7月28日に東京・有楽町の東京国際フォーラムで「ケーブル技術ショー」が開幕した。 昨年は4Kに対して“様子見”ムードも漂っていた同展示会だが、今年は少し様子が違う。NexTV-FやJ:COMが6月に開始した4K試験放送を受け、次世代STBを中心とした4K関連展示が注目を集めた。
例えばブロードネットマックスは、住友電工が開発した4K対応STB「ST4172」の試作機を展示している。HEVCデコーダーとケーブルモデムを内蔵し、RF(同軸ケーブル)に加えてIP VoD、IP放送のすべてに対応する“4Kハイブリッドモデル”だ。OSはAndroid 4.4で、HTML 5対応ブラウザや外付けHDDへの録画機能、DLNA/DTCP-IP(DMS)なども備えている。
展示機は、機能、デザインともに「検討段階」(同社)のプロトタイプだが、担当者によると「多くの来場者がSTBの写真を撮っていく。4K対応を検討している事業者が増えたのではないか」と話していた。
また米ARRISグループもUltra HD(4K/8Kの欧米での呼び方)対応をうたうSTBのプロトタイプを展示。詳細は未定ながら、フロントパネルにはH.265(HEVC)をデコード中であることを示す「H.265」の文字が表示されていた。デモコンテンツは4K/30pの15Mbpsだという。
4K対応STBが注目を集めるもう1つの理由は、日本ケーブルラボが示した「第3世代STB開発ロードマップ」だ。これによると、2014年9月には4K対応、NexTV-FのTR001に準拠したリモート視聴、ハイブリッドキャストを含む“第3世代STB”に関する運用仕様群が策定される見通しになっている。
J:COMの4K試験放送では既存インフラで問題なく4K伝送が行えることが実証された。さらに標準規格に沿ったSTBが間もなく登場することで、コンテンツの問題は残るものの、CATV事業者の間で4Kに対する期待が広がっていることは確かだ。「地上波で4K放送を行う予定がない以上、4KはCATVの大きな付加価値になる。4Kテレビの普及にも期待したい」(日本ケーブルラボ)。
メーカー側の対応も早い。パナソニックが参考展示した「4K対応 RF/IPハイブリッドSTB」は、第3世代STB機能要件に準拠した上、4K IP-VODもサポートするハイブリッド型。さらに4Kテレビの高解像度を活用し、縦横12マスの計144マスで多チャンネル放送の番組を動画で一覧表示するユニークなユーザーインタフェースを備えている。もちろん144個のチューナーを本体に内蔵しているわけではなく、CATV局側で作成した画面を1チャンネルとして表示する形だ。
出荷時期などの詳細は未定だが、同社では「IP/RFともにハードウェアの4K対応は“レディー状態”」としており、早期の実用化も期待できそうだ。
パイオニアでは、現行“ハイブリッドBox”「BD-V372」で、将来的に第3世代STB機能要件を満たすファームウェアアップデートを検討していく。BD-V372はHEVCデコーダーを内蔵していないため、4K対応は外付けの「4K対応アダプタ」(参考展示)と連携する必要があるものの、広く普及しているSTBを置きかえることなく新技術に対応できるメリットがある。なお、同じく参考展示として4K対応STBも並べられており、既存モデルと新規開発製品の両方で4K対応を進める方針だ。
このほか4K関連の展示としては、日本デジタル配信(JDS)のブースで先日J:COMが発表した4K対応のIP VoD試験サービスを披露していた。この試験サービスは、ジュピターエンタテインメントと共同展開しているIP VoDサービス「milplus」(みるプラス)上で行われるもので、秋にスタートする予定。ヒューマックス製STBを用い、J:SPORTS提供の4Kコンテンツ(4K/60p)を表示している。
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