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3Dの未来と課題麻倉怜士のデジタル閻魔帳(3/5 ページ)

» 2010年01月28日 11時44分 公開
[渡邊宏,ITmedia]

麻倉氏: 3Dテレビ放送については、RealDのサイド・バイ・サイド方式が主流になりました。送り側がRealDのエンコードを行って放送し、受け手側がテレビやレコーダー、STBなどでデコードするという方法です。同社のサイド・バイ・サイド方式は、理論的に水平方向の解像度が半分に落ちるところが、さまざまな工夫により、低下を最小限に抑えるというもので、既存放送インフラを使って3D映像を伝送することができます。

photo RealDのグリアー社長と麻倉氏

 BD-ROMの3D映像はフルHD映像を左右両眼用それぞれ収録していますが、そのまま放送へ乗せるには放送波の帯域が足りませんし、チューナー側の対応問題もあります。そこで左右両眼用の3D画像を圧縮して伝送するのです。同社は以前、「RealDの切り札は斜め方向の圧縮」としていましたが、当面は縦横圧縮のみを推進する方針です。

 サイド・バイ・サイドはBS11の3D番組(「3Dプラネット」「3D立体革命」)が既に採用してる方式です。これから本格化する3Dについて言えば、「テレビはフィールドシークエンシャル、BDはフルHD/放送はサイド・バイ・サイド」がデファクト・スタンダードとして明確になったといえるでしょう。

 話をソニーに戻しましょう。CESで見た限りでは、サイド・バイ・サイド放送の問題はやはり解像度が足りないことと思いました。フルHD解像度の映像を左右両眼用に2つ収録するBDならば問題ありませんが、解像度が半分になってしまう放送ではやはりもの足りません。そのことをRealDのグリア社長に指摘したところ、「まだ初期の段階なので、これからさらにアルゴリズムを磨いていきます」と言っていました。

 3D画像として基本的なことですが、対応液晶テレビでみる限りではクロストークも解消し切れていません。液晶で3D映像を見ていると、どうしても頭の中で補正しているような感じがぬぐいきれないのです。

 その点、展示されていた24.5V型の有機ELで3D映像を見ると、すっとスムーズに頭に入り込んでくるのです。応答速度が液晶の約1000倍なのでクロストークが認知できないレベルになっていうこと、自発光によるピークの伸びや黒の締まりが快適な感覚をもたらしているのだと思います。

 プラズマ/液晶だと3D映像は“こんなものか”と感じることがありますが、有機ELで見ると、クロストークやコントラスト、階調性など液晶/プラズマの問題点が浮かび上がります。2Dでの問題点が3Dになるとさらに気になってしまうのです。解像感についても同様です。

 上手に作られた映像は開放感や安定感がありますが、ディスプレイがよくないと黒浮きなどが気になってしまうものです。つまり、没入したい先の問題がより3Dで、まさに立体的に拡大されてしまうのです。2Dの場合は被写体深度を浅くして後ろをぼかし、手前の被写体に注目を集めるという手法がよく使われますが、3Dは自分がとけ込んでいるような感覚になるので、同様の手法を使うと注目すべき点がどこにあるのか分からなくなってしまい、映像はきれいながら現実味がない、という「リアリティ矛盾」といった状況に陥りやすいのです。

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