クリント・イーストウッドが「ミリオンダラー・ベイビー」以来、4年ぶりに監督と主演を兼ねた奇跡のドラマ「グラン・トリノ」がBlu-ray Disc化、9月16日に販売開始される。特典は「イーストウッドの世界〜巨匠の仕事に迫る〜」、「グラン・トリノが映すアメリカ文化」、「こだわりのヴィンテージ・カー」などの約32分。
主人公は朝鮮戦争を経験した後、自動車産業黄金時代に勤め上げたウォルト・コワルスキー。彼の宝物は72年製フォード・グラン・トリノと、今も毎日磨き上げているライフル。筋金入りの頑固さで家族からはうとまれ、愛妻を亡くしてからの唯一の理解者は愛犬デイジーだけという孤独な老人だ。かつての隣人たちもいつの間にか消え、近所はアジア系のモン族が移り住む地域となっている。
ある日、隣家の少年タオが不良グループにそそのかされてグラン・トリノを盗もうとする。ライフルで撃退したコワルスキーにその家族はお詫びに息子に仕事を言いつけてくれと謝ってくる。そこから孤独なコワルスキーとモン族の交流が始まった。ピュアで不器用なタオと文化と世代の壁を越えて、ぎこちなく心を通わせていくコワルスキー。しかし、コワルスキーがタオにつきまとう不良グループを強引に撃退したことで、彼の家族が報復にあってしまう……。
イーストウッド以外にスターは出てこない。リアリティを求めて、素人のモン族の人々をキャスティングしている。ダーティハリーなどイーストウッドがこれまで演じてきた役を思い起こさせるようなその老兵ぶりに、ファンは感銘を受けるはず。口を開けば悪態ばかりの老人はイーストウッドが演じるからこその味があり、セルフパロディの数々は笑いさえも誘うだろう。
コワルスキーは最後にある決断をする。それは西部劇の鎮魂歌のようで、イーストウッドの美学と生き様がつまっている。彼の眼差しの力強さは老いてなお衰えを知らず。アンジェリーナ・ジョリー主演の「チェンジリング」といい、本作といい、巨匠の風格が漂う。イーストウッドと彼の息子カイルによる感涙の主題歌「グラン・トリノ」が深い余韻を残す、今年絶対に見るべき傑作だ。
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