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3Dの未来と課題麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/5 ページ)

» 2010年01月28日 11時44分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

麻倉氏: Samsung Electronicsは昨年ヒットしたLEDバックライト搭載液晶テレビ「LED TV」の3D化を積極的に進める考えです。同社は去年1年でLED搭載テレビのジャンルで80%のシェアを得たと言っています。この強力なマーケティング力を発揮して3Dテレビを展開していこうというのです。LEDバックライト・LCDテレビを「LDEテレビ」というのは、牽強(けんきょう)付会の見本ですが、それでも大ヒットさせました。

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 ブースではLEDとCCFL両タイプの3D液晶テレビ、それに31V/11V型の有機EL 3Dテレビを参考展示していました。液晶テレビは画質的には液晶の弱みを改善し切れておらず(片眼60Hzを確保できず)ダレ気味で、黒の締まりも今ひとつでした。3Dメガネも薄くて軽いもののやや旧式でした。

 ですが、いずれにしてもテレビメーカーの“巨人”である同社が3Dへ注力していることは間違いないところです。また、中国メーカーのTCLも3Dテレビを展示しており、3Dに対しての注目が世界的だったことも着目すべき点ですね。

 「すべて持っている」ことをアピールするのがソニーです。3Dテレビについて、CEATCの際にはCCFL/120Hzで明るさやクロストークに問題を残していましたが、CESではLED/240Hz+偏光フィルターをなくした新型メガネとすることで、問題を改善しています。もっとも、偏光フィルターを外すことで蛍光灯とのクロストークが解消できますが、横方向のズレに弱くなってしまっていますが。

 ソニーのすごさは、カメラをはじめとした撮影用の機材から撮影ノウハウ、コンテンツ、ディストリビューション、ディスプレイ(3Dテレビ)とすべてのバリュー・チェーンをフォローする、川上から川下までの流れを構築したことです。パナソニックも同指向ですが、撮影機材の充実やグループに映画会社(Sony Pictures Entertainment)を持つこと、放送局との提携を進めていることなどから、ソニーは他を圧倒的しています。

 まずは3D映画をたくさん作ってもらう、そして、それを家庭に届けるディストリビューション(対応BDプレーヤーやBDパッケージ、3D放送)について各社に協力してもらい、そしてそれらを映し出すディスプレイを販売する――とソニーの施策は1本の筋になっています。

 また、Sony Pictureに「Sony 3D Technology Center」を設立して、3D映画製作に関するノウハウをハリウッドのほかのスタジオにもノウハウを提供する方針を明らかにしています。CES後のハリウッド取材で、センター について、Sony Pictures Technologiesのクリス・クックソン氏に話を聞きました。

 「悪い3Dを見た人は不満をもち、疲れ、関心を失わせる結果につながるため、見て心地よい3Dを作る必要がある、ということを業界に幅広く認識してもらうために、設立しました。広く業界から希望者を募り、撮影技師向け、映画/テレビディレクター向け、ライブイベント向け、ゲーム開発者向け、販売店向けのトレーニングをします。3Dの健全な立ち上がりに貢献したいと思います」

 放送をきわめて重視しているのも、パナソニックとの違いに挙げられます。3Dパッケージソフトは今年中に出てきそうなのが多くても10本程度なので、やはり、放送で3Dコンテンツが送られてくる方が圧倒的に普及に効果的といえます。ESPNやDiscovery Channelといった専門チャンネルを始めFIFI(国際サッカー連盟)やPGA(プロゴルフ協会)とも提携し、サッカーやアメフト、ゴルフ、コンサートなどの3DコンテンツをDirecTVやSkyなどの放送網に乗せる計画です。

 ソニーで3D戦略を統括する島津彰氏(3D&BDプロジェクトマネジメント部門 部門長)はこう言っています。

 「3Dエンタテインメントを立ち上げるにはさまざまコンテンツを、家庭や映画館に届ける仕組みをつくらなければなりません。コンテンツ、サービス・ディトリビーション、デバイスをどう緊密に開拓するか、それらがどうハーモニーするかが、きわめて重要なんです。私はいつも頭の中に映画、ゲーム、スポーツ/コンサートなどのコンテンツ分野を縦軸に、横軸にコンテンツ、サービス・ディトリビーション、デバイスを書いた図を描き、仕事を進めています」。

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