11月4日、NTTドコモが度第2四半期決算説明会を開催した。その中で、前田義晃社長は同社が推進するNTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)の取り組みを紹介した。
同社におけるNTNは、従来の地上の移動体通信網ではカバーすることが困難であった山間部、離島、海上、さらには自然災害発生時の被災地などにおいて、「いつでも、どこでもつながる」安全と安心を提供することを目的とした極めて重要な戦略事業だ。
この取り組みは、NTTグループ全体で展開する宇宙ビジネスブランド「NTT C89(NTT CONSTELLATION 89 PROJECT)」の中核をなす施策として位置付けられており、地上基地局の境界線を越えて地球上のあらゆる場所へ通信エリアを拡張するチャレンジとして進められている。
同社のNTN戦略における最大の柱となっているのが、米国の宇宙企業SpaceXとのパートナーシップに基づく衛星とスマートフォンの直接通信サービス「docomo Starlink Direct」だ。このサービスは、地球低軌道上に配置された650基の衛星から構成されるSpaceXの「Starlink Mobile」コンステレーションを活用している。従来のような専用の衛星電話端末や大掛かりなパラボラアンテナを必要とせず、ユーザーが普段使用している既存の衛星通信対応スマートフォンが直接宇宙空間の低軌道衛星と電波をやりとりする仕組みを実現している。
Starlink衛星には高度なフェーズドアレイアンテナと衛星間レーザー通信機能が搭載されており、宇宙空間で地上基地局のような役割を果たしながら、地上ネットワークとシームレスに統合されている。
サービス開始に伴う発表日は4月2日。NTTドコモとNTTドコモビジネス(旧NTTコミュニケーションズ)は同日、「docomo Starlink Direct」の提供開始に関する報道発表を実施した。4月27日より、正式に本サービスの提供を開始した。サービス開始にあたっては、ユーザー利便性を最優先に考慮した設計がなされ、「ahamo」を含むドコモの全料金プランを契約している顧客を対象とし、事前の申し込みを一切不要とした。
さらに、月額利用料金についても当面の間無料で提供することとし、通信利用時におけるSMS送信料を無料とするとともに、データ通信量についても契約プランの月間データ容量の消費対象外とする思い切った施策を打ち出した。
初期バージョンである「docomo Starlink Direct V1」において提供される機能は、テキストメッセージ(SMS)の送受信、位置情報の共有、ドコモが指定する対応アプリを通じたデータ通信です。山ナビアプリや防災アプリなど、圏外エリアでの安全確保に役立つアプリケーションが活用可能となった。
提供開始からわずか約2カ月後の7月9日には、接続者数が500万人を突破したことが7月10日に発表されました。さらに、10月8日時点にはユニークユーザー数での接続者数が1000万人を突破したことが確認された。
この急速な普及の背景には、登山者やマリンスポーツを楽しむ人々、過疎地域や山間部での業務に従事する作業員などからの根強いニーズに加え、災害発生時における非常用連絡手段としての期待の高さがある。実際、令和8年熊本地震の発生時には、地震発生直後の1時間における接続者数および通信トラヒック量が通常の約3倍に達し、地上の通信インフラが被害を受けた際や遮断された際における補完的な救急・連絡ネットワークとして非常に大きな役割を果たした。
国内でのエリア拡張にとどまらず、グローバルな展開も急速に進められている。9月1日には、「docomo Starlink Direct」の国際ローミング接続機能の提供開始を発表。これにより、日本のユーザーが渡航した先の米国(T-Mobile USA連携エリア)、フィリピン(Globe Telecom連携エリア)、カナダ(Rogers Communications連携エリア)において、地上の携帯電話ネットワークやWi-Fiが利用できない環境下であっても、自動的に現地のStarlink衛星へと接続され、衛星直接通信を利用することが可能となった。
対応機種としては「Samsung Galaxy Zシリーズ」の3機種から順次展開され、その後10月23日にはオーストラリアおよびニュージーランドも対応国として追加され、海外5か国・地域へとローミングエリアが拡大しました。これにより、海外の国立公園やへき地を訪れる旅行者やビジネスパーソンに対しても安心感のあるサービスを提供している。
さらに、将来に向けた技術革新とサービス拡充のロードマップも明確に描かれている。8月14日には、SpaceXとの間で次世代衛星である「Starlink Mobile V2」の利用に関する契約に合意したことを発表。この合意に基づき、2028年度中には「docomo Starlink Direct V2」の提供開始を予定している。
V2への進化によって、これまでのテキストメッセージや特定アプリによるデータ通信にとどまらず、高品質な音声通話やWebブラウジングを含む高速インターネット通信が可能となる。
加えて、スマートフォンのみならず、遠隔地に設置されたIoTデバイスや産業用センサーとの直接通信サービスへの応用も計画。スマート農業、林業、建設業、海洋インフラ監視といった産業分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進にも大きく貢献することが期待されている。法人向けサービスについては、NTTドコモビジネスが主導して展開する予定だ。
NTTドコモが11月4日に開催した第2四半期決算説明会において、NTTドコモはこれらの「docomo Starlink Direct V1」の実績と国際ローミングの進展、「V2」に向けた将来展望をNTN取り組みの成果としてアピールした。地上の5G/LTEネットワークの深化と、宇宙からの衛星直接通信ネットワークの拡大を融合させることで、陸・海・空をシームレスに網羅する究極の「いつでも、どこでもつながる」通信環境の実現に向け、ドコモは今後もNTN分野における先導的な取り組みを強力に推進していく意向を示している。
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