「毎月の収支が赤字なのに先取り貯金ができている」――こういう家計は、実は少なくありません。しかし、これには違和感があります。ここで、文を少し入れ替えてみましょう。
「先取り貯金をしているから毎月赤字」――これなら一気に雲が晴れたように解決しませんか?
勤務先の財形などを利用しての先取り貯金は、強制的に貯金ができる便利な方法として知られています。しかし、その金額は慎重に設定しないといけません。先取り分が家計を圧迫して“お金が足りない”という事態を引きおこしてしまうことがあるからです。先に貯金分を確保しても、毎月の収支が赤字になってしまったら本末転倒です。
仮にA口座に毎月貯金するとしましょう。生活費が足りないときは、B口座から引き出して補てんします。貯金の額と赤字の額のバランスにもよりますが、これではAB口座間の資金移動にしかなりません。
月に3万円の先取り貯金をしていると仮定します。生活費の赤字が4万円とすると、年間では貯金が36万円、赤字は48万円、差額マイナス12万円です。貯金ができていると錯覚を引き起こしてしまう主な原因は次の3つです。
その結果、「先取り貯金ができているから大丈夫」と、ついつい毎月の赤字に目をつむってしまう結果になるのです。
お金の流れが複雑だと赤字がうやむやになってしまい、貯金が目減りしていても気が付きにくいものです。そこで、目に見えるお金の流れを作りましょう。といっても、難しいことではありません。毎月の収入とボーナス、貯金を別口座にして切り離すだけ。これだけで、月々の黒字もしくは赤字がはっきりと分かるようになります。
家計管理の基本は、毎月の収入の範囲内で支出を抑えることです。先取り貯金をするなら、その金額を差し引いた残額で支出をまかなう必要があります。
しかし、やりくりができずに毎月の生活費に赤字が発生すれば、どこかから補てんしなければなりません。とはいえ、ボーナスを生活費にあててしまうのは危険です。
なぜなら、ボーナスとは法律上支給が義務付けられていないからです。会社の業績不振などにより支給されない恐れがある不確実な収入です。生活費として混ぜてしまうと、万が一、減額支給、もしくは未支給となった場合に家計が立ちいかなくなってしまいます。
まずは、毎月の収支がどうしたら黒字になるか家計を見直してみましょう。先取り貯金をして大幅な赤字が出るのであれば、貯金額そのものを見直す必要があります。家計の赤字金額に合わせて見直し、調節してみてください。(大木美子)
大木美子
おうちのお金の専門家。あなたの笑顔は家族を幸せにします。お金の不安をなくして、たいせつな家族と楽しい生活をおくるお手伝いのサポートが当事務所のモットー。
業務関連資格:1級FP技能士(国家資格)、宅地建物取引主任者(国家資格)、貸金業務取扱主任者(国家資格)、住宅ローンアドバイザ―、個人情報保護士、日商簿記1級
所属団体:住宅金融普及協会会員、FP技能士センター正会員、昭和女子大学 社会人メンター協力員、ファイナンシャルJP会員、ご当地FP FP-RECO参加
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