あなたの言う「ブラック企業」は、本当にブラックなのか:メディアとWebと人材と(2/2 ページ)
ここ最近、ブラック企業問題について報道されるようになりましたが、そもそも“ブラック企業”って何でしょう? 自分を成長させてくれる“ハードワーク企業”と一緒にしないためにも、問題提起しようと思います。
人材輩出企業、野村證券もブラックなのか?
もう1つの例として、優秀なビジネスパーソンが育つ人材輩出企業として野村證券があります。リクルートなどと並んで、名前が挙げられることが多いです。
ただ、野村證券は新入社員に通過儀礼を課すことで有名です。今もやっているのかは分かりませんが、新人社員には「名刺集め」が課されるそうです。
「名刺集め」とは、要するに飛び込み営業です。ビルの1階から最上階まで、各フロアの企業に飛び込んで、然るべき人の名刺をもらってくる。中に入ると怖い人が出てくる会社に飛び込むこともあれば、上司や先輩から「目標枚数が集まるまで帰ってくるな」と言われることもあったなんていう噂もあります。「野村證券 新人 名刺」あたりで検索すれば、このあたりの逸話を語っている野村證券OBのWebサイトがいくつか見つかると思います。
就職活動中の学生がこんな話を聞くと「そんなことやりたくないな」と思うかもしれません。ですが、野村證券がブラックだから、新人を辞めさせたいから、こんな通過儀礼を用意しているわけではありません。学生の甘い考えや小さい枠を取り除き、社会の厳しさを教えて泥にまみれながらはいつくばってでも目標を達成する――といった、困難にくじけない強い意志を持たせるために課しているのでしょう。
新入社員のころに野村證券の「名刺集め」のような通過儀礼を経験した営業マンと、温室栽培で育った営業マン。実際に売り上げを作れる営業マンは、たいていは前者でしょう。最近はインバウンドマーケティングなど、スマートな営業スタイルに適した人材も求められているとは思いますが、泥臭い営業とスマートな営業、両方できる人材のほうが好ましいはずです。
ブラック企業とハードワーク企業の境目は?
このような内容を書いていて、思い浮かべたのは学校の運動部の部活動です。少し前に体罰問題も話題になりましたが、企業で言うなら、まさしくブラック企業。ウサギ跳びや、夏場に水を飲むなといった、非科学的な指導法は排除されるべきです。
ただ確かな指導法に基づいた「ハードワーク」を課す部活で、中学あるいは高校の数年間を過ごすとどうなるでしょうか。厳しい練習をやり遂げた先には、確かに1〜2年前よりも成長している自分がいるはずです。まったりと練習をしていた他校のライバルと大きな差が付いていることでしょう。
話が飛びましたが、ブラック企業とハードワーク企業、そしてまったりできる「普通の会社」。将来のことを考えて「ハードワーク企業で働きたい」と考える若者が増えてきてくれるといいなと私は願っています。まあ、ハードワーク企業を探し出すのは、それなりに難しいんですけどね。(中嶋嘉祐)
※この記事は、誠ブログのメディアとWebと人材と:あなたの言う「ブラック企業」は本当にブラックなのか。“ハードワーク企業”と一緒にしないでより転載、編集しています。
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