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ソニー入魂「BDZ-AX2000」に見るBlu-ray Discレコーダーの進化山本浩司の「アレを観るならぜひコレで」Vol.51(2/2 ページ)

» 2010年09月15日 00時05分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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photo 新開発LSIの「CREAS Pro」

 再生時の画質を向上させる回路として注目したいのが、BDZ-EX200の「CREAS 2 plus」を進化させた新開発LSIの「CREAS Pro」だ。これは画素単位のリアルタイム映像解析技術を生かしながら、すべての信号処理を16ビット精度で行なう3D ROM対応の高画質回路。ユーザーにもさまざまな調整項目が開放されていて、映像とじっくり対峙(たいじ)して高画質を極めたいという熱心なAVファンには、格好の機能だろう。とくに輪郭と精細感の調整に加えて、今回から超解像の調整もできるようになったので、この3つの調整機能をうまく使いこなせば、自然な鮮鋭感とシュートの目立たない峻烈(しゅんれつ)なエッジを実現できるはずだ。

 ぼくが実際に使ってみて興味深いと思ったのは、「フィルムグレイン調整」と「コントラストリマスター」の2つ。「フィルムグレイン調整」は、映画コンテンツの微細なグレイン(粒状性)を復元(または生成)することで、解像感の高いHD映像にフィルム的な質感を付与しようというもので、圧縮映像特有のデジタルノイズをマスキングする効果も期待できる。

 とくに面白いと思ったのは、3D収録されたBD ROMの映画(観たのはCG中心の作品だが)を2D再生したときの効果。3D収録映画は、両眼視差による3D効果に違和感を生じさせないようにグレインをきれいさっぱりぬぐい去ったマスタリングが施されているケースが多く、それをそのまま2D再生すると、フィルム的な味わいがすっかり欠落してしまう。そこで、この機能を用いてグレインを付加すると、「いかにも」な映画的味わいがよみがえってくるのだ。

 「コントラストリマスター」は、入力画像をリアルタイムでヒストグラム分析し、ブライトネスとコントラストをシーンに合わせて適宜最適化する機能。その振る舞いを注視してみると、シーンチェンジで急速にコントラスト調整し、画面が安定したら、ゆっくりと補正をかけていることが分かる。使い手に不自然さを抱かせないようにという工夫だろう。

 この機能、黒が浮き気味でコントラストレンジが圧縮された印象の作品が多い邦画やNHKの大人気大河ドラマ「竜馬伝」などで絶大な効果を発揮する。ブライトネスとコントラストによる調整というと、黒詰まりや白詰まりなど、階調情報へのダメージが懸念されるが、本機は「スーパービットマッピング」を生かすことでそれに対処している。スーパービットマッピングというのは、本機内で生成し、処理される16ビットの階調情報をディスプレイに合わせて12ビットや10ビットに変換する際に、下位ビットを切り落さないで一部ケタ上げして12/10ビット出力に畳み込むソニー独自の手法である。

 本機は音のよさも出色だ。4ミリ厚のアルミの天板を用い、フレームをビームで補強したシャーシ構造は、音質に悪影響を与える振動に強く、がっちりとした低音再生におおいに貢献している印象だ。電源部にもカスタムメイドの音響部品をおごるなどレコーダーとは思えないほど、ぜいが尽くされている。

 BDZ-AX2000は、HDMI出力が2系統用意されており、映像/音声のセパレート出力が可能。音声専用HDMI出力では、音声基準のマスタークロックを基に黒画面用のクロックを生成した後、高級BDプレーヤーの「BDP-S5000ES」で採用されたジッター成分(信号にゆらぎ)を約3分の1に低減する高精度クロック回路「プレシジョン・クロック・コンディショナー」を用いるという凝りよう。本機のHDMI音声出力をわが家のAVアンプ(パイオニア、SC-LX90)につないでBD ROMのHDオーディオ音声を再生してみたが、パイオニア「BDP-LX91」やデノン「DVD-A1UD」などの高級BDプレーヤーに匹敵する素晴らしいサウンドを聴かせてくれた。

photophoto 天面から前面までアルミ板がおおう(左)。映像/音声のセパレート出力に対応した2系統のHDMI出力(右)

 それからじつに興味深かったのは、昨今増えつつある高音質を標榜する高級HDMIケーブルの音の違いを本機がリアルに描き分けることだった。ソニーやエイム電子、ワイアーワールド、ハーモニックテクノロジーなどのケーブルをテストしてみたが、高級BDプレーヤーよりも本機でテストしたほうがなぜかそれぞれの音の差がよく分かった。本機の能力がそれだけ高いということだろうか(同一メーカー同士の有利さか、ソニーのケーブルがいちばん好印象だった)。

 放送のAAC音声は、前作のBDZ-EX200同様、本機内部でAACデコードした後にドルビーデジタルに再エンコードして記録するというちょっと複雑な経路をたどる。再エンコードすることで音質が劣化するのでは? という危惧(きぐ)を抱かれる方も多いと思うが、それが案外そうでもない。パナソニックのBDレコーダーで記録したWOWOWの映画番組のBD-Rを本機とパイオニアの高級BDプレーヤー「BDP-LX91」で比較試聴してみたが、その音質が大きく劣るということはなかった。

 画質・音質・操作性すべてに渡ってソニーのノウハウが全面投入されたBDZ-AX2000、この秋いちばん魅力的な高級BDレコーダーと断言してしまおう。

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