生成されたアプリケーションやコンポーネントとしては、カスタムポートレット、J2EEアプリケーション、Eclipseコンポーネント(ウィザード、ダイアログボックス、ヘルプ、リッチクライアント)、最適化されたデータベースアクセスなど、顧客に特化したアプリケーションが各種ある。

質問 RSA V6用に多数のDPTKパターンを書いてきた。これらをJETやRSA V7に移行する際に最も 簡単な方法は何か。

回答 RSA V7とRAD V7には、いずれにもDPTK互換レイヤと呼ばれるJETタグライブラリが付属している。このタグライブラリには、オリジナルのDPTKタグと外観も動作も同じようなタグが含まれている。しかし、これらのタグはJET上にインプリメントされる。

 一度自分のパターンをV7の作業空間に読み込ませれば、「Add JET Behavior」というDPTKパターンを自分のDPTKパターンに適用し、この変換をJET変換としてチューニングするために必要な適切な特性、設定、およびフォルダを追加できる。

質問 新しいJETタグはどこがすごいのか。同じことはすでに組み込みJavaでもできているが。

回答 JETタグは、組み込みJavaと同レベルのテンプレートフローコントロール(反復、条件分岐、モデルアクセスなど)を実現できるが、こちらはそれを言語に依存せず実現する。これにより、COBOLやCのプログラマー、そしてシステム管理者でも、Javaを学習せずに変換を書けるようになる。

 一部のタグは、Javaへの組み込みが非現実的で複雑な部分もかなり多く隠してくれる。例えば、ファイルタグ(モデルにテンプレートを適用し、それによってできるコンテンツを新しいEclipseリソースに保存する)は、コンフィギュレーション管理プラグインなどの各種エディタと連携し、生成されたファイルがEclipseに正確かつ確実に組み入れられるようにする。

質問 UML2Java、JET、DPTKなど、変換は複数あるが、RSAとしての明確な戦略はどれか?

回答 使用するM2T技術は、使用するRationalツールのバージョンで決まる。第1候補はEMFT JET(Eclipse 3.2.0およびRational V7以降に対応)だ。これらのいずれのプラットフォームも使用していない場合はDTPKを使いたい。

質問 Pattern Repositoryとは何か? Pattern RepositoryとAsset Repository(RAS)の関係は? RSAはここも混乱する。

回答 パターンレポジトリは、Reusable Asset Specification(RAS)ファイルとして導入されるパターンを持つサーバ(ローカルマシン上でも可)。RASファイルは、RASファイル内の資産の特性と用法に関するメタデータと、RAS資産を作業空間に読み込むときのインストール手順を説明したメタデータが追加されたzipファイルでしかない。そのほか特殊な処理としては、Eclipseプラグインのインストレーションや作業空間へのファイルの読み込みなどがある。これらは自動的に実行される。もちろん、RASファイルにはほかの資産も含めることができる。


本記事は「The Rational Edge」に掲載された「Meet the experts: Chris Gerken on model-driven development」をアットマーク・アイティが翻訳したものです。

参考



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