米国進出の第1歩――FeliCaハワイプロジェクトとは神尾寿の時事日想・特別編: (2/2 ページ)

» 2007年12月05日 16時36分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]
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HWBのシーズンチケットにもFeliCaを導入

ソニーが製造している「FeliCaトークン」を使った、キーホルダー型のEdy。実際にこれでチャージ(入金)、支払いができる

 ハワイにおけるFeliCaの展開は、TROPAだけにとどまらない。ソニーでは、HWB(ハワイ・ウィンター・ベースボール)のシーズンチケットにおけるFeliCaチケット採用にも成功した。

 HWBは、毎年11〜12月に米国2A/3Aクラスの野球選手を集めて実施されるシリーズで、アジアをはじめ外国人選手も参加するなど、注目度の高いものだ。

 「HWB向けについては、すでに2006年にトライアルという形で採用していただいていまして、今年(2007年)、再び正式採用していただきました。ユニークなのは、日本でよく見るFeliCaカードではなく、FeliCaトークンを用いたキーホルダー型をしていることです」(竹村氏)

 FeliCaといえば、ほとんどがカード型、あるいはおサイフケータイだ。しかしソニーは数年前から、カードよりも厚みのある「FeliCaトークン」を製造している。FeliCaトークンを採用することで、例えばキーホルダーのように立体的なFeliCaデバイスを作ることができるのだ。

 2006年に始めたときから、HWBのチケットはカード型ではなく、キーホルダー型だった。なぜ、カード型ではなかったのだろうか? 「HWBのシーズンチケットは約200ドルと比較的高額です。さらにシーズン中はずっと使えるものですから、(カードではなく)記念品っぽいものにしようということで、トークンを用いることにしました」(竹村氏)

 このキーホルダー型のFeliCaチケットは、記念品にもなるということで現地のベースボールファンの好評を呼び、HWBから「今年もぜひ(FeliCaチケットを)やってほしい」と要請を受けているという。

 「FeliCaは形状に縛られないという特徴があるのですけれど、日本ではカード型ばかりが使われていて、この『形状の自由度』が活かされてこなかった。ソニー内部にFeliCaトークンというプロダクトはあったので、(ハワイで)せっかくゼロからスタートするなら、これを使ってやろうと思ったんです。結果として、HWBで予想以上に好評だったため、社内でも(トークンに)手応えを感じたところです」(竹村氏)

 米国はクルマ社会ということもあり、キーホルダーの需要は高い。そういう点でも、トークンを用いたキーホルダー型FeliCaは、日本よりも期待できそうだ。

HWBで採用されたキーホルダー型チケット。FeliCaトークンはほとんど利用されていなかったため、日本では安く制作してくれる業者が見つからなかった。そこでキーホルダーを入れるケース作りから箱詰め作業まで、竹村氏が社内で手作業で行っていたという

FeliCaの新たな可能性を新大陸で

 ソニーのFeliCaハワイプロジェクトは、日本で培ったプロダクトやノウハウを生かしながらも、実験的な取り組みや、遊び心のあるサービス作りが行われている。上述の竹村氏が手作業でキーホルダー作りをしていたというエピソードや、ハワイにある現地企業との協力関係も含めて、まさに“ハンドメイド”。FeliCa北米展開の橋頭堡であり、重要な第一歩ではあるが、その取り組みは「楽しそう」な雰囲気が漂う。

 「日本でFeliCaを使って何かをしようとすると、SuicaやEdyみたいにしっかりした仕様のサービスがありますし、すでに注目度も高くなっているから、どうしても大がかりなものにならざるを得ない。日本市場では『ちょっと遊んでみよう』が、難しくなってきているんです。

 しかし、ハワイなら、(FeliCaに関して)今は何もないわけです。北米市場は、ゼロからのスタートになる。今から導入するFeliCaのサービスやプロダクトが、向こうではFeliCaのひな形になる。

 だから、米国という新しい場所で、FeliCaの可能性をいっぱい試してみよう。トライアルをしていこう――そういうスタンスで取り組んでいます。あまり楽しそうにしていると、社内から『ハワイに遊びに行っているんじゃないか』と思われちゃうのが困るんですけど(笑)」(竹村氏)

 今後の目標としては、ハワイで成功事例を複数作り、その後は米国本土へ“上陸”を目指す。その最初の地としては、「まだ確定しているわけではありませんが、テクノロジーに対する受容性を鑑みても、西海岸からになるでしょう」(竹村氏)

 FeliCaにとって米国は、新たなビジネスやサービスに挑戦する「新大陸」といえる。今後の動向に注目である。

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