OS X Lionからは「保存」機能がなくなる。保存なんていう操作は、ファイルの書き込みに時間がかかったカセットテープやフロッピーディスク時代の名残りなのかもしれない。そのころは、1度保存を始めてしまうと、書き込みが終わるまでに非常に時間がかかるので、編集作業を自動的に保存するなど考えられなかったのだ。しかし、今はHDDからSSDに移行しようとしている時代で、書き込みも一瞬で終わる。
そんなタイミングで登場した自動保存機能のオートセーブ(これはアプリケーション側の対応が必要)や、変更履歴を振り返るバージョンズの機能は、技術的にはそれほど驚くものではないのかもしれない。しかし、この機能がどのように実現されているかで事情は全然変わってくる。
この機能を呼び出すと(ウィンドウのタイトルバーから「すべてのバージョンをブラウズ」を選択する)、左側に現在の書類、そして右側にこれまで加えてきた変更の履歴が登場する。さらには現在と過去の2つのウィンドウ間でテキストや画像を自由にドラッグ&ドロップし、移動やコピー&ペーストができる。このことが、もしかしたら、これから先の作業スタイルに大きな変化をもたらすのではないかと期待をさせる。
個人的なことで申し訳ないが、私は1本の原稿を、何度も何度も書き直しながら、小刻みに執筆を進める性格だが、書き直しをする際、未練たらしく書類の末尾などに書き直す前の文章を残しながら、執筆を続けてしまうところがある。
しかし、バージョンズが当たり前になったら、書類に対してもっとバッサバッサと変更を加え、大胆な試行錯誤ができるような気がしてならない。さすがに、1週間の試用では、そこまでワークスタイルの変化を体感することはできなかったが、ここもLionに大きな期待を寄せる1要素だ。
Lionに搭載された新機能は250項目に及ぶ。MissionControlのような大技の機能もあれば、マルチタッチのように触ってみないと分からない新機能も、Finderのサイドバーアイコンのデザイン変更のように、非常に細かな変更もあり、1つ1つを取り上げているとキリがない。とはいえ、本当によく探さないと見つからないような新機能も多い。
ここでは筆者の独断で、あなたの仕事のやり方を変えるかもしれない、見つけにくい隠れた名機能3つを取り上げて紹介したい。
最近、サインして送り返さなければならない書類をPDFで受け取ることが多い。印刷してから署名し、それをまたスキャンするか、それともがんばってトラックパッド操作でサインをするべきかが悩ましいところだったが、新しいプレビューには紙に書いた署名をiSightカメラから取り込んでPDFに加えてくれる機能が用意されている。
Google Calendarとの同期がさらにしやすくなった新しいiCalでは、実は「年」表示が非常によくできている。iCalにどれくらいの予定が詰め込まれているかを検証した上で、忙しい日とそうでない日を色で塗り分けてくれるのだ。
例えば大がかりなプロジェクトの予定を入れるとき、この年表示で確認すれば、前後の週を含めどの週だと、どれくらいスケジュールが立て込んでいるか直感的に判断できる。
Mailで取引相手の名前で検索をしたら、おそらく該当項目が多過ぎて、なかなか目当てのメールを見つけられないだろう。だが、取引相手から、先月送られてきたメールで、「請求書」を含むメールだとどうだろう。
Lion のMailでは、こうした複合条件をうまく使ってメール検索の絞り込みができる。やり方は簡単で、相手の名前がアドレスブックに登録されているかを確認するだけ。登録されていれば、名前を打ち込むと、自動的にそれが人名として認識されるので、メニューに表示された相手の名前を選べば、それが「送信者」として認識される。その上で、次の検索条件である時期「先月」を追加し、さらにキーワードを追加すればいい。
また非常に細かな変更では、Finderで複数項目を選んだ状態で、コンテクストメニューを選ぶと「選択項目で新規フォルダ」という項目が表示される。ここ選ぶと選択項目がすべて入ったフォルダができあがる。これをAirDropにそのままドラッグして送信したり、再びコンテクストメニューを使ってZip圧縮してメールするといった小技も非常に便利だ。Lionに切り替えることで、いつもの業務の中に潜んでいたわずらわしさがかなり解消されるはずだ。
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