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平面スピーカーの“ささやく看板”、ヤマハが発表近くでもうるさくない

» 2011年07月06日 00時43分 公開
[ITmedia]

 ヤマハは7月5日、厚さ1.5ミリの平面スピーカーを用いる「TLF(Thin-Light-Flexible Speaker)スピーカー」を発表した。主に広告用途に向け、10月上旬からサンプル出荷を開始する。サンプル価格は10万5000円。

利用イメージと専用アンプ

 TLFスピーカーは、早稲田大学・山崎芳男教授の基本アイデアをもとにヤマハが独自に開発した静電スピーカー。全体が柔らかく形状を自由にできるフレキシブルさにくわえ、平らな面が細かく高速に振動することによる鋭い指向性が特長だ。スピーカーのほぼ正面方向にだけ音を出すことができる。

TFLスピーカーの特性

 また、一定の距離まで平面波の状態が保たれる特性があり、通常のダイナミック型スピーカーに比べて距離による音圧の減衰が緩やか。つまり、「近くてもうるさくないが、遠くても聞こえる。ささやくような感覚でありながら、明瞭(めいりょう)な声を届けることができる」(ヤマハ)という。

デモンストレーションでは女性の声でアナウンス。看板の向きを変えると声の大きさが大きく変わる

 平面スピーカーという構造上、再生周波数帯域は400〜4000Hzに限られ、低域の再生は苦手だ。このためHi-Fi用途には向かないが、ヤマハではTFLスピーカーの特性を生かして同社が提唱する「サウンドサイネージ」(Sound Signage:音響看板)ビジネスを推進する考え。2月にはアサヒ飲料や日本テレビ放送網と協力してJRの駅やイベントなど人の集まる場所で実証実験を行い、高く評価されたという。

日本テレビ放送網と協力し、イベント会場で実証実験を行った(左)。最大20枚まで連結できる(右)

 サンプル機は、平面スピーカーと専用のTLFアンプモジュールをセットにしたもので、電源は12ボルトのACアダプターを使用する。スピーカーはA0とB1の2サイズを用意しており、重量はケーブルとプラグを含めてもA0サイズで460グラム、B1サイズは350グラムという。また20台までのスピーカーを連結接続して「音の出る大型バナー広告」にすることもできる。

 「TFLスピーカーの実用化により、音をまき散らすことなく、限られたエリアだけに音の情報を届けることが可能になった。近年、薄型ディスプレイやプロジェクターを使ったデジタルサイネージ(電子看板)が注目を集めているが、われわれは“音の出るポスター”や“音の出るPOP”を提供したい」(同社)。なおヤマハでは、7月6日〜8日に東京ビッグサイトで開催される「販促 EXPO」でTFLスピーカーを展示する予定だ。

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