さて、このDELAシリーズの「N1A/N1Z」が、昨年12月のファームウェアのアップデートでUSB-DAC接続機能が新たに追加された。本機のUSBポートにUSB-DACをつなげば、本機がデジタルメディアレンダラーとしてはたらき、手持ちのスマート端末にインストールした操作アプリ(リンDS用のkinskyなど)をデジタルメディアコントローラーとして機能させることができるわけだ。つまりネットワークオーディオプレーヤーを使わずとも、PC無用の同じ操作感覚で音楽ファイルが楽しめるのである。しかもDSD対応のUSB-DACとの組合せでは、その該当ファイルも再生できるわけで、2.8MHzに加えて5.6MHz/DSDファイルの配信が増えてきた昨今、これは見逃せないポイントだ。
このDELAシリーズのUSB-DAC接続機能、1月13日に発表された最新ファームウェア「Ver.1.11B」から、先月の本欄で採り上げた、現在愛用中の英Chord(コード)の「Hugo」でも連携可能になったとのことで、さっそくUSB メモリーを用いて「N1A」のファームウェア・アップデートを試みた。
作業完了後、「Hugo」と「N1A」を専用USBケーブル(HugoはマイクロUSBポート仕様)で接続、手持ちのiPhoneにインストールしているkinskyを開くと、ルーム設定画面に<「N1A +Hugo」と明示されていることが確認できた。これを選んだ後は、リンDSを操作するのとまったく同じ要領でライブラリーに入っていき、好きなようにプレイリストをつくっていけばいい。
実際に聴いたその音は実にすばらしいものだった。音像の表現力が緻密で伸びやか。音楽が縮こまった印象がまるでないのだ。最新のUSBインタフェースを備え、コード史上最高タップ数のWTA補間フィルターと最新仕様の同社独自のパルスアレイDACプログラムをFPGAに書き込んだHugoの魅力が大きくクローズアップされた音といってもいい。この色彩感豊かな闊達(かったつ)な音を聴いて、これがいわゆる“ポタアン”の音だとは誰も思わないだろう。
デビュー作以来、ハイレゾファイルの販売が好調だという女性シンガー、SHANTI(シャンティ)の最新作「SHANTI'S LULLABY」からピアノとのデュオ曲「ララバイ(グッドナイト・マイ・エンジェル)」(96kHz/24bit、WAV)を用いて「KLIMAX DS/K」再生とシビアに比較すると、ボーカルの滑らかさやピアノの実在感の高さ、ステレオイメージの広さで「KLIMAX DS/K」再生に軍配が上がることが分かった。さすがリンDSの最高峰モデルと感心したが、N1AのUSB-DAC機能、予想以上の健闘だ。
「Hugo」はDoP(DSD over PCM)再生で5.6MHzまでのDSDファイル対応をうたっている。そこで2.8M/5.6MHz両DSD ファイルをいくつか試してみた。
「I See You While Playing The Piano/JOSEI 」(オリジナルの11.2MHzを5.6MHzに変換したもの、OTOTOYで配信中)、「My Native Land/藤本一馬」(5.6MHz、e-onkyo musicで配信中)、「ライヴ・アット・ブルーノート東京/山中千尋サムシン・ブルー・クインテット」(2.8MHz、e-onkyo musicで配信中)などだが、どの音源もDSDらしさにあふれ、とても滑らかでスムーズな音が楽しめ、大いに満足した。とくに演奏現場の空気感の再現にPCM 系ファイルとは異なるDSD ならではの魅力があると思った。
リンDSは残念ながら未だDSDファイルに対応しておらず、ぼくはこれまでDSDファイルを聴くときは再生ソフト「Audirvana plus」(オーディルバーナプラス)をインストールした「Mac Book Air」と「Hugo」を組み合わせて楽しんでいたが、「N1A」がデジタルメディアレンダラーとして活用できるようになった今、Mac Book Airを開くことは少なくなるだろうと思う。「N1A」と「Hugo」の組合せならば使い慣れた操作アプリkinskyが使えるし、Mac Book Airよりも「N1A」を使ったほうが音質面のメリットがあると実感できたからだ。
ただし、「N1A」と「Hugo」の組合せではDSDファイル再生時に、曲のアタマが切れたり、再生中に音が途切れたりするケースがある。これについてはバッファローとコードの輸入元両社でぜひ解決していただきたいと思う。
また、DELAシリーズにはDSD/PCM変換機能も設けられている。すべてのDSDファイルを44.1kHz/24bitに変換してDACに出力する機能だが、音質は感心しなかった。DS未対応DACでもとりあえずDSDファイルが聴けるオマケ機能と捉えるべきだろう。
さて、「N1A」と「Hugo」の組合せで予想以上の満足できる音で聴けたとなれば、当然上級機の「N1Z」と「Hugo」を組み合わせたらどんな音が聴けるのだろうという興味がわいてくる。そこで、バッファローのDELA担当者にお願いして、「N1Z」をお借りし、その音を聴いてみた。
結論を先に述べると、その音質差はとても大きかった。リンDSにストリーミングするデジタルメディアサーバーと使う限りは、「N1A」と「N1Z」の音質差はほんのわずかと先述したが、ネットワークオーディオトランスポート(デジタルメディアレンダラー)として使った場合は、「N1Z」の物量投入効果ががぜん効いてくる印象なのである。
「N1A」での再生に比べて音がいっそう緻密(ちみつ)になり、音が実に生々しいのだ。SHANTIのピアノとのデュオ曲「ララバイ(グッドナイト・マイ・エンジェル」を聴くと、ピアニストがフットペダルから足を離したときに生じるアクションノイズが精緻に描かれ、思わずドキリ。SHANTIのボーカルもいっそう滑らかで、なまめかしい。
うーんなるほど、この音は「KLIMAX DS/K」再生に引けをとらないほどのすばらしさだ。「N1A」に加えて「N1Z」を買うかどうか、しばらく悩みの日々が続きそうだ。
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