「ポケモンGO」を極めし“ガチ勢”たちの恐るべき世界とは

» 2017年03月11日 06時00分 公開
[二階堂歩ITmedia]

 Pokemon GO(以下、ポケモンGO)が2016年7月に国内リリースされてから、半年以上が過ぎた。当初は屋外のそこかしこでスマートフォンを片手にプレイする人々を見掛けたが、今やそうした光景も過去のものになりつつある。

 リリース後1〜2カ月してからよく目にした記事の多くが、「ポケモンGOのユーザー数が激減」「ユーザーたちに飽きられた」という論調だった。スマホゲーム市場に詳しい一部の人たちからは、「この数字の落ち込み方は通常のゲームと比べても緩やか」「むしろ驚くべき継続率の高さだ」と擁護されたが、世間的には「終わったゲーム」と認識されていてもおかしくない。

 では、ポケモンGOは本当に皆に飽きられてしまったのか? あれほど毎日公園に通い詰めていたポケモントレーナーたちの熱は引いてしまったのか? もちろんそうではない。今もポケモンを捕まえ続けているプレイヤーたち、中でも“ガチ勢”と呼ばれる類のトッププレイヤーたちは、既に恐るべき地点にまでたどりついているのだ。

筆者も国内リリース初日から遊んでいるが、TLはいまだ32止まりの“ひよっこ”だ

(1)信じられない経験値

 “ガチ勢”のすごさと恐ろしさが分かる指標の1つとして、獲得経験値(XP)がある。ポケモンGOは一般的なゲームと同じく、トレーナーレベル(TL)が上がるにつれてレベルアップに必要なXPが増えていく。TL10→TL11ならば10,000XP、TL20→TL21なら50,000XPという具合だ。

 この必要経験値は、現在のゲーム中の最大トレーナーレベルであるTL40に至るころ(TL39→TL40)には、5,000,000XPというとてつもない数字となる。累計で比べるともっとすさまじく、TL1→TL30に至るまでに必要なのが1,650,000XPであるのに対し、TL30→TL40は18,350,000XP。つまり、「ラストの10レベルを上げるのに必要なXP」があれば、「レベル1からレベル30までを10回以上繰り返せる」計算になる。

レベル 必要XP 累計XP
1 1,000 0
2 2,000 1,000
3 3,000 3,000
4 4,000 6,000
5 5,000 10,000
6 6,000 15,000
7 7,000 21,000
8 8,000 28,000
9 9,000 36,000
10 10,000 45,000
11 10,000 55,000
12 10,000 65,000
13 10,000 75,000
14 15,000 85,000
15 20,000 100,000
16 20,000 120,000
17 20,000 140,000
18 25,000 160,000
19 25,000 185,000
20 50,000 210,000
21 75,000 260,000
22 100,000 335,000
23 125,000 435,000
24 150,000 560,000
25 190,000 710,000
26 200,000 900,000
27 250,000 1,100,000
28 300,000 1,350,000
29 350,000 1,650,000
30 500,000 2,000,000
31 500,000 2,500,000
32 750,000 3,000,000
33 1,000,000 3,750,000
34 1,250,000 4,750,000
35 1,500,000 6,000,000
36 2,000,000 7,500,000
37 2,500,000 9,500,000
38 3,000,000 12,000,000
39 5,000,000 15,000,000
40 20,000,000

 一般的なRPGなどであれば、レベルが上がれば敵も強くなり、獲得経験値も上がっていく。しかし、ポケモンGOはレベルが上がっても特に獲得経験値が上がるということはない。通常のポケモンゲットで「100XP」のままだ。もちろん、XPを上げるアイテムや各種のテクニックはあるが、それでも最大レベルにたどりつくのは生半可なプレイでは不可能だ。

 ところが、ガチ勢プレイヤーたちはこの「最大TL40」にたどりつくどころか、そのはるか先を行っている。TL1→TL40に必要な20,000,000XPの“何倍”を獲得できたかを競い合っているような状況だ。中には100,000,000XP(1億XP)に至っているプレイヤーもいるようだ。

 ポケモンの進化や強化に必要なアイテム「ポケモンのアメ」や「ほしのすな」についても同様で、それぞれ信じがたい数字(前者は数万、後者は数千万)が表示されたゲーム画面のスクリーンショットを、Twitterなどでよく見かける。

(2)究極のポケモン集め

 ポケモンGOの楽しみはレベル上げだけでなく、もちろん「ポケモン収集」にもある。だが、前述のようなガチ勢プレイヤーたちにとっては「図鑑コンプリート」などは語るまでもない当然のことで、既にそんな段階にはない。

「個体値厳選」と「わざガチャ」

 図鑑を全てコンプし終えた彼らは、それぞれに独自の楽しみを求めてさらなるポケモン収集に励んでいる。例えばその1つが個体値の厳選だ。ポケモンには、同じ種類の中でもそれぞれ強さが異なるパラメータ「個体値」が設定されており、その最良のものを求めて日々ポケモンを捕まえ続けるのである。

 この個体値システムは、最新作「サン・ムーン」も売れ行き好調な本家ポケモンを踏襲したものだが、ポケモンGOには本家と比べてもプレイヤーにとって厳しい点が1つある。それは、ポケモンが覚える「わざ」がランダムであるということだ。

 いくら個体値が高いポケモンでも、覚えているわざが弱い「ハズレ技」であればどうしようもなく、バトルでは活躍できない。進化するポケモンの場合、わざは「進化させた瞬間」にランダムで決定されるため、これは通称「わざガチャ」と呼ばれている。

わざガチャに失敗したカイリュー。わざが弱いとそれだけで強化されることなく“置き物”と化してしまう

 「とてつもない時間と労力を掛けて作り上げた最高個体値のポケモンが、わざガチャに失敗して強化もされずそのまま放置される」というのは“ポケGOあるある”だ。しかも、ポケモンGOの世界では「わざの強さ変更」などの調整が過去何度か唐突に行われており、そのたびに彼らは最高の一体をまた初めから作り直す。

 もちろん、ライトに遊ぶならそこまでこだわる必要はまったくないのだが、何せ彼らは“ガチ勢”なのである。

何年掛かるの……? 激レア「アンノーンコンプ」

 強さ以外を目標としたポケモン収集の楽しみもある。現時点で最も難しく、それゆえにガチ勢プレイヤーたちの心を激しく燃え上がらせているのが「激レアポケモン・アンノーンのコンプ」だろう。

 アンノーンは、A〜Zまでのアルファベットの形状をした26種類(本家ポケモンでは「!」と「?」を含めた28種類)が存在する特殊なポケモンで、現在のポケモンGO世界では極めて出現率が低い。ポケモン図鑑に登録するには、そのうちのどれか1種類を捕まえるだけで良いのだが、それに満足せず26種類全てを捕まえようとするのが「アンノーンコンプ」だ。

アンノーン

 繰り返しになるが、アンノーンは1種類(1匹)捕まえることさえ極めて難しく、図鑑コンプを目指すものにとって最後の難関になる可能性が高い。運良く複数匹捕まえられたとしても、途中同じ形で“かぶる”のはほぼ間違いないので、コンプのためには26匹よりはるかに多い数を捕まえる必要がある(とあるプレイヤーの試算の結果によれば、約100匹ほど捕まえる必要があるようだ)。

 しかもまたやっかいなことに、アンノーンコンプを達成するとその証として「メダル」がもらえるという仕様のため、プレイヤーたちの心はさらに刺激されている。普通にプレイしていたら永遠に達成不可能だと思われるこのメダルゲットも、既に海外プレイヤーの中には達成している人がいるようで、そこに至るまでに投資された時間と労力(とそれを間接的に支えた金銭)を考えただけで気が遠くなる。

「普通のプレイヤー」だってたくさんいる

 今回紹介したのは、トップ中のトップの、本当の“ガチ勢”についてだけだが、もちろんここまで極端でなくとも、普通にのんびりとポケモンGOを楽しんでいるプレイヤーたちはまだまだたくさんいる。

 週末のお台場を歩いてみてほしい。一人で黙々と、友人と談笑しながら、小さな子供を連れて、あるいは高齢の夫婦同士で、ゆったりとポケモンGOを遊んでいる人たちの姿を目にするはずだ。一時期の社会全体を巻き込んだようなブームは去ったが、それと引き換えに、周囲に対してのマナーや振る舞いを心得たポケモントレーナーたちがそこには残っている。

 新ポケモンの追加やイベントの発生が比較的スローペースで、プレイヤーたちをがっかりさせたりやきもきさせたりすることもあるポケモンGOだが、今後もできる限り長く遊べる平和なゲームとしてずっと続いていってほしい。初代の伝説ポケモンくらいは、そろそろ実装してほしいところだけれど。

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