前回、4Kテレビとカメラの話をした理由は、”CP+2012が開催されたから”ということももちろんあるが、いずれは大型液晶テレビの4K2K化が進むだろうとの予想があるからだ。安価な製品も含め、すべてがフルHD対応になっている今、4K2Kパネルを積極的に使い、単にスペック上の解像度を得るだけでなく、きちんとユーザーに利益を提供しなければならない。
もちろん、すぐに普及価格帯のテレビが4K2K対応になるかといえば、そうではない。だが、少しずつ浸透していくことは間違いないので、「せっかくなら、高精細なテレビを骨までしゃぶりましょうよ」ということだ。
さて、前回は視野角1度あたりに50画素以上があれば、画素を認識できなくなるという話だった。これは網膜が認識できる空間周波数の限界のことを指している。
ところがこの話をしても、意外にピンと来ないという方が多い。話を聞いてみると、デジタルカメラ――とくに高画質な一眼レフカメラは、3000万画素を超える高精細な画素があり、携帯電話用の極小センサーで撮影した映像さえ1000万画素を超えている。これを4K2Kテレビと比較しても、「テレビは約800万画素しかないじゃないか。写真を映したからといって、気にかけるほどの画質では見えないよ」という推測が入っているようだ。しかし、4K2Kテレビとデジタル写真の相性の良さは、理屈よりも見ればすぐに理解できる。今は製品が少ないため目にする機会は少ないが、製品数が増えるにつれて、その良さが認知されてくると思う。
また、カメラに詳しくない方には、カメラの画素数とテレビの画素数の意味が異なることも認知が広がっていないと思う。例えば3000万画素のカメラであっても、本当に有効な情報として3000万画素分が詰まっているかといえば、そこまでの情報はない。なぜなら、一般的なデジタルカメラのイメージセンサーは、ベイヤー配列というカラーフィルター配列を通し、色を予測して作り出しているためである。
以下はカメラに詳しい読者なら、みなさんよくご存知のことだが、一般的なデジタルカメラにおける画素数の意味について、かいつまんで書いておくことにしたい。
ベイヤー配列は2×2画素の4画素で構成されている。それぞれの画素にカラーフィルターが取り付けられ、色情報を取り出す仕組みだ。赤と青が対角線に並び、別の対角には2つとも緑のフィルターが配置される。従って1000万画素なら、そのうち500万は緑で、青と赤は250万ずつということになる。
広く知られているように、人間の眼は輝度の違いには敏感だが、色の違いに対する感度は低い。また、緑に対する感度は赤や青よりも高い。といった知見から、上記のような構成になっている。1000万画素のセンサーの場合、輝度情報は1000万個分を取り出せるが、色情報に関しては“周囲の画素から得られる情報からの推測”になるわけだ。つまり、色の情報が1000万画素分、フルに詰まっているわけではない。
蛇足だが、色に対する感度は輝度よりも低いといわれるものの、実際の人間の感覚はなかなか鋭く、色情報を増やしていくと確実に解像感やテクスチャーの立体感は増していく。シグマというカメラメーカーが、「FOVEON」(フォビオン)という全画素でRGBを検出できるセンサーを使ってカメラを使っているが、やはり質感表現は大きく高まる印象だ。これはAV機器でも同じで、クロマアップサンプリングという手法で色情報の不足を補う技術で、パナソニックが他社との差異化を図ったのは記憶に新しい。
次回は、輝度情報について解説していこう。
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