iVDRコンソーシアムは5月30日、東京・秋葉原で開催した「iVDR EXPO 2014」で、iVDR規格が4K映像の記録に対応したことを明らかにした。iVDRコンソーシアムの日置敏昭理事長は、「4K、8Kのような高精細映像の記録に一番ふさわしいのは、大容量で高速なデータ転送レートを持つiVDR。今後、コンテンツは質を追求する時代になる中で重要な位置を占めるだろう」とした。
iVDR(intelligent Versatile Disc for Removable)は、著作権保護機能を持つリムーバブルハードディスク。可搬性と標準化されたインタフェースを持ち、著作権保護技術「SAFIA」を搭載したiVDR-S(iVDR-Secure)ならデジタル放送の録画も可能だ。2007年に初の市販製品が登場してから、これまでに録画機能付きテレビやHDDレコーダーなど累計800万台のiVDR機器が世の中に出ている。
現在、販売されているカートリッジの最大容量は1Tバイト。この大容量を活かしたパッケージビデオとしても注目を集めており、例えば15時間5分の映像を1巻に収めた「ハイビジョンオペラプレミアムコレクション」、73時間50分の「三国志」など長時間コンテンツを中心に展開している。
そして、この大容量を活かす次のアプリケーションとして着目したのが4Kとハイレゾ音源だ。コンソーシアムではiVDR規格の「TV-Recording仕様」をver.2.50にアップデート。4K映像によるパッケージビジネスにフォーカスして各種フォーマットを規定したもので、ビデオコーデックはH.264/AVCのほか、H.265/HEVCをサポートしている。音声は最大192kHz/24bitのリニアPCM(最大7.1ch)まで利用できるため、ハイレゾ音源の流通手段としても活用が可能。あわせて、展示会場ではHGSTが開発した4Kプレーヤーの試作機も公開した。なお、4K試験放送の録画については詳細非公開のため、規格化の議論から除外された。
「iVDRならアプリケーション層を変えるだけで、インタフェースなどを変えなくても対応できる。技術の進歩に素早く対応できるメディアだ」(日置氏)。
続いてiVDRを使ったセルビデオパッケージを展開するジェー・ピーのコンテンツ制作本部・中野七生氏が登壇。iVDRの特徴を活かしたビジネスについて語った。同社は文化、歴史分野を中心にセルビデオを制作・販売しており、前述の「ハイビジョンオペラプレミアムセレクション」などを販売している。
中野氏によると、「BDはDVDよりコストもかかるため、ある程度の規模が見込める人気映画やアニメ、ドラマに向いている。一方、iVDRは初期コストが抑えられるため、BDでのリリースが難しいニッチ層向けのコンテンツに向いている」という。例えば「三国志」のような長時間コンテンツをBDに収めようとするとディスクが数十枚という規模になってしまい、それぞれプレス用原盤費用がかかる。また限られた容量のBDに収めるため圧縮レートを最適化しなければならず、エンコード費用などの制作コストも上昇するという。
「iVDRならオーサリング、長尺コンテンツも1カートリッジに収録でき、マスタリングコストの低減効果が向上する。再生時にはディスクの入れ替えも不要で利便性が高い」(同氏)。
さらに、BDのプレスを行うには500〜1000枚規模の需要が期待できないと難しいが、iVDRなら1本からディプリケートが可能。初期コストと在庫リスクの面でも有利になる。つまり、高付加価値の長尺コンテンツを少数生産するという、ニッチなポジショニングがiVDRパッケージビデオの鍵になるという。
例えば2013年7月に発売した「Shining On -Decades Of Brilliance」。宝塚歌劇団の未来優希さんの芸能生活20周年を記念した記念コンテンツで、20周年記念コンサート映像をはじめ、撮り下ろしドキュメンタリーや秘蔵フォトなど4時間半のプレミアムコンテンツを収録した。ターゲットはコアなファン層で、コンサート会場やファンイベントなどで販売。もちろん再生環境がないと視聴できないため、同社はアイ・オー・データ機器のiVDRプレーヤーとセットで販売したという。
2013年12月に発売した「欧州 美の浪漫紀行iVDR Collection」は、欧州20カ国の80におよぶ美術館や博物館で1050点以上の作品を収録したもの。もとのテレビシリーズに特番などを加え、総収録時間は69時間だ。ターゲットは美術ファンや富裕層のため、マクセル製iVDRレコーダーとのセットプランを用意し、さらに購入者宅で設置作業まで行うサポートプランを用意した。24万8000円という高額商品にもかかわらず、コンスタントに受注があり、「非常にうまくいった」(同氏)。
「課題は、iVDRならではの長時間収録とディスク取り替え不要といったメリットが活きるコンテンツをいかに見つけられるか。ターゲット層に対してしかるべき販路で届けられるか。BDでは500以上だが、iVDRでは200〜300人規模の顧客層をターゲットにする」。ターゲットを絞り込んだニッチなコンテンツを販売するビジネスモデルのため、専門店型通販やファンクラブルートなど、コアなファン層にリーチできる販路を確保することが優先事項になるという。
一方、リアル店の棚やAmazonで販売する場合にBD/DVDとは異なパッケージを認知してもらうため、iVDRコンソーシアムでは「iV VIDEO」ロゴマークとケースの推奨規格をガイドラインとして策定する。ロゴマークは、光ディスクの円盤意匠との差別化するためカセットの形状を反映したもの。一方のケースは外形寸法が、181.5(高さ)×136(幅)×20(奥行き)ミリで、赤をイメージカラーにする見込みだ。
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