ITmedia NEWS >

イチから出直して作った――ブランド名を冠したイヤフォン「fitear」と「One more thing……」秋のヘッドフォン祭2014(2/2 ページ)

» 2014年10月27日 14時59分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
前のページへ 1|2       

 須山氏は、聴衆に力強く問いかける。

 「突然ですが、50回以上聴いた大好きな曲をいくつ挙げられますか?」。


 参加者が好きな曲を思い浮かべると須山氏は続けた。「誰もが持つ青春を彩った数々の名曲。1年間で50回以上聴いていた曲。しかも無批判で頭の柔らかい時期に……それはアニソン」。

始まりました

 アニソン――アニメソングとは、アニメーション作品のオープニングやエンディングを飾る曲か、それに関連する楽曲のことであり、もともと音楽的な傾向を示す言葉ではない。どのようなジャンルの音楽でも作られる。しかも幼い時期からアニメに慣れ親しんできた日本人にとって、誰もが共有できる音楽の原風景であるという。


 須山氏は、「例えば、『やっぱり音楽はジャズだよね』『聴く音楽はオーケストラが中心です』と言う人でも、初めて聴いたジャズやオーケストラ音楽は、実は『ルパン3世』や『宇宙戦艦ヤマト』のオープニングだったりするかもしれません」と鋭く指摘。「つまり、アニソンが問題なく再生できる製品は、どんな音楽でもOKなのです」と胸を張った。

 巧みな論理展開で聴衆をひきつけた須山氏だが、一方で2012年に発売したアニソン専用カスタムIEM「MONETー萌音ー」(もね)については少し反省点があるようだ。MONETは、バランスドアーマチュア型ドライバーを4つ搭載し、アニソンのベースラインの明瞭(めいりょう)化、きらびやかな高音を再現すると同時にボーカル帯域を少し沈めたバランスで、人が持つ聴覚の感度調整機能を積極的に働かせる狙いがあったという。

 ところが、「狙いが通(つう)過ぎて、本来どんな音楽でもイケるハズが、ちょっと分かりにくいバランスになってしまった。かわいいキャラクターとは裏腹に、死ぬほど好きな曲を“自ら聴きにいかなければならない”という、極めて能動的な聴取態度を求めるスパルタンな製品になった」。

かわいいキャラクターとは裏腹に、実はスパルタンだった「MONETー萌音ー」

その上、ヘンなスイッチまで入った

 その反省をもとに心機一転して開発したのが、新製品のカスタムIEM「Aya【彩】」だ。


イメージキャラクター登場

 同社としては久しぶりのカスタム新製品となる。イメージキャラクターも一新。チャイナドレスを着こなし、大きなマイクを持った元気娘だが、ときどき憂いを持った表情も見せる――といったイメージ画像が公開された。

「Aya【彩】」の概要

 製品の色は黒一色で、カスタムシェルを3Dプリンター出力で作る初めての製品になる。ドライバー構成などはやはり非公開だが、「誰もが分かりやすいバランスを目指す、とだけ言っておきましょう」(須山氏)。

「Music TO GO!」の佐々木嘉洋氏

 発表会では、事前にAyaの音をチェックした「Music TO GO!」の佐々木嘉洋氏が登壇。「ホーン型(のイヤーノズル)がバランスド・アーマチュア型ならではの高域を拡張する」と非公開の仕様に少し触れてしまったりもしつつ、「音質は非常に透明感がある。パルテールと違い、さまざまなャンルに適合する。生楽器が非常にリアルに感じられる、須山さんらしい良い製品」と全体としては高評価だった。

 ただし、「Aya【彩】」が潤沢に供給されるのは少し先になるかもしれない。それは、生産のキャパシティーが限られているためだ。「3Dプリンターで制作するといっても、それはシェルのみ。内部ユニットやネットワークの組み込み、仕上げは変わらずに人の手で行うため、実際の作業時間はあまり変わりません」(須山氏)。

 気になる価格について須山氏は、「オープン価格です。オープンの良いところは、決まっていなくてもいいところ」と正直すぎるコメント。また発売時期についても「なんとか年内……来年内」と幅広い。「スタッフが残業ばかりで体をこわさないよう、状況を見ながら改めて発売時期をご案内したい」(須山氏)。

「Aya【彩】」。試聴用に一般的なイヤーチップを付けたもの(左)。Fitearブースは試聴で大行列。その注目度の高さが伺えた。でも、須山歯研がブラック企業化しないように気長に待ちましょう

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.