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» 2010年05月13日 01時30分 公開

富士通のコーポレートガバナンスを正したい――野副州旦元社長が語る、社長辞任騒動(5/5 ページ)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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日本企業の社長は本当に社長としての権限を持っているのか?

――今、会社の先輩に対してああだこうだというお話をされているわけですが、そこに日本の企業の大きな問題点が現れていると思います。つまり、日本企業の多くは取締役会があるのに、その中ではいわゆる先輩という人たちが社長の上にいるわけです。日本企業の社長は本当の意味の社長なのでしょうか? 欧米のように本当に会社をコントロールできるような権力や権限があるのでしょうか?

野副 私は日本の企業のトップというのは権限をうんぬんする前に、「企業のトップとして、どういう責任を果たすか」ということがあると思います。それを優先するということがまず、社長の責務だと思っています。

 今日は時間がないので(辞任を迫られた時の)テープ(東洋経済オンライン)をお聞かせすることができないのですが、私が辞任を迫られた大きな理由の中に、私がそういった認識がなくても、私が反社会的勢力との関係が疑われる企業やそこの人たちと関わりがあることが公知の事実になれば、東証の規定では富士通が上場廃止になる、あるいは富士通に多額の資金を提供している金融機関からお金が引き上げられて、倒産する可能性がある。それは企業のトップとして極めてまずいことになるので、その問題が表面化する前に社長を辞めることが責任をとることになる、と迫られた時、権限がうんぬんという前に「社長としての責任をどう果たすべきか」を優先したということです。

――一連の出来事で、なぜ相手側がそのような行動をとったと思いますか。結局、野副さんの経営スタイルがあまりに改革的すぎるので追い出したかったということだったのではないかという気が私はします。もし、「追い出したい」ということだったら、ほかにもっと正常な追い出し方があったのではないかとも思うのですが。

野副 そういった原因をはっきりつかみたいので、「第三者の調査委員会を作りたい」という希望を持っています。「追い出したい」という前提が仮に正しいとすればですが、先ほど「社長の権限はいかなるものか」という質問がありましたが、私は議論をして十分に相手をディフィートする(言い負かす)自信はあります。そういう人間を追い出すためには、「反社会的勢力と関係がある」ということを理由にしないと、おそらく私がアクセプト(了承)しなかったであろうということも想定されます。「そういう理由でなければ、おそらく私は辞任を受け入れなかったのではないかな」と今、私は考えています。

――このような陰謀がたくらまれていることに9月25日のミーティングまでまったく気付いていなかった、というお話は信じがたいです。野副さんは大きな会社にいて、長いキャリアを持っていたということですが、社長として隔離されていたのでしょうか? 弁護してくれたり、情報を教えてくれたりする仲間はまったくいなかったのでしょうか?

野副 残念ながら、結果から言うと、私はアイソレート(孤立)させられていたと思います。

 ただ、私のサイドに立った方々も、私が辞任をする理由が「反社会的勢力と関係がある企業や人と付き合いがあるから」と言われたら、やはりそれは受け入れざるをえないような判断があったと思います。それが、そうではないということをどうやって証明するのかということは、ものすごく難しいですよね。「警視庁情報によると」とまで断定をされると、いくら私のサイドにいる方々でもそこまでそれを振り切ってまで私の味方をするような発言ができるかというのが、今の企業の体質だと思います。

 まあ本当にごく一部の方の計画だったと思うんですね。副会長や副社長、2人の常勤監査役などの社内重役も、9月25日の9時前までそういうことが起こるということは、知らされていなかったということですから。情報がアイソレート(隔離)されていたのは私だけではなくて、彼らもその日に初めて知って、悩んだのではないでしょうか。

――富士通はコーポレートガバナンスに大きな問題を抱えているとおっしゃっていますが、6カ月前から突然、富士通の体質が変わったわけではないと思います。今まで長年、野副さん自身が富士通にかかわるコーポレートガバナンスの問題を隠してきたのでしょうか?

野副 非常に難しい答えをしないといけないですね。確かに東証一部上場企業としての十分なガバナンスを富士通が過去ずっと持っていたかということについては、私の今回のこういう事件を通して「そうではなかった」と認めざるをえないと思います。

 一般的なコーポレートガバナンスはある程度確立していたと思うのですが、今度の事件のようなものも十分にカバーしきれるだけのコーポレートガバナンスやコンプライアンスというものが存在していなかったということは認めざるをえないと思います。

――富士通はコーポレートガバナンスが確立されていない会社と話されましたが、富士通は日本の企業として例外だと思われますか?

野副 私は正直申し上げて、ほかの企業にもあるのかもしれないと思っています。ただ、冒頭申し上げたように、私がこの問題をあえて表面に出すというエンカレッジメントがなかったとしたなら、おそらくこれは水面下でずっと押さえつけられていたようなことだと思います。だから、私の今回のようなことをきっかけに、仮に同じような問題を抱える企業があるとすれば、多分これからそういう問題も出てくるんだろうなと思いますが、「ある」とは断定できません。

――最近、社外取締役が脚光を浴びていますが、こういうことが起こった場合にどういう振る舞いをすべきなのでしょうか。現実的に、ディベートをして、真相究明ができる状況だったのでしょうか。富士通では野中郁次郎さんという有名な方も社外取締役になられていますが、この場合、野中さんはどういうことをやられれば良かったのでしょうか?

野副 私の個人的な見解ですが、どんなに立派で著名な方を入れても、そういう方々がきちんと意見を言ったり、彼らの主張が通るといったことが保証されるコーポレートガバナンスが確立されたりしていない限り、どんな人が入ってもそれは無理だと考えています。

 社外取締役の方々がその任を遂行していくことについて、企業がどういったデュープロセス(適正な手続き)を確立していくのか、それをコーポレートガバナンスという中でどう担保していくのか、ということをまず明確にしなければならず、単に「コーポレートガバナンスが重要である」「コンプライアンスが重要である」と言うだけではできないと思います。「特に富士通のようなグローバルに発展していける企業がこのガバナンスを持たずしては企業の発展や成長はない」と私は今回痛感しました。

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