日本第3位のキャリアでは終わらない――“海援隊”ソフトバンクモバイルが世界を目指す

» 2008年05月09日 03時18分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 決算会見でジョイント・イノベーション・ラボのビジョンを説明するソフトバンク社長の孫正義氏

 2008年3月期決算会見に登壇したソフトバンクの孫正義社長が、中China Mobile、英Vodafoneと設立した携帯向けプラットフォーム開発のための合弁会社「ジョイント・イノベーション・ラボ」のビジョンを説明した。

 ジョイント・イノベーション・ラボは、高度なインターネットサービスをモバイルで実現するためのプラットフォーム開発を目指して設立された合弁会社。3社が対等な立場で参画するジョイントベンチャーで、初代のチェアマンとして孫氏が就任することが決まっている。

 加入者ベースで見ると3社の中で最も小規模なソフトバンクモバイルから初代チェアマンが選ばれた理由について孫氏は、日本が3Gケータイの普及率で圧倒的なトップであることを認められているからだと説明。「3社連合で一番ユーザー数が少ないソフトバンクが発案者になり、ビジョンをリードできるのは、日本のユーザーやパートナーに名を連ねる端末メーカーのおかげ。先進的な市場のおかげで、われわれは“世界の携帯がインターネットマシン化する”というビジョンを日本からできる」と自信を見せた。「薩摩と長州がChina MobileとVodafone。ソフトバンクはついでに“海援隊としてもうけさせてください”というような構造」(孫氏)

ジョイント・イノベーション・ラボが開発するプラットフォームとは

 「ソフトバンクが“世界一のモバイルインターネットカンパニー”を目指す上で重要な役割を果たす」と孫氏が強調する携帯向けプラットフォームとは、どのようなものなのか。同氏は、採用する技術やビジネスモデルの詳細は「来年早々か、その前後に発表する」としながらも、開発を決めた背景や狙い、おおまかなプラットフォームのイメージに言及。新たなプラットフォームの導入により“3社連合でコンテンツやアプリの配信、課金をクロスさせ、携帯のインターネットマシン化を加速する”ことを目指すという。

 ここでいうプラットフォームは、auの「KCP+」やソフトバンクモバイルの「POP-i」(Portable Open Platform Initiative)のような端末の機能を定義するプラットフォームにとどまらず、課金やコンテンツ配信、セキュリティ、位置情報の提供など、キャリアが提供するサービスを含む幅広いものを指す。そしてそれは、Windows MobileやSymbian、Linux、Androidといった携帯電話向けのあらゆるOS上にかぶせることができ、プラットフォーム上で稼働する共通のコンテンツを共通のマナーで課金できるようなイメージだ。

 そのため、3社共通のプラットフォームとはいうものの、ボーダフォン時代に物議を醸した“世界共通プラットフォーム”的なものになることはないと孫氏。「プラットフォームの上に載るコンテンツやアプリのウィジェットは、どんなOSや端末の上でも動くようにしたい。(使い勝手の面で)日本人好みの部分を損なうことなく、その上に乗せるものを世界共通にする」(孫氏)。

 新たなプラットフォームを導入する狙いの1つは、“配信規模の拡大と効率化”を考慮したためと見ることもできる。各キャリアの契約数は中China Mobileが約3億9000万、英Vodafoneが約2億5000万、(出資比率から算出)ソフトバンクモバイルが約1900万で、合わせると約7億という規模になる。ソフトウェアやコンテンツ、ハードウェアを開発する企業から見れば、ソフトバンクモバイル単独の1900万ユーザーに向けて開発するよりは、7億ユーザーに向けて開発したほうがうまみがある。「1900万人向けに、新たなソフトやコンテンツ、ハードを作りませんかと、持ちかけてもなかなか迫力が出ないが、7億人に向けたものだと外部のハードやソフト、コンテンツのパートナーの目の色が一瞬にして変わる」(孫氏)。例えばソフトバンクグループは、全世界のハーレクイン作品1000タイトルを携帯向けに配信する権利を取得しているが、「7億人のユーザーを背景にすれば、交渉が一発で決まる」(孫氏)といった具合だ。

 現状では、各種汎用OSには課金の仕組みなどが組み込まれていない。しかしこのプラットフォームを介することで課金の手段が整えば、世界レベルで少額課金が可能になる。それによって低年齢層向けの課金も容易になるなど、ビジネスモデルに多様性が出てくると孫氏は説明する。これは課金に限った話ではなく、セキュリティや位置情報といった今後のトレンドともいえるサービスにも応用できるなど、「もう一段、上の次元で横にクロスする」という展開にもつながる。

日本で第3位のキャリアで終わるつもりはさらさらない

 「(日本のキャリアと)同じ土俵で戦うつもりはなく、新たな次元で世界一を目指したい」(孫氏)――。これが3社連合のジョイント・イノベーション・ラボを設立した一番の動機といえるだろう。「ソフトバンクは従来型の日本における三番手の携帯キャリアになろうという気はさらさらない。最初からアジアでナンバーワンのインターネットカンパニーであり、世界一のモバイルインターネットカンパニーを目指す」(同)

 孫氏は、これまでメディア各社から“ソフトバンクは他の国にどんな展開をするのか”と聞かれ続ける中、1年半の間、黙って準備してきたのがジョイント・イノベーション・ラボのプロジェクトであるとし、「これが、モバイルインターネットの世界展開に対する回答」だと自信を見せた。

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