シャープは6月1日、高い結晶性を有する酸化物半導体(IGZO)の新技術を発表した。半導体エネルギー研究所(SEL)との共同開発。スマートフォンなどモバイル機器向けの液晶ディスプレイをさらに高精細化、あるいは低消費電力化が可能になる。
IGZOは、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、Zn(亜鉛)で構成する酸化物をTFT(薄膜トランジスタ)に用いた液晶。従来のアモルファスシリコンに比べて電子の移動速度が20〜50倍も早く、同じ駆動電力であれば小型化や高精細化が可能。また可視光を透過する薄膜となるため、バックライトの光を抑制して消費電力を下げることができる(→関連記事)。
今回の新技術は、この酸化物半導体に結晶性を持たせたもの。「従来の薄膜のIGZOはアモルファス構造を持ち、薄膜での結晶化は不可能とされていた。しかしSELは全く新しい結晶性IGZO薄膜を見いだし、C-Axis Aligned Crystal(CAAC)と名付けた」。CAACは、従来のアモルファスIGZOやIGZOの単結晶とも異なる構造で、より物性を安定化できることが分かった。
CAACの具体的なメリットは、500ppi以上という高精細化が可能になること、またプロセスの簡略化も挙げられる。さらに有機ELディスプレイや非ディスプレイ領域へもIGZOを応用することが可能になった。
発表会場には、有機ELディスプレイへの応用例として、13.5インチの3840×2160ピクセル(QFHD)パネルを展示。シャープは4月の発表会で32インチのQFHD IGZOパネルを公開したばかりだが、一気に1/4以下まで小さくしながら、同じ解像度を実現させたことになる。なお、展示機は白色の有機ELとRGBカラーフィルターを組み合わせたもので、画素密度は326ppi。このほか、フレキシブルな有機ELディスプレイも展示していた。
シャープでは、CAAC-IGZOを高精細化が進むスマートフォンやタブレット、モニターなどに展開する計画。「CAACの登場で、IGZO技術は、モバイル液晶技術のコアテクノロジーになる。できるだけ早期に量産化したい」(シャープ副社長兼執行役員の水嶋繁光氏)。なお、テレビへの展開については、「大画面テレビでは高精細を生かせない。まずは競争力を100%発揮できるモバイル用途に投入する」とした。
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