新技術とパートナーシップでモバイルブロードバンド時代をリードする――Symbianのフォーサイス氏Symbian戦略担当副社長インタビュー(後編)

» 2008年03月12日 08時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo Symbianの戦略担当副社長、ジョン・フォーサイス氏

 2007年、日本の携帯業界にはインターネットの数々のトレンドが押し寄せ始めた。ドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・モバイルが高速通信が可能なHSDPAに本腰を入れ始め、一部では下り最大7.2Mbpsのサービスも始まった。KDDIも下り最大3.1Mbps/上り最大1.8MbpsのEV-DO Rev.Aの本格導入に向けて対応端末のラインアップを拡充するなど、モバイルのブロードバンド化が進み、それに伴って各キャリアがPCインターネットのトレンドを自社サービスに取り入れるようになってきた。

 こうした携帯業界の動きを、携帯向けOS大手のSymbianはどのようにとらえ、来る3.9G、4G時代に向けてどのような取り組みを行っているのか。Symbian 戦略担当副社長のジョン・フォーサイス氏に聞いた。

機能もUIもさらなる進化を遂げるのが2008年

ITmedia Symbianは、2008年のモバイル市場のトレンドをどのように分析していますか。

フォーサイス氏 1つは、携帯電話にフルスケールのインターネットが入ってきたことが挙げられます。2008年には、これがさらにリッチなものになっていくと予測しています。Webブラウザは機能が向上してパフォーマンスが上がり、Web 2.0的なサービスを開発する各社のアプリケーションが携帯向けにリリースされるでしょう。

 2つめは、ユーザーインタフェースやユーザーに対する新たな価値の創出という観点から、これまでとは異なる革新的なものが数多く出てくるということです。

 特にグラフィック面では、よりリッチで感覚に訴えかける高品質なグラフィックが期待されますから、私たちはこうしたニーズに対応するためにグラフィックアーキテクチャのScreenPlayを開発し、導入したわけです。これは、携帯電話市場にインパクトをもたらした「iPhone」に対する私たちなりの“回答”といえるでしょう。次世代のグラフィカルなユーザーインタフェースの開発を可能にするScreenPlayで、ユーザーにはこれまでにない新しい体験を提供できるでしょう。

 市場は競争によって初めて刺激が生まれるので、iPhoneのようなデバイスの投入は歓迎すべきことです。これを受けて端末メーカーからは、さまざまなアイデアが出てきており、それが携帯市場に大きな変革をもたらすと思います。

 3つめは、モバイルの世界でもオープンプラットフォームがようやく花開の時期に近づいてきたということです。私はMobile World Congress(スペインで開催されたモバイル通信のイベント)には3GSM World Congressと呼ばれていた頃から参加していますが、オープンプラットフォームについてはキャリアやアナリストから長年、反論されることが多かったのです。しかし、今年のMobile World Congressではみながオープンプラットフォームの重要性について納得していました。

 ここにきて、“最初のコーナーを回った”というのが実感です。端末メーカーは、ある程度Symbian OSのプロジェクト(端末開発)を積み重ねると、当初ほどコストをかけることなく端末を開発できるようになるので、スケールメリットを享受できるところにきたということになります。

 もう1つのトレンドは、課題ともいえる電源/消費電力の管理です。バッテリーに必要とされる寿命は年々24%くらい伸びていますが、バッテリーの持ち自体はまだ8%程度の伸びにとどまっており、そこにはギャップがあります。携帯電話のアプリで高度なインターネットサービスを使うようになると、バッテリーの持ちに対するニーズがより鮮明になるでしょう。

新技術とパートナーシップで、エコシステムのさらなる強化を

ITmedia 2008年のトレンドに対するSymbianの取り組みを聞かせてください。

フォーサイス氏 携帯電話でインターネットのサービスをフルに活用するというトレンドに対しては、PCインターネットの各プレーヤーとのパートナーシップで対応します。ユーザーはPCでふだん利用しているサービスと同じものを携帯電話上でも使いたいと考えており、私たちの持つYahoo!やGoogleなどといった企業とのネットワークは強みになります。

 一方で、市場全体がオープンプラットフォームへと傾いていくわけですが、これは1つの製品だけで対応できるものではありません。そこでカギになるのが“製品周りに対する投資をいかに増やしていけるか”です。これには2つのシナリオが考えられます。

 1つは、私たちの顧客でもある各メーカーのリソースをSymbian OSのプロジェクトに投入していくことが考えられ、必要になるでしょう。具体的な投資を伴うことであり、トレーニングやツール、POSIXのような標準がらみのところも含まれてくると思います。こうした取り組みにより、端末メーカー側でもさらなる機能強化が見込めるでしょう。

 もう1つは電源供給の問題です。電力消費の制御についてはすでに強いフレームワークを持っており、これが基礎となっていますが、さらに投資を行う予定です。パワーサプライの16%の不足分を埋めていく必要があり、そのためにハードウェアメーカーやシリコンベンダーと協力して最適化する方針です。

ITmedia 間近に迫っている、3.9Gや4G時代に向けた課題と取り組みについて教えてください。

フォーサイス氏 通信機能のスタックとして新たに導入した「FreeWay」は、4Gを念頭に設計したアーキテクチャです。4G時代には、従来の3.6Mbpsや7.2Mbpsという通信速度の世界から数百Mbpsの世界に移行することになりますが、こうした大量のデータをソフトウェアのスタックで動かそうとしても、パフォーマンスやボトルネックの問題が出てきます。私たちはここに、全く新しい通信アーキテクチャを導入するという判断を下したわけです。これにより数百Mbpsのデータレートやリアルタイムのパフォーマンスに優れた環境を実現します。また、音声通話はもちろん、大容量データのダウンロードも短時間で行えるようになります。

 もう1つはストレージに対する取り組みです。帯域が広くなって大きなファイルが伝送されるようになると、相当に高度なデータベースやファイルシステムでないとなかなか対応できないのです。ファイルのナビゲーションやサーチを行う際にデータベースがお粗末だとついていけないので、Symbian OS 9.5にはSQLデータベースを導入しています。これはオープンソースのSQLiteをベースにしており、パフォーマンスの最適化に貢献するものです。

ITmedia 日本市場のニーズがOS開発に果たす役割をどう見ていますか。

フォーサイス氏 日本市場は世界の市場に比べて進んでおり、日本のイノベーションを取り込んで欧州や北米に投入するといった相乗効果を期待できます。こうしたことからも、私たちは日本市場のニーズをとても重要視しており、今後も顧客の声に応えていきたいと考えています。

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