4Kテレビの購入を検討するに当たり、やはり気になるのは4Kネイティブコンテンツが増えていくかどうか。6月2日から4K試験放送が開始され、衛星放送やCATV、IPなど複数の手段で一般家庭にも4K映像が届く状況になるが、現時点で放送が決定しているコンテンツは昨年NexTV-F加盟放送局が試験的に制作した15番組のみ(5月末時点)。サッカーW杯への期待とともに、放送局の動向も気になるところだ。
今回の試験放送に地上波は含まれていないため、当然民放の動きは遅い。では、日本放送協会(NHK)は、どこまで本気で取り組んでいるのか? その疑問に答えてくれたのは、5月30日に「iVDR EXPO」で講演を行ったNHKエンタープライズの執行役員、4K/8K事業担当の長谷川孝氏だった。長谷川氏は、自身もNHKで長く番組制作に携わっていた経験から、「NHKは本気」と判断したという。
NHKがこれまでに撮影した4K番組は、「ダーウィンが来た!ホッキョクグマ」「人体・ミクロの大冒険」「時代劇 桜ほうさら」「ミラクルボディ サッカーW杯編」など、まだ片手で数えられる程度の本数だ。しかし長谷川氏は、「鍵は人材にある」と指摘する。
「プロデューサーやディレクターにも、できのいい人も、普通の人もいる。そしてこれらの番組は、NHKでもトップクラスのプロデューサーが担当している」(長谷川氏)。
また2015年には、“大型シリーズドラマ”をはじめ、「国民的番組」が4Kで撮影される計画だという。大物アーティストの記念碑的公演を4Kで収録する計画もあるなど、コンテンツの幅も徐々に広がりを見せている。そして「自然番組は今後、ほぼ4K化される」という。
「NHKは、昨年秋あたりから人材をかなり投入している。コンテンツが続々と登場し、4Kマーケットを活性化すると思う」(長谷川氏)。
その一方で長谷川氏は、4Kコンテンツが再生産され続けるには、足りないものがあると指摘した。
現在の2K番組は、地上波で放送されることで制作費のほとんどを回収できており、DVDやBlu-ray Discなどのパッケージ販売やVoD、そして海外の放送局への販売といった“二次展開”は比較的安く提供できている。ところが4Kは、大元になる“放送”が試験をはじめる段階。視聴者数は限られるためスポンサーは付きにくく、放送自体も無料だ。あくまでもビジネスを度外視した先行投資であり、放送だけでは制作費を回収できない。
事実、NHKエンタープライスでも現在の4K番組制作はまだ赤字だ。番組制作者は投資を回収できる見通しが立たなければ“再生産”を続けることも難しい。そこで長谷川氏が提案したのは、放送だけではなく、VoDや海外展開、パッケージなどトータルで制作費を回収するビジネスモデルの構築だった。
4K対応のVoDはひかりTVやJ:COMが計画しているが、パッケージメディアは今のところiVDRしか存在しない。長谷川氏は、参加者たちを前に「これまでとは発想を変え、ほかの事業者にも制作費も負担してもらわなければならない。賛同してもらい、是非ともご一緒したい」と訴えた。
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