さて、前回「『なぜ「ポタアンを使うと音がよくなる」と言われているのか』で、ポータブルヘッドフォンアンプは使い方やシーンによって有用かも──とは分かってもらえただろうか。音質向上のために設計されている機器なのだから内蔵・標準モノより音がよくて当たり前という話ではあるのだが、今回はもう少し実践的な話として、どの機器でどういった基本仕様・機能を持つポータブルヘッドフォンアンプを活用するのがよいか、まずは、個人的にこだわって別途(標準添付モノ以外の)ヘッドフォン/イヤフォンをすでに利用しているiPhone/iPod、ウォークマン、Androidスマートフォンユーザーに限定し、はじめの一歩となる指針を紹介する。
まず、多くの人が利用するiPhone(3G〜4S)では、たいていのヘッドフォンアンプを使ってもかなり音質向上が望める可能性が高い。iPhoneは、いまや機能面での進化や強化が最も大切なファクターとなっており、音質は現状維持、いや最新モデルでは、筆者的には機能アップの犠牲になっている傾向すらうかがえる状態と感じている。そういった優先順位から、iPhoneは前述した「DAC(Digital to Analog Converter)」「増幅回路」「ボリューム装置」の3項目ともに向上の可能性があり、ポータブルヘッドフォンアンプを活用することで分かりやすく音質向上を体感することができる。
というわけで、iPhoneシリーズには例えばフォステクス「HP-P1」やソニー「PHA-1」など、「Dockコネクタからデジタル入力できる」機能を持つヘッドフォンアンプがまず第一ターゲットになる。これらにより、iPhoneの上記の3項目をスルーし、そのままヘッドフォンアンプに任せられる。おそらくかなり効果があると思うが、この手の機器は比較的高額に、かつ少し大げさになってしまう傾向はある。
もう少し安価にという人は、サードパーティの短めなDockーステレオミニジャック変換ケーブルなどを利用して、ライン/音声入力を備える一般的なヘッドフォンアンプと組み合わせるのもよい。これでも「増幅回路」「ボリューム」の2項目でクオリティ向上が期待できる。なお、iPod touchやiPod nanoなどでも同じことがいえる(世代によって変化量は多少変わるが、最新モデルは特に効果が体感できると思う)ので、1度チャレンジしてみてほしい。
続いてウォークマン(NW)シリーズも、同様にWMポートーステレオミニジャックケーブルを活用することで「増幅回路」「ボリューム」の改善が図れる(外部拡張端子であるWMポートは、残念ながらiPhone/iPodのようなデジタル音声出力はなされない)
なお、ウォークマンシリーズの一部にはヘッドフォンアンプ部に「S-Master」と呼ぶ、良音質を図るデジタルアンプ技術を活用するなど、相応に音質にこだわったシリーズもある。こちら、下手なポータブルヘッドフォンアンプであれば不要であり、標準でも相応のサウンドを聞かせてくれたりする。
もっとも、自分が愛用する上位志向のヘッドフォンだとボリュームを最大にしても音量が小さい──といった場合は別途ヘッドフォンアンプが必要になる。追加するとなると、やはり標準を上まわる同じく上位志向のモデルが必要となってくるといえる。例えば、ソニー「PHA-1」、iBasso「D12 Hj」クラスをまずはターゲットにしてはいかがだろう。
Androidスマートフォンについては、(多くは)サウンド出力が基本的にヘッドフォン端子のみになる(仮にUSB DACでなく、Micro HDMI DACのような機器が普及価格帯で登場すれば別かもしれないが)ので、3項目のうち残念ながら「増幅回路」としてのメリットのみを享受できる。こちらは上記プレーヤーと比べると比較的ポータブルヘッドフォンアンプの効果が得にくい機器かもしれない。ちなみに、ヘッドフォン端子とポータブルアンプを接続するスタイルの場合も同じことが言える。
ともあれ、ポータブルプレーヤーそのものの質もさることながら、ヘッドフォンアンプもピンからキリまである。基本的に価格と製品のでき・中身のこだわり具合はほぼ比例する傾向だが、コストパフォーマンスに優れる製品はかなり存在し、かつ音質の好みは人それぞれだ。「ぶらんにゅ〜AV/PCオーディオ Review」バックナンバーも参考にしていただきつつ、自分に合ったオーディオ機器を見つける──これもオーディオ趣味の楽しみの1つなのだ。
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