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“スマート杖”から“音の顕微鏡”まで、「JDA 2016」国内審査通過5作品を発表

» 2016年09月09日 20時51分 公開
[ITmedia]

 一般財団法人ジェームズ ダイソン財団は、国際エンジニアリングアワード「第11回 ジェームズ ダイソン アワード 2016」(以下、JDA)の国内最優秀作品、および国内審査通過作品を発表した。JDAは、次世代のデザインエンジニアの支援・育成を目的に毎年開催されているアワードで、テーマは「問題解決をデザインする」アイデア。今年は新たに中国と韓国を加えた世界22カ国で同時に開催している。

 国内最優秀賞は、プロダクトデザイナーの三枝友仁氏が製作した「Communication Stick」。介護施設へのヒヤリングを通じ、施設管理者が被介護者に外出を推奨するのが困難な理由として「迷子」と「転倒」の2つがあることが分かったという。それを解決するために開発されたCommunication Stickは、通信機能や音声読み上げ機能を搭載した、いわば“スマート杖”だ。杖に向かって話すとテキストメッセージを送信し、受信したテキストメッセージは音声で読み上げる。被介護者が外出しても介護者と常にコミュニケーションをとることができる仕組みだ。さらに転倒を検知すると位置情報を通知する機能も備えているという。

「Communication Stick」
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 国内審査2位は、中央大学、理工学部精密機械工学科の山田泰之助教授による「TasKi」。腕を長時間あげたままにして行う果実などの収穫作業をサポートするツールだ。ロボットやパワードスーツのような大がかりな仕掛けではなく、バネやヒンジといった機構の組み合わせでアシスト力を発揮するという。もちろん電池も不要だ。

「TasKi」

 3位は、OTON GLASS社長の島影圭佑氏による「OTON GLASS」。同社は文字を読むことが困難なディスレクシアの方や弱視の方を対象とした、読む行為をサポートするスマートグラス。視点と同一位置にあるカメラで文字を撮影し、OCRと音声変換で読み上げる。

「OTON GLASS」

 4位は、東京造形大学、造形学部デザイン学科の川島直己氏が製作した「Design for sound〜Sound Microscope」。人間の可聴域外の音を知覚するための“音の顕微鏡”だ。現状では実現可能なものではないことからビデオプロトタイピングという形の作品になっている。

 5位は、情報科学芸術大学院大学、メディア表現研究科の篠田幸雄氏が手がけた「color2vibs」。色彩を3つの振動子に割り当てることで、視覚障害者が触っているものの色調の違いを指先に感じる振動の違いとして識別できるという。

 国内審査通過5作品は、今後、参加22カ国で第1次審査を通過した作品群とともに第2次審査に進む。さらに選考された作品は財団創設者であるジェームズ ダイソン氏による国際最終審査に臨み、国際最優秀賞受賞者には、トロフィーと賞金約3万ポンド(約407万円)、また受賞者が在籍または卒業した教育機関に寄付金約5000ポンド(約68万円)が贈られる。

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