「iPhone 4S」は進化した“意志の自転車”:発売直前レビュー(1/3 ページ)

» 2011年10月13日 10時56分 公開
[林信行,ITmedia]

意志の自転車?

「iPhone 4S」。化粧箱にはiCloudのアイコンが描かれている

 「Wheels for the mind」という言葉をご存じだろうか。まだ20代のスティーブ・ジョブズ氏がコンピューターとはどういうものかを語るのに使っていた表現で、最近、筆者はこれを「意志の自転車」などと訳している。

 iPhone 4Sおよび同製品と一緒にリリースされたiCloudによって、アップルが提供する“意志の自転車”は、子どもでも乗り回せる補助輪付きから競技用自転車まで、自在にギアチェンジができる自転車になったのではと思っている。

 話を進める前に「意志の自転車」とはどういう意味かを説明しておく必要があるだろう。

 ジョブズ氏がサイエンティフィック・アトランタという科学雑誌を引用したところによれば、地上の生物の中で最もエネルギー効率がいいのはコンドルだそうだ。

 コンドルは「こっちのほうに飛んでいきたい」と思って、ちょっと羽を傾けるとスーっと滑るようにしてそちらの方向に飛んでいき、「やっぱり、こっちに行きたい」と羽を逆向きに傾ければ、今度はそちらへほとんど苦労することも体力を使うこともなく飛んでいくことができる。

 そして残念ながら、人間は極めて移動効率が悪い生物らしい。つまり、「こっちのほうに行きたい」といっては、そこへたどり着くまでに何度も2本の足を交差させ進み、「やっぱり、こっちだ」といっては、また苦労し、体力を使ってそこまで歩いていく。

 だが、面白いのはここからだ。サイエンティフィック・アトランタ誌は、人間が自転車に乗った場合のエネルギー効率も計算している。それによれば、自転車に乗った人間はコンドルよりもさらに効率がよく、目的の場所により少ないエネルギーで移動できることが分かったそうだ。

 「コンピューターは私にとってみれば、意志の自転車のようなものだ」と若き日のジョブズ氏は語っている。確かに、パソコンにはそんな側面がある。

 ただ、これまでのパソコンは、自転車というよりはエンジンが温まるまでかなり時間がかかる自動車だったかもしれない。起動に時間がかかるし、少し写真を加工したり、ささっと一筆メールを送るのには、やや大げさな機械だった。

 この溝を埋めるように、iPhoneやiPadのような製品が登場するには登場したが、これまでのiOS機器は、とりあえずパソコンとセットで使うことが前提で、それでいてパソコンとの連携もいちいちUSBケーブルでつなぐ必要があり、快適でない部分もあった。

 しかし、iPhone 4Sと同時に登場したiOS 5、そしてiCloudは、この状況を一変させる。

パソコンいらずで独り立ちのiPhone 4S

iPhone 4Sが最初から搭載しているOS、iOS 5の大きな特徴の1つがPCフリーだ。つまりパソコン不要で使える、ということ。これまでのiPhoneは、iPodから進化した携帯電話ということもあり、とにかくパソコンという母艦がないと何もできず、パソコンを持っていない人は原則使えない携帯電話だった。

 だが、この制限がiPhone 4Sの登場を機についに解かれる。iPhoneが欲しいと思っていながら、パソコンを持っていないという理由で敬遠していた人でも、これからは堂々と胸を張ってiPhoneを買える。

 実際、筆者も最初の数日間は、iPhone 4Sとパソコンを一切連携させることなく使ってみたが、パソコンなしで電話の開通作業から、メール、Webなどの日常の利用、そして本体データのバックアップまで、すべてこなせた。

iOS 5ではPCからの束縛からついに解き放たれる

 出荷状態のiPhoneの電源を入れると、これまでのiPhoneにはないWelcome画面が現れ、セットアップアシスタントの質問に答えていけば、これまでお店の人にまかせていた開通作業が自分でできる。

 何かのトラブルがあった場合や、以前使っていた電話番号を引き継ぎたい場合に備え、おそらく10月14日の発売日には、この開通作業を販売店のスタッフが見守る前でやることになるだろうが、新規の契約で番号も特にこだわらないのであれば、いきなり箱で買ってきて、開通作業も含めてすべてできてしまう。

 アップルが「パソコン不要」といったら、それはどこまでも徹底している。購入してすぐに、パソコンのiTunesに接続せずに使えることはもちろんだが、それに加えて、本体データのバックアップ、さらにはこれまでパソコン側からしかできなかったメールの仕分けフォルダの作成や、カレンダーの作成といった細かい操作もiPhone単体でできるようになっている。

 パソコンを持っていないからといって、決してほかのiPhone 4Sユーザーに引けを取ることなく、ほぼすべての機能が使えるのだ。

箱から取り出してPCに接続することなく設定ができる。起動するとこれまでのiPhoneにはないWelcome画面が現れる

メールの仕分けフォルダの作成やカレンダーの作成もiPhoneだけで完了できる

 神尾寿氏のレビューにも詳しいが、iPhone 4Sは新たにデジタルカメラとしての性能も大幅に向上しており、パソコンどころかデジタルカメラをも不要にしてしまうかもしれない。いや、それどころか、50万本近くあるApp Storeのアプリケーションをインストールすれば、ICレコーダー替わりにも、メモ帳替わりにも、電子辞書替わりにもなる。

 iPhone 4Sは量販店を賑わすゴチャゴチャとした電子ガジェットの大半に匹敵する機能を集約したデジタルデバイスと言える。他を圧倒するパフォーマンスは、やや本格的な画像の加工やリアルな3Dゲームまでもそつなくこなす。

 もし、あなたがあまりデジタル製品が好きでなく、シンプルに1個の製品ですべてを済まそうというのであれば、iPhone 4Sこそが、まさにそのための理想のデバイスになるだろう。まさに究極の「意志の自転車」だ。

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