倫理と収益のはざまで揺れるアダルトコンテンツ:韓国携帯事情

» 2006年05月30日 10時26分 公開
[佐々木朋美,ITmedia]

 韓国の携帯電話でインターネットコンテンツのメインメニューにアクセスすると、ごく普通に成人向けのカテゴリも設けられているのに驚く。画像やゲーム、出会い系サービスなど、さまざまなコンテンツを楽しめるこのカテゴリは、若年層向けが多いインターネットコンテンツの中で、大人向けのコンテンツとして需要を確保しているという。しかし、問題も少なからずある。韓国の携帯向けアダルトコンテンツの現状と問題を探った。

メインメニューにアダルトカテゴリ

 アダルトカテゴリは、携帯電話向けインターネットのトップページから簡単にアクセスできる。ただし19歳未満のアクセスを制限するため、まずは韓国国民1人1人に割り当てられている住民登録番号と、自分で決めたパスワードを入力する必要がある。住民登録番号から年齢などを調べ、本人確認を行うためだ。

 アダルトのカテゴリに入ると、イベント情報をはじめ、写真や動画、小説や漫画、出会い系サービス、各種情報などのメニューが並んでおり、ここから見たいコンテンツを選択する仕組みだ。コンテンツを見る際、あらかじめ利用料を確認できるよう料金案内も必ずある。

 コンテンツ利用料金はサービスを提供している事業者によりさまざまだが、例えば小説は1本で100ウォン(約11.9円)、漫画は1カットで50ウォン(約5.9円)が相場となっている。ストーリー性があり、まとめて見る必要のある画像などは、20カットで500ウォン(約59.3円)といったセット価格が設定されていたりするものの、コンテンツの料金そのものは、成人向けでないものと大きく変わらない水準だ。

 こうした料金面での負担の軽さからか、あるいはキャリア公認であるという点の安心感からか、それともコンテンツが全体的に若者向けに偏っており、大人が利用したいと思えるサービスが限られているためか、アダルトコンテンツは一定の需要を確保している。

 韓国警察庁のサイバーテロ対応センター(以下、サイバーテロ対応センター)によると、キャリアはアダルトコンテンツを提供することで、2003年から2006年5月までの間に、163億ウォン(約19.3億円)以上のデータ通信料と35億ウォン(約4.2億円)以上のコンテンツ利用料金を得ていたという。この合計金額はインターネット上の成人向け小説関連業界全体の利益、479億5000万ウォン(約56.9億円)の約41%を占めており、携帯電話でのアダルトコンテンツ利用度の高さがうかがえる。

Photo 携帯電話向けインターネットのトップメニュー。音楽やゲームなどと一緒に成人向けのカテゴリが並んでおり、ここをクリックすると本人認証をしたうえでコンテンツが見られる

アダルトコンテンツに活路を見出す事業者

 放送委員会は5月に入り、衛星DMB(モバイル放送)事業者であるTU Mediaが申請していたアダルトチャンネル「ミッドナイトチャンネル」の放送を承認した。

 「ミッドナイトチャンネル」はその名の通り、夜22時から朝6時まで放送される番組だ。月額利用料は3000ウォン(約355.8円)で、20歳未満は利用できないだけでなく、チャンネル加入時、身分証明書を通じた本人確認も行うなど、未成年の視聴を防ぐ対策を施している。

 TU Mediaがこのようなチャンネルを設けたのは、新たな収益モデルを求めてのことだ。全国で衛星DMBの視聴を可能にするため、莫大な金額の設備投資を行っているわりには、会員数が約56万人と伸び悩んでいる。そのうえ、無料で視聴できる地上波DMB(モバイル用地上波デジタル放送)まで始まり、同社は苦しい立場に立たされている。TU Mediaではより多くの会員を集めて収益を伸ばすため、地上波DMBの番組をサイマルキャストすることも希望したが、地上波DMB事業者であるKBSやMBC、SBSなどの放送局はこれを拒否した。放送局にしてみれば、ライバルに手を貸すわけにもいかないということなのだろう。

 そこでTU Mediaは、アダルトチャンネルの開始を放送委員会に申請したわけだ。未成年への影響を考慮し、同委員会は一度この申し出を拒否したものの「ケーブルテレビなどほかの有料チャンネルはアダルト番組を放送している」「未成年保護対策は用意している」とのTU Mediaの必死の反発によりようやく許可された。

 このようなさし迫った事情から、成人向けコンテンツに活路を見出す事業者もいる。5月16日にSK Telecomが商用サービスを開始したHSDPAの普及が、コンテンツの充実にかかっていることを考えれば、データ通信の利用者層を底上げする意味でも、アダルトコンテンツは真っ向から否定できるものではないのかもしれない。ただし問題が起こりやすい分野であることも確かだ。

高い収益の裏には未成年者への悪影響も

 5月に入りサイバーテロ対応センターは、携帯電話のアダルトカテゴリに、ポルノ小説を掲載し流布させたとしてキャリア3社の担当者と、コンテンツの提供者など計50人以上および46の該当法人を立件。ここで6000を超えるポルノ小説が押収された。

 携帯電話コンテンツとしての動画は、映像物等級委員会から事前審議を受けている。しかしポルノ小説はこの対象外のため、より露骨で刺激的なポルノ小説の大量流布につながる原因にもなった。

 企業倫理が問われる点であると同時に、こうした状況が未成年にもアダルトコンテンツに触れさせる原因ともなっている。

 住民登録番号を入力し、成人であることが確認できてはじめて利用可能になるアダルトコンテンツ。しかし、ここに父母の住民登録番号を入力すれば利用できるほか、無差別に送りつけられるスパムメールを通じて接続すれば、割と簡単にアダルトコンテンツは見られてしまう。

 こうした認証の甘さや、アダルトコンテンツの存在自体に対してさまざまな意見があるが、提供する側にとっては大事な収入源の1つでもある。そう簡単にはなくせないというのが実情のようだ。

佐々木朋美

 プログラマーを経た後、雑誌、ネットなどでITを中心に執筆するライターに転身。現在、韓国はソウルにて活動中で、韓国に関する記事も多々。IT以外にも経済や女性誌関連記事も執筆するほか翻訳も行っている。


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