KDDIは1月19日、家庭や小規模や商店・事務所向けの電力サービス「auでんき」を正式発表した。1月20日から申し込みを受け付け、4月1日から順次提供する。
auでんきは、4月の電力小売り全面自由化に伴い同社が開始する新事業。沖縄県と一部離島を除く全国が対象だ。料金は一般電気事業者(地域の電力会社)が現在提供しているものと同じで、主に家庭向けの「でんきMプラン」、事務所や商店など法人向けの「でんきLプラン」の2つを用意した。Mプランは現在の従量電灯B料金、Lプランは従量電灯C料金とまったく同じだ。
最大の特徴が、au携帯電話やスマートフォン回線とセット契約すると、電気料金に応じて1〜5%をキャッシュバックする「auでんきセット割」が利用できる点だ。
料率は月額料金が4999円までは1%、5000円〜7999円なら3%、8000円以上は5%で、相当分のポイントをau WALLET プリペイドカードにキャッシュバックする。さらに業務提携する関西電力のエリアでは、8000円以上の利用で最大12%を還元するキャンペーンも行う。
KDDIの石川雄三専務はauでんき割りについて、「電力自由化は7〜8兆円の市場ができると言われ、非常に注目を集めている。また電気代が安くなるなら変えたいというユーザーからの期待も大きい。一方で、本当に安くなるのか、プランによっては高くなるのではないか? という声もある。電気料金は世帯構成によって月々の電力量は異なり、季節変動も大きい。『たくさん使えば安くなる』ではなく、分かりやすくて、どんな使い方でも必ずお得になる方法を考えた」と、他社との違いを説明した。
またau WALLETはクレジットカードのように世界3810万の店舗で利用できることから「ほぼ現金のような使い方ができるので、キャッシュバックと呼ばせていただく」(石川専務)と補足した。auでんきをau WALLET クレジットカードで支払えば、さらに200円ごとに2ポイントがたまり、固定と携帯のセット割であるauスマートバリューも併用できる。
申し込みは、auショップに電気料金の検針票を持参すれば行える。電力サービスの切り替えにはスマートメーターの取り換えが必要だが、これは地域の電力会社が要望に応じて無料で実施する。なお、新しい電気料金は契約世帯ごとに決まっている検診日から計算することになるという。
KDDIではauでんきのサービス開始と同時に、電気使用量や電気料金をスマートフォンやPCで確認できる専用アプリ「auでんきアプリ」も提供する。スマートメーターが計測したデータをKDDIのクラウド経由で確認できるもので、電気使用量の予測や省エネに役立つ情報の配信、LED電球など省エネ製品の販売も行う。
石川専務は電気事業に参入する狙いを、「auユーザーの満足度を上げ、au経済圏を拡大するため」と説明する。自ら7〜8兆円規模と紹介した電力自由化市場だが、KDDIとしての数値目標は「非公表で申し上げられない」とした。
電力サービス事業は4月の自由化に向けて参入が相次いでいる。通信キャリアでもソフトバンクが東京電力と提携し、1月12日に「ソフトバンクひかり」を発表した。ソフトバンクの独自料金は毎月300kWh以上使う際に割引きが発生するもので、3〜4人世帯での利用を想定した。そのため単身世帯や2人暮らしなどでは割高になるケースも考えられるという。
石川専務は直接名指しこそしなかったが、「他社さんはたくさん使うと割引きになるという料金だ。しかし電気料金は世帯構成や季節で大きく異なり、同じ世帯でも年に2倍近く料金が変わることもある。どんな方でも、どんな使い方でもお得になるよう、キャッシュバックという方法を選んだ」と説明した。
キャッシュバックされるのは1〜5%で、同社が計算した一例では、世帯人数によって年間1319円〜7912円の割引きになる。割引のインパクトが小さい印象もうけるが、「やろうと思えば、一定の消費電力以上で20%の割引きも打ち出せる。しかしそれだけの電力を使う世帯は少なく、大多数は1〜2人の世帯だ。あまり使わないという家庭にも確実に割引きが受けられるのが、われわれのセット割だ」(石川専務)と、見た目の派手さを追っていない点を強調した。
もう1つ気になるのが、セット割を適用しないと現在の電気料金と差がない点だ。そのため地域の一般電気事業者が電力自由化に向けて値下げをした場合、auでんきが割高になることも考えられる。もちろん、電力サービスに新規参入する新電力がさらに安い料金を打ち出す可能性も高い。石川専務は「電気料金は単純な比較が難しい」としつつも「状況を見て判断したい。また電気料金が変動しても割引のメリットを受けられるため、400〜500kWhの範囲であれば十分に競争できるだろう」との見通しを示した。
KDDIはauでんきの発表と同時に、関西電力および中国電力との業務提携も発表した。このうち関西電力のエリアでは、「競争環境上の判断」(石川専務)から、キャンペーンで12%の割引を適用する。その他の地域でも、「さまざまな形で」(石川専務)提携先を拡大していきたいという。
電力の供給先は関西と中国は提携した2社からで、その他の地域では卸電力市場や自前の電源、そして需要に応じて一般電気事業者から供給される常時バックアップ電源を組み合わせて提供する。沖縄と一部離島は新電力向けの電源供給元が少なく、現時点ではサービスを展開できなかったようだ。
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