本田雅一のTV Style
CEATEC振り返り(1) 新しい映像処理技術の潮流
先週、千葉県・幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2011」。前回のコラムで書いたように、今年のテーマの1つは、より高い解像度の液晶パネルの活用へと向いた展示だった。
不思議な程に高画質になるICCのデモ
I3(アイキューブド)研究所の4K対応アップコンバーター「ICC」とシャープ製4Kディスプレイによるデモに関しては、前回お伝えした通りだ。実際にCEATEC会場へ足を運んだ方ならば分かると思うが、同じ映像ソースとは思えないほど、フルHDの映像が立体的で実在感のある映像へ向上する。CEATECでのデモは、フルHDのベースバンド(非圧縮)画像を4K×2Kに変換したものだったが、別途、地上デジタル放送を見た際には、思わずうなってしまった。
解像度を高める技術の多くはノイズ成分と映像ディテールの違いを区別できず、S/Nの悪い映像ではノイズ感が増してしまう。圧縮ひずみの多い地上デジタル映像ともなれば、過度な映像処理を行えば、たちどころに見辛い映像となる。
ところが、今回のデモを見ると、むしろICCを通した方がS/N感が良くなる。もちろん、絶対的な質はベースバンド映像に対して処理を行った方が高いが、改善の度合いはむしろ地上デジタル放送に対しての方が良いほどだ。同社のLSIを搭載したシャープ製テレビは来年の発売とのことなので、それまでには、その不思議な程に高画質になる魔法の正体について、取材したいものだ。
期待値を超えたソニー「VPL-VW1000ES」の映像処理
このICCに続いて視聴したのが、ソニーの「VPL-VW1000ES」である。160万円を超えるプライスタグが付いているが、コントラストや精細感は、歴代のソニー製プロジェクターをしのぐ。ランプは330ワットの高圧水銀だが、豊富な光量とスペクトラムを最適化する光学フィルターを組み合わせることで、純度の高い濃厚な色合いをも引き出していた。
コントラストの高さ、色再現域の広さといった要素では、むしろ同社の劇場向け4Kプロジェクターをしのいでいると感じるほどだ。それどころか素子サイズの違いにより、拡大投射時の精細感の差も感じない。同社によると、3つの素子の画素アライメントを合わせる部分に新しい生産技術を用いているという。
実はこのモデルでは、SXRD素子の駆動方法がアナログからデジタルへと変更され、ビクターの現行民生用プロジェクターと同じ方式になった。デジタル駆動では特性が安定しやすいものの、誤差拡散ノイズや暗部階調の不足を感じる場合がある。ところが、こちらも駆動方法に工夫をしているとのことで、微妙な暗部階調の表現ができているように見えた。製品化までには、もう一段階の追い込みが必要とのことだが、いずれはここで培われた技術も、一部が低価格モデルに持ち込まれることになると思うと、予算的には合わないという方にとっても、デジタル駆動化の動向は気になるところだろう。
さて、このVPL-VW1000ESに搭載されたのが、新型のデータベース型超解像技術だ。ソニーの「X-Reality」という画像処理エンジンは、複数フレームを参照。映像に含まれているテクスチャーの特長を分類し、記録したデータベースを参照して、本来あるべき質感を再現するという動作をする。新型では、このデータベースに学習機能を搭載することで、より自然な超解像を行うそうだ。
実のところ、この機能に対してはあまり大きな期待をかけていなかった。劇場での4K×2Kプロジェクターによるアップコンバート映像も、シャッキリと解像感ある映像になっていたことはなかったからだ。柔らかさは引き出せても、情報量は引き出せない。
ところが、ICCの実在感、立体感を感じさせる一種独特の映像ではないものの、確かに解像度が増したように見える。輪郭がキレイにほっそりとつながるだけならば、情報が増えたようには見えないが、そこにしっかりとテクスチャーがあり、ディテールが深くなっている。複数フレーム超解像の良さがうまく生かされている。
プロジェクターということで、フィルムの粒子感を含んだ映像に違和感がないかも気になったが、この点もうまくクリアしているようだ。ジックリと腰を据えての評価とまではいかなかったが、来週には評価の機会を得られそうなので、さらに詳細に新型超解像の4K2Kパネルへの適応性について検証してきたい。
まだチューニングの途中、東芝「55X3」
さて、4K×2K展示、もう1つは東芝の“REGZA”「55X3」だが、こちらはドイツ・ベルリンで先月開催された「IFA2011」で発表された「55ZL2」の国内版といえるもの。アクティブ・レンチキュラーを用いた裸眼3Dも4K×2Kによって実現されているものだが、2Dの展示は4Kで撮影されたデモ映像が中心。「QFHD超解像技術」による4K×2K映像については、まだ発売までにチューニングをかける予定だと、東芝では話していた。
しかし、東芝ブースには別の目玉があった。4K×2K映像のインターネット配信サービス(NTTぷららが展示)、全録対応の“レグザサーバー”、それにレグザサーバーとレグザタブレットの連携などだ。また、4K×2Kからは話題が離れるものの、HDMI技術を提供しているシリコンイメージの取材でも、興味深い技術の紹介があった。(次回へ続く)。
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