“5秒で−5度” ワークマンの「ペルチェベスト」を体験 45度の猛暑でも冷える仕組みとバッテリーの安全性に迫る(1/2 ページ)

» 2026年08月24日 16時34分 公開
[田中聡,ITmedia]

 2026年も猛暑日が続いており、屋外で長時間作業をする人は、暑さ対策は必須といえる。外を歩くと、ファン付きウェアを着用している人を頻繁に見かけるようになったが、こうした製品では、外気温が高いと効果が失われ、かえって熱中症のリスクを高めてしまう。

 そこで注目したいのが、ペルチェ素子を搭載したベストだ。今回、ワークマンが2026年に発売したペルチェ半導体冷房服「ウィンドコアアイス×ヒーターペルチェベスト(以下、ペルチェベスト)」を実際に体験し、開発にあたってこだわった点を聞いた。

ワークマン ペルチェベスト ペルチェ素子を搭載し、−5度までの冷却効果を得られるという「ウィンドコアアイス×ヒーターペルチェベスト」

改良を重ねて−5度の冷却効果を実現 45度の環境でも使える

 ペルチェベストは、肩、背中、腰回りなどに当たるよう複数のペルチェ素子を備えており、着用して電源を入れるだけで冷却効果を得られる。ペルチェ素子を5個搭載した「ペルチェベストPro3」と、ペルチェ素子を7個搭載した「ペルチェベスト7個式スペシャルエディション」があり、価格は5個モデルが1万9800円、7個モデルが2万9800円だ。

ワークマン ペルチェベスト ペルチェ素子を5個搭載したモデル
ワークマン ペルチェベスト こちらはペルチェ素子を7個搭載したスペシャルエディション

 ワークマンは2023年からペルチェベストを開発しており、2026年モデルは6〜7代目に当たる。初代モデルはペルチェ素子が1個だったが、最新モデルでは5〜7個に増加。また、従来品はステンレスのペルチェ素子を使っていたが、2026年モデルでは熱伝導率の高いグラファイトメタルを使用している。

ワークマン ペルチェベスト より熱伝導率の高いグラファイトメタルを採用することで、冷却効果も増している

 こうした工夫により、2025年モデルの−3度から、2026年モデルは−5度まで冷却効果を高めている。25度の環境下でペルチェ素子のプレート部分が−5度まで下がるため、「環境温度差−30度」をうたっている。ワークマン広報部の松重尚志氏は「5秒で−5度まで下がります」と即効性をアピールする。

ワークマン ペルチェベスト ワークマン広報部の松重尚志氏

 ペルチェベストは45度という災害級の気温を想定して開発しているが、これはワークマン本社の所在地である群馬県伊勢崎市が、2025年に41度を記録したことも関係しているという。同社は、こうした過酷な環境を見越して冷却ウェアの開発を進めている。35度まではファン付きウェアでも効果を発揮するが、35〜36度など体温を超える気温になると、単に熱い風を送るだけになってしまうので、触れた部位を直接冷やすペルチェベストが有効だ。

 過酷な環境を意識して作られたペルチェベストだが、ガーデニングや通学のお迎えなど、日々の生活で使う人も多いそうだ。面白いところでは、キッチンで使う人もいるという。「キッチンはエアコンの風が届きにくく、コンロも熱い状況が多い」(松重氏)というのがその理由だ。

 出力は「強」「弱」「ゆらぎ」の3段階で調整でき、ペルチェベストPro3のペルチェ素子5個をフル稼働させた場合、バッテリーは強で約2.8時間、弱で約3.9時間、ゆらぎで約3.3時間持つ。ゆらぎでは出力が自動で調整され、一定時間がたつとランダムで切り替わる。

 ファンも内蔵しているが、こちらは冷やすためではなく、ペルチェ素子で奪った熱を逃がすためのもの。ファン付きウェアとは役割が異なる。

ワークマン ペルチェベスト ダイヤルを回して出力を調整する
ワークマン ペルチェベスト ファンを使って、たまった熱を排出する

発熱しにくい2万mAhのモバイルバッテリーを採用

 ペルチェ素子を稼働させるためにモバイルバッテリーから電力を供給しているが、2026年モデルは専用バッテリーを採用している。ペルチェベストには2万mAhのモバイルバッテリーを使用し、USB Power Deliveryや最大出力22.5Wに対応している。ペルチェベストPro3はバッテリーを1つ、ペルチェベスト7個式スペシャルエディションはバッテリーを2つ使用する。

 近年、モバイルバッテリーが発火する事例が頻発しているが、ペルチェベストは屋外の過酷な環境で着用するからこそ、バッテリーの安全性には最大限配慮している。ペルチェベスト用のモバイルバッテリーは、表面に凹凸のあるザラッとした素材を用いることで、「直射日光が当たるタッチポイントが減り、熱を保有しにくい」(松重氏)効果がある。

ワークマン ペルチェベスト
ワークマン ペルチェベスト ペルチェベスト専用のモバイルバッテリー。熱を蓄積しづらいザラッとした質感が特徴だ

 2万mAhという大容量バッテリーながら、ベストのポケットに収まるコンパクトなサイズにも注力した。モバイルバッテリーを収納するポケットの素材にもこだわり、「XShelter(エックスシェルター)β」と呼ぶ断熱材を生地に用いた。このXShelterβは、「外気と衣服内温度を無効化する」(松重氏)ため、バッテリーの発熱を抑えられる。

 モバイルバッテリーは4900円で単体販売もしており、スマートフォンの充電もできる。

ワークマン ペルチェベスト バッテリーのポケットには断熱材「XShelter(エックスシェルター)β」を用いている

ファン付きウェアとはどう違う? 2つの併用もおすすめ

 ペルチェベストと聞くと、保冷剤でもいいのでは? と思う人も多いかもしれないが、保冷剤は、朝冷凍庫から取り出したとしても、お昼には温かくなってしまう。職場に冷凍庫があれば通勤時と退勤時に利用できるが、冷凍庫に入れる手間が発生するし、長時間屋外で作業する使い方には向かない。ペルチェベストなら、バッテリーを充電できる環境があれば、外気温の影響を受けず、どこでも使用できるのがメリットとなる。

 なお、ワークマンはファン付きウェアも多数開発しているが、これはファンならではのメリットがあるため。ファンが体に直接送風するので、「汗をかいたときに風で乾燥でき、蒸れを逃がすならファン付きウェアの方が優れている」(松重氏)。

ワークマン ペルチェベスト ワークマンのファン付きウェア。風で素早く蒸れを逃すのに向いている

 一方で、外気温の影響を受けやすいこと、かさばるので着用しながら作業しにくいことはデメリットだ。風で冷やすため、周囲の環境の影響も受けやすい。「例えばごみ収集車の作業員の方だと、ごみの匂いが風と共に入ってしまいます。また、粉じんが掛かると故障の原因にもなり、工場で制限されている場合もあります」と松重氏。

 ワークマンは、ファン付きウェアとペルチェベストとの併用も推奨している。「ペルチェベストの上にファン付きウェアを着ると、風で浮くので、バッテリーの厚さを感じにくくなります。双方のいいとこ取りができるので、2つ同時に使うのもおすすめしています」(松重氏)

 とはいえ、重ね着は重装備になるため、室内温度の高い工場や炎天下での作業など、特殊な用途向けとなる。

 1万9800円〜2万9800円という金額は、ワークマンの製品では高額な部類で、「1着あたりの価格は、ワークマンの中では一番高いと思います」と松重氏。それでも、ペルチェベストは「7月下旬時点で、1週間で1万5000個売れた」というほど好調だ。ワークマンの販売ランキングでも1〜2位で、洋服類よりも売れているという。背景に、2025年から法律で義務化された、企業の熱中症対策がある。

 「今までは、デザインがカッコイイものが多く売れていましたが、法人でまとめて購入されることが増えました。ペルチェベストも、最近だと600着まとめて購入いただいたこともあります。そのときは道路関係のお仕事の企業でした」(松重氏)

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