ついに降り立った未来のパソコン環境――「OS X Lion」に迫る:Macを未来へといざなう最新OS(2/4 ページ)

» 2011年07月20日 21時31分 公開
[林信行,ITmedia]

「作業場」という概念がMacとiPadを分かつ

Mission Control

 Lionは、10年先を見据えて、Mac OS Xのさまざまなコンセプトをゼロから見直して再創造しようという意欲的なOSだ。そのために、深堀りするとものすごく深く語れてしまう機能が多い。

 前項で軽く触れたMission Controlとフルスクリーンも、そうした機能の代表格だ。実際、これについて書き始めたらとてつもなく長い文章になってしまい、読み返してなんだか難しそうに見えてしまうことに気がつき、改めて書き直しているが、素晴らしいのは、このものすごく深い考えが込められた新機能がさらっと、自然に実装されているおかげで、ユーザーは悩むことなく、自然にこの新機能やそこで描かれている概念を受け入れられることだろう。

 最初はとっつきにくいかなと思ったMission Controlは、慣れてしまうと非常に分かりやすい作業場の集中管理環境で、これも1度慣れてしまうと、もうこれなしの環境には戻れなくなるほど手になじむ。

 このMission Controlのおかげで、執筆に集中して他のものが一切表示されない作業場(スペーシズ)、常にカレンダーが表示される場、キッチリと端をそろえて辞書系ウィンドウのアプリケーションを並べた場といったように、複数の(他のウィンドウにじゃまされない)作業場を確保し、その間をタッチ操作で自由自在に行ったり来たりできる。

 iPadが1度アプリケーションを起動すると、そのアプリケーションの専用機となって、ユーザーが集中してクリエイティブな作業ができるように、Lionでは集中できる作業場を確保しつつ、それをものすごく快適に他の場と切り替えできるようにしている。これも「作業」の効率や心地よさに革命をもたらしている。

それぞれの用途に応じた複数の“場”をすばやく切り替えて作業ができる

大アップグレードでありながら、細かな工夫も満載

 難しい概念的な話題が続いてしまったが、Lionにはシンプルでありながら、工夫が効いていて便利な機能も多い。

 ファイル転送機能のAirDropなども、ユーザーをうならせる新機能の1つだ。例えば、今目の前にいる他のMacユーザーにファイルを渡したいとしよう。しかし、今いるのはカフェで、無線LAN環境はなく、USBメモリもない。どうやったら、ファイルの受け渡しをしようか――というのは、日常よく直面する問題だが、AirDropはこれを非常にスマートに解決した。

 Finderのサイドバーに組み込まれたAirDropアイコンをクリックすると、周囲でAirDropを起動しているユーザーの一覧が現れる。相手のアイコンと名前が現れたら、後はそこに渡したいファイルをドラッグ&ドロップするだけだ。後は相手がそのファイルを受け入れてくれれば、すぐに転送が始まる。ファイルの受け渡しをしたいユーザー間で、一時的なホストなしでつながる無線LAN環境を作るというだけのシンプルな機能だが、これがなかなか便利なのだ。

AirDropでMacユーザー同士が簡単にファイルのやり取りをできるようになった

 Spotlightの検索機能も進化した。これまで検索キーワードを入力するとたくさん候補が表示されたのはいいが、どれが目当てのファイルか分からない、ということがあった。そこで「すべてを表示」を選んで、Finderでカバーフロー機能やクイックルック機能を使って、1つ1つの検索結果の中身を確認していた人は私だけではないはずだ。素晴らしいことに、新しいSpotlightでは、検索結果の1つを選択すると、その横にクイックルック技術を使ってファイルの中身が表示されるのだ。これは検索効率を激変させる。

 同様に、「ことえり」を使って日本語を入力していて、言葉の意味があっているかどうか気になった時も、しばらく、候補を選択したまま待っていると、すぐ横に辞書を参照した結果が表示される。これも素晴らしい。

Spotlightの検索機能も強化。辞書の参照結果も表示される

 一方、Mailも(ちょっとした工夫なのだが)、よく使うフォルダの一覧をツールバーに登録できるようになったおかげで、メールの仕分けが非常に楽になっている。また、数通にまたがるやりとりのメールを下スクロールするだけで、1通目から最新のものまで通しで表示(それでいて、途中に挟まれている過去メールの引用部分など不要部分を隠してくれる)スレッド表示機能を搭載した。これもなかなか秀逸だ。

Mailも細かい改良が施されて使いやすくなった

 このようにLionは、非常に大胆な未来のコンピューティングに向けてコンセプトの見直しを図る一方で、日常操作で不便あるいは面倒だと思っていたことを、デザイン上の工夫でスマートに解決している。Lionに搭載された250の新機能には、そう思わせる機能が非常に多い。

 Lionが追求しているのは便利と快適だけではない。「安心」も大きなキーワードになっている。元々ウイルスなどが少ないMacの世界に、Mac App Storeを通してアプリケーションを配布するモデルを持ち込んだこともそうだが、筆者が一番、感動を覚えたのは、システムが壊れた時への備えもしっかりあることだ。

 Lionをインストールすると、HDD上に自動的にシステム修復用のパーティションが用意され、万が一、ディスクの一部が破損したり、システムが壊れてMacが起動しなくなった場合は、その復元用パーティションからMacを起動して、ディスクを診断したり、Time Machine機能からMacの状態を修復したり、OS Xを再インストールしたりできる。

 Time Machineにも工夫が盛り込まれている。これまでTime Machineによるバックアップは、自宅に帰って外付けHDDをつないだり、Time Capsuleに無線LAN接続をした時しか行われず、長期の出張中は不安だった。しかし、Lionでは内蔵HDDの空きスペースを活用して、作成、変更、削除したファイルをバックアップしてくれる。ローカルスナップショットという機能が用意されているのだ。

 だが、このローカルスナップショット以上に革新的といえば、やはり、オートセーブとバージョンズ機能だろう。

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