スパムメールが待ち遠しい――動画で解説するiPhoneの魅力(前編)“時代遅れ”の端末がスゴイ理由(1/2 ページ)

» 2007年07月13日 12時29分 公開
[林信行,ITmedia]

機能比較では伝わらない魅力

 連日のiPhone情報のラッシュで、iPhoneの基本をおさらいしたレビュー記事は、英語だけでなく、日本語でもそこかしこで読むことができるようになった。しかし、iPhoneには機能だけでは語り尽くせない魅力がある。いや、むしろ機能を列挙したかぎりでは、iPhoneは“時代遅れ”の携帯電話にすら見えてしまう。

 GSM+EDGEという通信仕様にしても古いし、200万画素カメラも日本のケータイと比べるとかなり物足りない。ブラウザに「Safari」と書くべきところを「PCサイトビューアー」と書き換えて比較すれば、およそたいした携帯電話には思えないのだ。

 しかしそれでいて、iPhoneを人に見せると「スゴイ」の言葉が返ってくる。「頭の中の印象とぜんぜん違う」、「実物を見ないとよさがわからない」というのもよく聞く感想だ。

 これまでiPhoneを見せてきた数百人の人たちの中には、iPhoneが気になって、米アップルの公式Webサイトにある動画はすべてチェックしているといった強者も多いが、それでも実物を見るとぜんぜん違った印象を受けるようだ。どうして紹介動画やレビューでは、魅力が伝わりきらないのだろうか。

 その理由の1つは触感的な部分にある。あの破綻のないiPhoneの滑らかなアニメーション効果が、この発色がよく、見やすく、そして明るい液晶の上に表示されていること。この小さく、(見ためよりも)軽い製品の上で動いていることを肌で感じた瞬間に、頭の中にあった「iPhone」のイメージが神々しく輝き始めるのだ。

 そして、思わず反射的に「スゴイ」という言葉が口をついてしまう。

機能紹介では語れない部分まで作り込む

 iPhoneの魅力が機能説明で伝わりにくい理由の2つめは、その凄さが「機能」という言葉でくくれないところにまで行き渡っていることだ。

 いくつかあるiPhoneの基本操作の中でも、最も気持ちがいいのがスクロールの操作だろう。電子メールの一覧や、アドレス帳の名前一覧、iPod機能の曲一覧――iPhoneでこうした一覧表がでてくると、うれしくてたまらなくなる。一覧表の上に指を置き、スーっと上下に勢いをつけるようにして指を滑らせると、まるでエアホッケーのボールのように一覧表がなめらかに滑り始める。目的の項目が近くなってきたら、パっと指で押さえて一覧表の動きを止めることもできる。この感触もたまらない。

端までスクロールしても止まらず、項目のないウィンドウの余白部分までスクロールできる

 もっとも、「指を使ってスクロール」という部分までなら、どこかは思い出せないが、これまでにもほかのUIで存在していた気がする。しかし、iPhoneがさらにその上を行くのは、画面がスクロールを続けた後に、項目の最初(あるいは最後)までたどり着いたときだ。

 ほかの製品であれば、端までたどりついたらそこでスクロールがストップするのが普通だ。もうこれ以上は表示すべき項目がないのだし、スクロールしてもユーザーに誤解を与えるだけ。それ以上スクロールせずに止まるのがあたりまえだろう。

 ただ、気持ちよくスクロールしていたのに、急にスピードが0になって画面が止まってしまうと、心の奥底のどこかで、切なさ、虚しさのような感覚もある。アップルはここをうまく突き、遊びの要素を取り入れつつ「操作の気持ちのよさ」につなげている。

 どういうことかというと、iPhoneのスクロールは、なんと画面の端までたどり着いてもそこでは止まらないのだ。指でドラッグすると、なんと余白の外側まで表示し、その後にバネで引き戻されるように逆スクロールを行う。このバネのような感触がなんとも気持ちがいい。

 話は少しそれるが、iPhoneを触っていると「書き味」という言葉を思い出す。文具店のボールペンコーナーで、安くて「書き味」の悪いボールペンを試している時は、何文字か書いてそこでやめてしまう。だが、紙すべりがよく、心地のよいボールペンを試している間は、ついついその感触を楽しんで描き続けてしまう――iPhoneのスクロール操作は、これまでのデバイスのスクロール操作がいかに「スクロール味」が悪かったかと思わずにはいられないほど「スクロール味」のよさを備えているのだ。

 正直、この感触を知った後では、Mac OS Xに戻ることさえつらい。iPhoneの心地よさは、スクロール操作だけではない。有名な2本の指を使った拡大/縮小の操作も、指の感触をいっさい裏切らないスムーズな動きで追従し、楽しませてくれる。

 ディスプレイを回転させた後に写真の向きが追従するときも、表示がただ横向きに変わるのではなく、しばらく「貯め」の時間があった後、クルっと心地よく回ってくれるのだ。

 こうした心地よさのデザインは、「技術」だけで実現できるものではない。技術で生み出せるのは、加速度センサで向きを判別し、画面を回転させるという機能までだ。そうやって実装した機能は、確かに宣伝上の売り文句にはなる。だが、ユーザーは店頭で1度試して「あ、本当だ」と確認したらそこで満足してしまう。

 ここに感性に訴えかける「気持ちよさ」のデザインが加わると、話は違う。人は気持ちよさを求めて、それを何度でも試したくなるからだ。iPhoneはここの部分の突き方が実にうまい。もちろん、Mac OS XやiPodにもそうした部分はあったが、iPhoneではさらに突き抜けた観がある。

 もう1つは、どんな操作もアニメーション処理でちゃんとつながっていること。写真を電子メールに添付する時のアニメーションにも注目してほしい。

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