スタンダード端末「W53K」に見る京セラの“こだわり”:開発陣に聞く「W53K」(1/2 ページ)

» 2008年01月17日 18時21分 公開
[房野麻子(聞き手:平賀洋一),ITmedia]
photophoto 京セラの「W53K」。カラーはパッショネイトレッド、ルミナスシルバー、シャンパンピンクの3色

 auの京セラ製端末「W53K」は、2006年に大ヒットしたスリムケータイ「W44K」「W44K II」のコンセプトを継承したモデルだ。

 W44KやW44K IIで高く評価された薄型ボディと使いやすさはそのままに、新たにワンセグという要素が追加されている。このスリムなワンセグケータイはどのような狙いで開発されたのだろうか。京セラ通信機器関連事業本部マーケティング部の宮坂俊至氏、同移動体通信機器統括事業部マーケティング部デザイン課の播磨隆太氏、同端末第3技術部機構設計課の渡部貴昭氏に、端末の開発背景を聞いた。

「ワンセグ」と「使いやすさ」を両立させるには?

photo 京セラ通信機器関連事業本部マーケティング部 宮坂俊至氏

 W44Kは、使いやすいスリムボディに機能をバランスよく搭載したスタンダードモデルというコンセプトで、2006年から2007年に大ヒットした端末だ。W53Kはそのコンセプトとデザインを継承し、新たにワンセグに対応した。

 企画担当の宮坂氏はワンセグ搭載について、“ケータイにどんな機能が必要か”という独自アンケートの結果が切り札になったと話す。アンケート調査では、男性の5割以上が“次に買うケータイにワンセグがほしい”と回答しており、宮坂氏は「ワンセグが普及し、スタンダードモデルであっても必要な機能になった」と認識したという。

 W53Kの開発にあたり、ワンセグを追加したからといってサイズが大きくなることは許されなかった。幅広い層が使うスタンダードモデルには、使いやすさが重要だからだ。薄型ボディはその最たるポイント。京セラ製の携帯電話には、ユーザーが最も使いやすいと感じる「ベストスリムゾーン」という考え方がある。現時点でそれは14〜16ミリとされ、W53Kの厚さは15.4ミリ(最薄部)になっている。「トータルバランスではW53Kが勝っていると思っています」と宮坂氏は自信を見せる。

 注目すべきはW53Kの幅だ。W44K/W44K IIは非常に好評を博したモデルだが、幅は51ミリ。女性の手にはやや大きいという声があり、新端末では幅を50ミリ以下にする必要があると判断した。技術部門の努力もあってW53Kは幅49ミリを実現した。

 「要するに、薄さと幅のバランスだと思います。端末を手にした時、薄さに加えて、幅もお客様が店頭で端末のサイズの印象を決める大きなポイントだと思います」(宮坂氏)

 W53K開発の裏テーマは“余裕”とのこと。薄くても使いやすく、幅広い層に受け入れられるシンプルながらも遊び心のあるデザイン。ワンセグなど、トレンドスペックを押さえた余裕のある機能と性能。W53Kは万人に受け入れられる“懐の深い”端末として開発された。「ユーザーにとってはいろいろな意味で余裕のある、使いでのある端末に仕上がったと思います」(宮坂氏)

ワンセグに対応しながら、どうやって小型化したのか

photo 京セラ端末第3技術部機構設計課 渡部貴昭氏

 W44Kの後継モデルといえるW53Kだが、機構設計的なベースは2007年春モデルの「W51K」だという。W51Kは回転2軸ヒンジを採用したワンセグケータイであり、厚さは20ミリ(最薄部)だった。これを約9カ月で4.6ミリもスリム化した。これに最も貢献したのが、新しい回転2軸ヒンジだ。

 機構設計担当の渡部氏は、「回転2軸のヒンジを薄く小さくし、なおかつ強度を維持できた。おかげで大幅な薄型化が可能になりました」と説明する。また、部品が小型化され基板面積が小さくなったことや、薄いバッテリーを使うことで、そのほかのデバイスを効率よくレイアウトできたこともポイントだという。

 「今まで使ったことがないくらい薄い電池パックを使っています。ただ、薄くなった分、面積が必要になりました。そうすると他の部品のレイアウトが難しくなるので、うまく詰め込む工夫をしています」(渡部氏)

 W53Kの場合、ワンセグ用/通信用(メインとサブの2系統)/GPS用と、大きく3つのアンテナを搭載している。それらが互いに干渉してはならないし、金属で覆ってもいけない。そのスペースを確保しつつ、バッテリーパックなどの金属部品を配置するのが難しい部分だという。

 「カメラモジュールをどう配置するかも難題でした。“カメラはやっぱりここだろう”という撮影しやすい位置があるわけで、モジュールを置ける場所との調整が難しい。今回、microSDはバッテリーカバーを取って差し替えるスタイルですが、バッテリーパックを取らずに差し替えられるように工夫しました」(渡部氏)

一発起動でワンセグを使いやすく

photo ディスプレイを回転し、表側にした状態で閉じるとワンセグが起動する

 W53Kでは、液晶画面側ボディを回転させて閉じることで、自動的にワンセグを起動できる。W51Kは自分でケータイを積極的に使いこなす人をターゲットにしたモデルだったので、特にそういった機能は搭載しなかったが、W53Kはワンセグに初めて触れる人に向けた機種。簡単にワンセグを使ってもらいたいという狙いで、一発起動が可能な仕様にしているという。

 待受画面上の「ペタメモ」(メモや設定項目をアイコンとして待受画面に表示できる機能)から一発起動を解除するメニューに簡単にアクセスできる。いつもディスプレイを回転させるごとにワンセグが起動するのが煩わしい、と感じるユーザーへの配慮も忘れてはない。

 また、ワンセグアンテナには収納式アンテナを採用した。受信感度を考慮するとアンテナは長い方がいいが、通信用アンテナが内蔵化されたように、ワンセグアンテナの内蔵化も避けられない流れだという。

 「内蔵アンテナでも感度がよくなるように、各メーカーとも取り組んでいると思う。我々も“長い方がいい”とばかりは言っていられない。内蔵しても感度を良好に保つことが今後の課題ではないでしょうか」(渡部氏)

基本機能の使いやすさに注力

photo 京セラ移動体通信機器統括事業部マーケティング部デザイン課の播磨隆太氏

 使いやすさの追求という部分で、キー形状はこだわった部分だ。「押しやすさという点では、フレームレスキーに勝るものはない」という判断から、W53Kはスリムケータイに多用されるシートキーではなく、独立タイプのフレームレスキーを採用している。キーごとに凹凸があり、上下をしっかり区別できる。また、ダイヤルキーの1つ1つは表面がわずかに反っており、指先に沿う形をしている。「見た目はそれほど主張しないが、実際に触るとその心地よさが分かる」と、デザイン担当の播磨氏は語る。

 この微妙に反ったキーについて渡部氏は、「薄くしながら凹凸を付けるのは、機構設計的にも難しかった」と振り返る。W53Kのキーは一般的なものとは反対に、キーが引っ込んだ凹型をしている。これは3次元データの段階から、デザイナーの播磨氏と密な打ち合わせを重ね、コンマ1ミリ、コンマ2ミリの単位で作り込んでいったという。

photo ダイヤルキーは微妙にへこんでいる。同様に[アプリ]キー、[EZ]キー、[メール]キーなどのソフトキーも凹型になっている。「薄さと使いやすさの“ベストスリムゾーン”をキープしつつ、押しやすくもする、ということで工夫しています」(播磨氏)
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