ついに降り立った未来のパソコン環境――「OS X Lion」に迫るMacを未来へといざなう最新OS(1/4 ページ)

» 2011年07月20日 21時31分 公開
[林信行,ITmedia]

Lionのマルチタッチは、マウス以来、最大の革新

 これまで1週間ほど「OS X Lion」を使ってきて、このOSが過去のアップグレードのような1〜2年先の“未来”を先取りしたものではなく、これから10年先にあるPCの姿を見据え、その方向へ大きな一歩を踏み出そうとした、かなり意欲的なアップグレードであることを確信した。Lionの操作に慣れ始めてくると、一気に未来へと足を踏み入れたかのような感覚が開けてくる。

 6月に開催したWorldwide Developers Conference(WWDC 2011)の基調講演で、アップルはOS X Lionの特徴的な10の機能を紹介した(PCのあり方を再定義する「OS X Lion」)。

 10の機能を列挙すると、1つ目が「マルチタッチジェスチャー」、2つ目が「フルスクリーンアプリケーション」、3つ目が「Mission Control」、それから順に「Mac App Store」「Launchpad」「再開」(レジューム)」「オートセーブ」「バージョン」「AirDrop」「Mail」だ。

 その記事を書いたときには、まだLionに触れていたわけではないので、これら10の機能が、使い勝手にどれほど大きな影響を与えるかは実感できていなかった。それだけに、特に1番最初の「マルチタッチジェスチャー」については、かなり軽視していた部分がある。正直、これまでのMac OS Xでも、スクロールや拡大/縮小などのマルチタッチジェスチャーには対応していたし、「何をいまさら改めて」とか「iPhone/iPadがマルチタッチ操作で成功しているので、改めて強調したのだろう」と思っている部分が心のどこかにあった。

WWDC 2011の基調講演で紹介されたLionの新機能の1つ「マルチタッチジェスチャー」

 しかし、実際にOS X Lionを数日使っていると、このOSでは、「マルチタッチジェスチャー」が大きな違いを生み出していることをつくづく実感した。

 気になるWebページをSafariでフルスクリーン表示し、Pagesなどのワープロソフトをフルスクリーン表示にしながら文章を打つ。トラックパッドを左払い、右払いで切り替えて2つの画面を切り替えながら作業を進める。時折、疲れてきたらイスの背もたれによりかかりながら、Safariで表示しているWebページの読みたい部分を2本指ダブルタップでズームしたり、文中の写真をピンチイン操作でさらに拡大表示して楽しむ。

 そしておもむろにトラックパッドを上方向に払って(Mission Control機能を呼び出すジェスチャー)、カレンダーやメールのウィンドウに切り替えたり、ダッシュボードで天気予報を確認する。

ズーム(画面=左)やスワイプによるアプリケーション切り替え(画面=右)も自在に行える

 それから、ふと思い立ったように親指+他の指3本でデスクトップをギュっとつかむようにピンチイン操作をすると、画面にふっとLaunchpadのアプリケーション一覧が表示されるので、そこから起動したいアプリケーションを選んだり、ピンチアウトの操作でデスクトップの書類をつかんだりする――。

Launchpadでアプリケーションを一覧表示(画面=左)。辞書で調べることも可能(写真=右)

 そう、すべての動きが滑らかで心地よく、すべてのマルチタッチジェスチャーが自然と手になじむ。これこそがOS X Lionの最大のだいご味だ。言葉で書いただけではイメージしにくいかもしれないが、これを実際にLionで試してみると、まるで映画「マイノリティー・レポート」で、トム・クルーズが画面の情報をタッチして、右へ左へと自由自在に操作していたあの世界へ1歩近づいた気がしてくる。1984年の初代Macにおける「マウス」と違って、一言で伝えにくい部分があるが、OS X Lionは、その「マウス」に匹敵する操作の革命といっていいだろう。

 ちなみに、これまでにもMacでマルチタッチのジェスチャーを使ってきた人は、Lionに切り替えて初めてスクロール操作をする時にとまどうはずだ。実はLionでは、スクロール操作時のマウスを払う方法が逆向きになっているからだ。

 これまでのMacでは、Webページの画面を読み進むとき、トラックパッドに指を2本追いて、それを下方向に払っていた。これはマウス時代、スクロールバーに表示されていたスクロールボックスを下方向にドラッグしていた操作のなごりだろう。

 しかし、Lionではトラックパッドはユーザーが画面上の情報に触れる場所。iPadでのタッチ操作と同じで、Webページを上に押し上げる感覚で、トラックパッドを2本指で上方向に払ってスクロールを行う。

 これは小さいようでいて重要な変化だ。操作の向きを逆にするなんて、本来OSメーカーがあまりやってはいけないことだが、「情報を触る」という感覚をユーザーに味わってもらうには、これは必要な変更と判断したのだろう。アップルは、その英断に乗り出したのだ。

 もっとも、最初は「これはとまどいそう」と心配していたが、筆者は半日もしないうちに、すっかりこの操作に慣れてしまった。どうしてもこの操作に慣れない人には、トラックパッドのシステム環境設定から設定変更も可能になっている。

 なお、外付けのトラックパッドやマウスでありながらマルチタッチ操作にも対応している「Magic Mouse」をつなぐと、きちんとそれを認識して、そのデバイスでの最適な操作を提案してくれる辺りもハードとソフトの融合を強みとするアップルらしい。

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