SIMロックフリー時代の無線LANルータ「b-mobile WiFi」利用ガイド(後編):ポータブル無線LANルータレビュー(3/3 ページ)
SIMロックフリーと、“余計な機能なし”が特徴のポータブル無線LANルータ「b-mobile WiFi」。後編は通信速度やバッテリー動作時間など、より深く本機の魅力を探っていこう。
モバイル無線LANルータとしてのパフォーマンスは?
ポータブル無線LANルータは、ボディサイズやバッテリー動作以外に通信パフォーマンスも気になる。今回は日本通信の「b-mobileSIM U300」と、NTTドコモ「定額データプラン/mopera U」契約済みのSIMカード(以下、ドコモ契約SIMカード)を用い、通信速度をチェックした。計測した時間帯は少なくとも過大なトラフィックは発生していないと思われる日曜深夜(26時ごろ)、計測場所は東京23区西部の主要国道沿い(HSUPA対応エリアではない)。無線LAN接続はIEEE802.11gで、セキュリティはWPA2-PSK/AESの設定を有効にしている。
PCでの通信速度は、ドコモ契約SIMカード利用時で下り2Mbps/上り360kbps(上りはほぼ上限)ほど、b-mobileSIM U300利用時で、上り/下りともにほぼスペック上限の約300bpsとなった。比較のため、ドコモ契約SIMカードをUSBデータ通信端末(A2502 HIGH-SPEED)経由で速度を計測したが、結果はほとんど変わらなかった。b-mobile WiFiを利用することで実効通信速度が著しく低下することはまずないだろう。
スマートフォン(アップル「iPhone 3GS」とNTTドコモ「Xperia SO-01B」)での通信速度も、PC利用時と傾向はほぼ同じだ。iPhone 3GSの上り速度がやや遅めとなったが、それぞれの結果を見比べる限りではb-mobile WiFiの性能に影響したものではない。
次にハンドオーバー性能を含む高速移動時のパフォーマンスをFTPダウンロードで検証しよう。JR東海道線の川崎→品川間を走行中の列車内(約7分間)で、日曜日の22時台に計測を行った。この区間の距離は約11.4キロで、ダイヤ上の所要時間は8〜9分、仮に9分とすると平均時速は74キロにもなるノンストップ区間である。
結果を見ると、ハンドオーバー性能は上々といえる。接続セッション切れはもちろん、FTPでのダウンロードも切断されることはなかった。正確にいえばデータの流れが一時的に途切れることはあったが、セッションは保持されていたので見かけ上の通信は途切れていない。移動中の平均受信速度はb-mobileSIM U300が204kbps、ドコモ契約SIMカードが549kbpsとなり、ハンドオーバー、パフォーマンスともにとりあえず問題なしと言える。
なお、高速移動中の計測においては、b-mobileSIM U300が上限の300kbps前後に受信速度が張り付く区間が長く、停止時と比べるとドコモ契約SIMカード利用時との速度差がぐっと縮まっていることに注目してほしい。b-mobileSIM U300は上限300kbpsとする速度制限を有線網で行っているので、電波状態の変化が大きい高速移動中も通信速度のへ影響があまり大きくならない、ということを示す。もちろん最大速度はドコモ契約SIMカードの方が高いことに変わりはないが、185日/375日プランなら月額2500円以内で利用でき、かつ2年の長期契約などの必要もないb-mobileSIM U300は、スマートフォンやタブレット端末、電子書籍端末など、移動しながら使うポータブル機器との相性がよいことが伺える。
最後に無線LAN区間のみのパフォーマンスもチェックしよう。b-mobileWiFiをハブとし、2台のPCをIEEE802.11g接続した際の転送速度は約8.2Mbpsだった。ファイルコピーのオーバーヘッドを考慮すると実転送速度はもう少し速いことになるが、無線LAN区間のスループットが最低でも16Mbps以上は確保されていることになる。
こちらはPC利用時が主の使い方になるが、ポータブル無線LANルータは出先でも複数台のPCでごく手軽にLANを組めるメリットもある。用途は限られるかもしれないが、LAN内PC間でファイルコピーなどを行う場合は無線LAN区間の速度が重要だ。据え置き型のベーシック無線LANルータに置き換えても誤差程度の差しか出なかったので合格点を与えていいだろう。
自由、小さい、キャンペーンを利用するともっと安い──魅力の多いポータブル無線LANルータ
b-mobileWiFiは、日本通信のSIMカードとの組み合わせなら設定不要で即使え、b-mobileSIM U300なら定額制のプリペイド式なので、いわゆる“パケ死”の心配も不要だ。64ビットWEPながらWPSで無線LAN区間の暗号化設定が容易に行えるように工夫され、導入の敷居もさほど高くない。実質5〜6時間程度は持つバッテリー動作時間も、1日中電源入れっぱなしという使い方でなければ大きな不満は感じないし、1日中使うなら数千円で購入できるポータブル形の外付けバッテリーを併用すればよい。PCのUSBポートはもちろん、一般的な汎用USB充電器でも充電できるので、出先での充電環境もさほど困らないと思う。
あえて気になったのは、Web設定ツールのユーザーインタフェースか。設定変更が即時反映されるのに警告などがないのは、PCに詳しくはない一般ユーザーにはちょっと不親切かもねと思えた部分はある。例えば、無線LANのセキュリティ関係(暗号化方式、暗号キーなど)を変更して「適用」をクリックすると、即座に設定作業をしていた無線LAN機器も無線LAN接続が切断されてしまう。「設定を変更します」「よろしいですか?」「本当によろしいですか?」なんて、あまりにうるさすぎるよりはいいのだが……。
ともあれ、SIMロックフリーで、小型ボディ、(単体価格として)かなり安価であることに尽きる。SIMロックフリーに関してはソフトバンクモバイルが自社網での端末制限のない定額サービスを提供していない(※ウィルコム「HYBRID W-ZERO3」向けに提供するSIMカードは、テザリングでの利用も定額料金に含むが、IMEI-国際移動体装置識別番号ロックされているかどうかといった点は未確認)ため、実質、国内で定額利用するにはNTTドコモ 定額データプラン契約のSIMカードか、日本通信を含むドコモのMVNOのSIMカードのどちらかを使うことになる。また、すでに2年契約でドコモの定額データプランを使っている人も、面倒な手続きなしに端末だけb-mobile WiFiに乗り換えられるのがそこそこ大きなメリットと思う。
機能は最小限だ。ただ、多機能な他機種に劣るのはあまり利用機会のない部分である。「microSDが差せて簡易NAS代わりにできる……あっても別にいいけど、ほかにいくらでも代用がきくそんな機能使うかな? 携帯するものなので、余計な機能などいらん──そう、これでいい」そんな印象だ。
最後にb-mobile SIM U300とともに使う場合の利用料金について。b-mobile WiFiと「b-mobileSIM U300」の6カ月版あるいは12カ月版のセット購入で、6カ月版はプラス3カ月分、12カ月版はプラス6カ月分も利用期間が延長されるお得なキャンペーンが、2010年10月末まで行われている。
b-mobile SIMは、プリペイド方式で料金を前払いすることになるので、ドコモやイー・モバイルの段階制定額プランのようにまったく使わなければ月額換算1000円以下で維持できるほど安価ではない。ただ、b-mobile WiFiを導入したくなるようなユーザーは、維持や予備ではなく、積極的に使うために導入するユーザーだと思う。それなら、多くの場合でトータルコストは安価になるのではないだろうか。ちなみに、b-mobileSIM U300は使用者情報を変更することで使用権の譲渡が認められているので、仮に使わなくなった場合は利用権利を(残りの利用期間に応じた金額で友人・知人などに)譲渡することもできる。
b-mobileSIM U300においては、300kbpsが上限となる通信速度を心配するユーザーも多いが、それは使い方次第だ(もちろん、日本通信にはより高速な通信が必要なユーザーニーズに応じて、U300のプラス何円かで、例えば“U600(最大600kbps)”や“U2000(最大2Mbps)”のような最大速度別の製品も用意してほしいと思う)。PCだけでなくiPadやiPhone、スマートフォン、タブレット端末、携帯ゲーム機、電子書籍端末などの無線LAN搭載のポータブル機器とともに、とにかく広いエリアで国内のほぼどこでも利用でき、かつ長期契約の縛りなしに月額コストも安価に抑えて運用したいと考えるなら、b-mobileWiFiとb-mobileSIM U300の組み合わせは大きな魅力だと思うのだ。
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