新ジャンルのGALAXY Note発売/シャープ×鴻海の相乗効果/通信の体感速度向上を目指すKDDI:石野純也のMobile Eye(3月26日~4月6日)(2/2 ページ)
3月26日からの2週間は、多くのニュースがモバイル業界を賑わせた。4月6日に発売された「GALAXY Note SC-05D」は、新たな市場創出を狙った意欲的なデバイス。シャープと鴻海(ホンハイ)グループの資本提携も緊急発表された。通信関連ではKDDIが4月10日から「EV-DO Advanced」を導入することも発表した。
KDDIが「EV-DO Advanced」を10日から導入、端末アップデートでWi-Fiの利便性も向上
KDDIは4月10日から、スループットを平均2倍向上させるという「EV-DO Advanced」を導入する。これに伴い、4月5日に説明会を開催。3Gの体感速度改善の取り組みや、Wi-Fiでのデータオフロード施策もあわせて解説した。
EV-DO Advancedとは、「セクター間、局間で混んでいるところ、混んでないところを判断して、空いている基地局をつなぐようにする」(KDDI 技術統括本部 執行役員 西山治男氏)技術のこと。「条件によって異なるが、平均スループットは今までの2倍ぐらいまで上げられる」(西山氏)という。一般的な方式の場合、「電波の強い基地局をつかむのが、移動機(端末)の仕様」(KDDI、コンシューマ事業企画本部、Wi-Fi推進室、大内良久氏)となっている。一方でEV-DO Advancedは、基地局同士が情報を交換し、最初から余裕のある方に接続する」(大内氏)のが特徴だ。処理の時間もユーザーには分からないほどのレベルだという。基地局側に導入されるため、iPhone、Android、Windows Phone、フィーチャーフォンといった、端末側のプラットフォームを選ばない。ソフトウェア更新なども不要で、4月10日から自動的に適用されることになる。
iPhone 4Sの導入でトラフィックが急増したという見方もあるが、大内氏はこれを否定。「先々からAndroidもやっていたし、細かいことは言えないが、若干iPhoneの方がインフラにも優しい作りをしている」(大内氏)とした。また、「KDDIは(W-CDMAを導入している)他社と大きく違う点が2つある」(大内氏)という。その1つが、EV-DOの特性であるドーマント(休止状態)で、セッションを残したまま、無線接続を切断することができる。その結果、「インフラへのダメージが少ない」(大内氏)というメリットが生じる。もう1つの違いが「制御系トラフィックとデータトラフィックの2つが分かれている」(大内氏)こと。W-CDMAはこれらがまとめられているため、どちらかが不足しただけで設備を増強しなければならないが、KDDIの導入しているCDMA 2000 1Xでは「伸びに応じて対応できる」(大内氏)そうだ。
ネットワークの改善については、「能動的にやって(改善して)、クレームをなるべく少なくする」(西山氏)という方針を打ち出し、新800MHz帯と2GHz帯を合わせると、旧800MHz帯だけのころより、およそ2.6倍カバー範囲が広がっているという。特にKDDIでは「つながるエリアを作る」(西山氏)ことを重視。最近では3Dマップでビルの情報をシミュレーションし、裏路地やビル陰など、電波の弱くなりがちな場所をピンポイントで対策、改善している。
KDDIに限った話ではないが、3月から東名阪の地下鉄で、駅間のエリア化も始まっている。これによって「お客さまの使い方が変わってくる」(西山氏)と見ており、四ツ谷駅や御茶ノ水周辺の路線が地上にあるエリアまで含め、トータルでエリア設計を見直していく構えだ。こうしたネットワーク改善を地道に進めていった結果、WIN HIGH SPEED(EV-DO Rev.Aの拡張版)は、ドコモのXi(LTE)やソフトバンクのULTRA SPEED(比較に用いたのはDC-HSDPAではなくHSPA+)といった高速通信規格と比較しても、そん色ない速度が出るようになったという。Web表示が終わるまでの時間を測定したところ、スポットによってはXiやULTRA SPEEDとほぼ互角だったという資料もKDDIから披露された(なお、当該スライドは撮影が禁止されていたため、残念ながら詳細をお見せすることはできない)。グラフに数値が明記されていなかった上、すべてのケースに当てはまる比較とはいえないが、同社のネットワーク改善の効果を示す一例といえるだろう。
さらに「au Wi-Fi SPOT」も、ネットワークと端末の双方で快適性を向上させている。ネットワーク側では、5GHz帯のIEEE 802.11aを基本にし、「干渉の起きない通信インフラに対応できている」(大内氏)という。その上で「ビームフォーミング」という技術を導入。「チャンネルを見て、ここにお客様がいるということをWi-Fi基地局側が認識し、そこに電波を吹く」(大内)ことを可能にした。これによって、店舗にWi-Fi対応のシールが貼ってあっても実際には使えないという事例が減るそうだ。
「ストリートセル」という、道を丸ごとWi-Fiエリア化する試みも行っている。例えば原宿では竹下通りがストリートセル化されており、JRの駅からKDDI Designing Studioに行くまで道で、ほぼ途切れることなくWi-Fiの通信ができるという。アクセスポイント間同士のハンドオーバーにも対応しており、移動しながらだと通信が途切れるという弱点も解消されている。端末側ではWi-Fiをサーチするための時間を減らし、待受けの時間も伸ばしていく。「5月から過去の機種も含めてやっていく」(大内氏)といい、Wi-Fi接続アプリとOSの双方に手を加える予定。「夏モデルには最初から、過去の端末にはケータイアップデートが行われる」(KDDI関係者)ので、恩恵にあずかれるユーザーは多くなりそうだ。
分かりやすい数値だけがすべてではない――。これらの施策からは、理論上の最大速度や、必ずしもエリアの広さに結びつかない基地局の数などではなく、トータルで“快適さ”を向上させていこうとするKDDIの意気込みが伝わってきた。
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