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8Kの“フルスペック”カメラも登場――2020年のテレビの姿が見えるNHK技研公開

» 2014年05月27日 21時14分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 東京・世田谷の「NHK放送技術研究所」が今年も5月29日から一般に公開される。5月27日にはプレスプレビューが行われ、技研の藤沢秀一所長が2020年の実用化を目指す8Kスーパーハイビジョンなど展示のポイントを紹介した。「8Kに関しては番組技術から伝送、受信機まで要素技術をあますことなく展示している。2020年の東京オリンピックでは、こうした8Kを見ることができる」(藤沢氏)。

会場入り口では「2020年 東京五輪は8Kスーパーハイビジョンで!」とアピール(左)。技研の藤沢秀一所長(右)

 今回の技研公開で展示される研究成果は31項目で、そのうち半数を8K関連技術が占めている。一方で試験放送の開始が間近に迫っている4Kをメインにした研究発表はゼロだ。8Kスーパーハイビジョンを開発・推進する技研のスタンスを改めて浮き彫りにした。

 その8Kは、2年後の2016年に実用化試験放送を開始し、東京オリンピックが開催される2020年ので本放送を目指している。今回は「フルスペック」の8K撮影を可能にするカメラ、1本のケーブルで8K映像信号を伝送できる光インタフェース、単板で8K撮影を可能にする1億3300万画素のイメージセンサーなど、カメラ技術を中心にさまざまな要素技術が展示され、試験放送に向けた準備が順調に進んでいることを伺わせた。

8K/120p、12bit、BT.2020準拠の広色域仕様というフルスペック8Kカメラ(左)。動画用としては世界最高となる1億3300万画素のイメージセンサー。単板で8K撮影が可能になるほか、35ミリフィルムサイズのため市販のスチルカメラ用レンズが利用できるメリットもある(右)

 8Kの“フルスペック”とは、「UHDTV」(=海外におけるSHVの規格、呼び方)のITU-R勧告のBT.2020や国内規格のARIB STD-B56で標準化された主要パラメーターのうち、画素数が7680×4320ピクセル(=8K)、毎秒120フレーム、RGB各色12bit、そして広色域表色系のものを指す。展示されたカメラには静岡大学と共同開発したイメージセンサーと色分解プリズムを搭載し、より鮮やかな色も表現できるようになったという。

 一方の光インタフェースは、24芯の光マルチリンクケーブルを用いており、伝送容量は1芯あたり10Gbps。フルスペック8K映像信号(約144Gbps)を1本のケーブルでディスプレイに映し出すことができる。コネクター部は一般的なBNCタイプだ。なお、このインタフェースは2014年3月にARIB STD-B58として規格化されている。

24芯の光マルチリンクケーブルを使い、1本で8K伝送を可能にした

 このほかにも2016年の試験放送で使われる符号化方式(MPEG-H HEVC/H.265)や高度広帯域衛星デジタル放送の伝送方式も展示。三菱電機と開発したHEVCリアルタイムエンコーダーは、H.265の仕様に正式に準拠した(昨年は最終版ではなかった)。さらに8K時代のHybridcastや8Kの先を行く裸眼立体視テレビなど、展示内容は幅広い。

8K/120Hz撮影を実現したわずか2キロのカメラヘッド。実際に動きのある被写体を毎秒120フレームで撮影していた(左)。8K時代のHybridcast。高精細画面を使い、放送画面の周囲にネット経由で取得した別アングル動画を表示したり、選手のプロフィールを並べるといったことが可能だ。108人分の選手名を一覧するデモンストレーションも行っていた(右)

 また、技研講堂で上映される恒例「8Kスーパーハイビジョンシアター」では、2013年に東京で行われたミラノ・スカラ座来日公演の「リゴレット」をハイライト上映する(約10分)。世界最高峰と言われるイタリアオペラのステージを撮影したのは、技研が開発した「シアターカメラ」。3300万画素の高精細映像と22.2ch音声で「講堂が世界一の劇場に早変わりしたかのような臨場感」を楽しめるという。

「シアターカメラ」は、劇場公演などの撮影に向け、感度アップと低騒音化を図った8Kカメラだ。実際に「リゴレット」を撮影した(左)。1階ロビーには1964年の東京オリンピックのために開発された「2IO分離輝度方式カラーカメラ」などを展示する「NHK放送博物館」コーナーを設置。50年前にも日本の放送技術を世界にアピールしていたのだ(右)

 NHK放送技術研究所の一般公開は、5月29日(木)から6月1日(日)まで(28日は招待者内覧会)。開場時間は10時〜17時までとなっている。

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