iOS 5やiCloudは、何もiPhone 4Sだけの機能ではなく、すでに発売されている新型iPod touchやiPhone 4でも享受できることかもしれない。
しかし、これらの機能は通信速度が高速であればあるほど快適に利用できる。iPhone 4Sの通信速度は、ソフトバンクが採用するHSPDAでも従来の2倍程度だと思うかもしれないが、実は通信の速度というのは、必ずしも通信方式だけで左右されるものではない。
まず安定した電波も重要で、これについてはiPhoen 4Sは2つのアンテナを備え、電波のよいほうに切り替えながら通信をしてくれる(ちなみにiPhone 4では、アンテナ部分を指で覆うと受信感度が落ちるという問題が指摘されていたが、iPhone 4Sでいろいろな切れ込みを指で覆ってしばらく待っていても、なかなか受信感度が下がることはなかった。もしかしたら、アンテナを増やす以外にも何か工夫をしているのかもしれない)。
速い通信速度と、安定した電波環境も大事だが、実はCPUなどのプロセッサ処理能力も通信の速度に大きな影響を与える。どんなに通信機能がうまく働いていても、CPUが遅くてそこで処理が止まってしまっていたら元も子もないからだ。
その点iPhone 4Sは、通信速度、安定性に加えて、CPUそのものも圧倒的に速くなっており、通信によるタイムラグを表示更新速度の速さなどで十分補い、快適なiCloudの利用を実現してくれていると思う。
アップルは、ほかのメーカーのようにハードウェアだけを作るのでもなく、ほかのプラットフォームベンダーのようにOSだけを開発するのでもなく、その両方を双方向からブラシュアップすることで、他社が真似できない体験の製品を作り続けてきた。まず、ユーザーにとって最高の体験とは何かを考えたうえで、そこにあわせてハードウェアとソフトウェアの両面から調整をかけていく。これこそがアップル最大の強みでもある。
それでいうと、今後のアップルは、このハードとソフトの組み合わせに、さらにクラウドサービスもあわせた3つの側面からの擦り合わせで新しいデジタルライフスタイルを築こうとしている。そのiCloud時代の最初の製品となるのがこのiPhone 4Sだ。
人によっては、書類の更新がほかのデバイスに反映されるまでの十数秒のタイムラグを「長い」と感じる人がいるかもしれない。しかし、我々はこの新しい時代のほんの入り口に立ったばかり。今後、アップルはユーザーの声などに耳を傾けながら、ハード、ソフト、クラウドの擦り合わせによる新時代のデバイスの完成度を高めていくはずだ。iPhone 4Sは、その最初の1歩として、十分に魅力的な製品といっていいだろう。
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