世界でも日本でも拡大するクラウドファンディング市場入門クラウドファンディング(4/4 ページ)

» 2014年04月11日 08時00分 公開
[山本純子,Business Media 誠]
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金融庁が動き出した「株式型」クラウドファンディングの法整備

 最後に、執筆時点(2013年12月)のクラウドファンディングに対する金融庁の最新動向について触れておきます。

 13年12月12日、金融庁の金融審議会が「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ」を開催し、その報告書(案)のなかでクラウドファンディングについて言及しています。

 これは、今後日本において起業や新規ビジネスの創出が活発になるよう、事業化段階における資金提供を促進していく施策のひとつとして挙げられたもので、現在禁止されている個人の非上場株式の取引に関して、インターネットを通じて行われる少額のものに関しては規制を一部緩和していくことが視野に入れられています。つまり「株式型クラウドファンディング」(※7)の導入です。この背景には12年4月、これまで同様の規制があった米国で「Jumpstart Our Business Startups Act(JOBS法)」が成立したことにより、株式型クラウドファンディングが認められたことがあります。

※7=金融庁発行の資料では「株式形態」と「ファンド形態」のクラウドファンディングを併せて「投資型クラウドファンディング」としている

 本報告書(案)では、クラウドファンディングの導入について、

  • 仲介者の参入要因の緩和
  • 投資家保護のための必要な措置
  • 自主規制機関による自主規制機能の発揮

 の視点からの検討がなされており、非上場株式を扱うリスク軽減のためにも「資金調達額は1億円未満、個人1人あたりの投資額上限は50万円以下」とする案などが挙げられています(※8)。

 本報告を受け、14年の通常国会で金融商品取引法の改正案が提出される予定です。

 また、金融審議会の翌日となる12月13日に金融・資本市場活性化有識者会合より公表された「金融・資本市場活性化に向けての提言」でも、起業・新規事業創出に向けた環境整備のひとつとして「クラウドファンディングの本格整備」が挙げられています(※9)。

 今後この動きがどのように進んでいくかは現時点では分かりませんが、日本におけるクラウドファンディング普及の1つの鍵となるでしょう。

※8=金融審議会「新規・成長企業へのリスクマネーの供給のあり方等に関するワーキング・グループ報告(案)」、2013年12月12日
※9=金融・資本市場活性化有識者会合「金融・資本市場活性化に向けての提言」、2013年12月13日

(つづく)

著者プロフィール:

山本純子(やまもと・じゅんこ)

株式会社アーツ・マーケティング代表。1997年、慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。

大学在学時よりゲーム業界に携わり、主にオンライン・ゲームのマーケティング、調達、事業開発等に従事。

2009年、慶応義塾大学大学院アート・マネジメント分野修士課程に入学。同年末にITの力で芸術を広めるために(株)アーツ・マーケティングを創業。

2011年、修士課程修了後よりクラウドファンディングの研究を始め、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、現在、企画・コンサルティング・事業開発、および講演・レクチャー等に取り組む。


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