クアッドコアCPU搭載のSnapdragon「APQ8064」のベンチマークを試す――Tegra 3との差は?:Qualcomm Mobile Benchmarking Workshop
スマホやタブレットにおける「クアッドコアCPU」といえば、NVIDIAの「Tegra 3」が話題を集めているが、QualcommもクアッドコアCPU搭載のプロセッサーを開発しており、2012年内には採用製品が登場する見込み。Qualcommが開催した「Benchmarking Workshop」でその性能を確認した。
Qualcommが7月24日(現地時間)、米サンフランシスコでメディア向けに「Qualcomm Mobile Benchmarking Workshop」を開催した。今回のイベントでは、Qualcommが次期プロセッサーとして投入を予定しているSnapdragon「APQ8064」を搭載したリファレンスモデル(Androidタブレット)を披露し、記者がベンチマークを試せる場が設けられた。
APQ8064と現行Snapdragon S4との違いは?
APQ8064は、第4世代Snapdragonである「Snapdragon S4」に含まれるアプリケーションプロセッサーの1つ。Snapdragon S4は性能に応じて「Play」「Plus」「Pro」「Prime」という4つのカテゴリーに分けられており、APQ8064はその中のProに含まれる。日本の夏モデルとして発売中(予定)のLTEスマートフォンに採用されている「MSM8960」や、KDDIの一部夏モデルに採用されている「MSM8660A」などは、S4のPlusシリーズに含まれる。APQ8064は1.5GHzのクアッドコアCPUを搭載し、CPUはPlusと同様にQualcommの「Krait」を採用している。動画はフルHDサイズ(1080p)の再生を標準でサポートする。GPUはPlusの「Adreno 305」から「Adreno 320」(クアッドコア)に進化し、旧世代の225 GPUと比べて2倍以上の処理速度を実現するとしている。
APQ8064搭載のリファレンスモデルは、アプリ開発者がSnapdragonに最適化したアプリを検証するために用いるもの。一般ユーザー向けに広く売られる製品ではないが、BsquareのWebサイト(外部リンク)から購入することは可能。別途説明するが、QualcommはSnapdragonをベースとしたAndroid向けアプリのSDKを「QDevNet」というWebサイト(外部リンク)で公開しており、チップの開発のみならず、チップの性能をフルに生かせるアプリ開発の支援も行っている。
リファレンスモデルのOSはAndroid 4.0で、ディスプレイは10.1インチのワイドXGA液晶を搭載している。最新のAndroid 4.1にも今後対応するとのこと。メモリは2GバイトのRAMと32GバイトのROMを備える。3GやLTEなどの通信モジュールは内蔵しておらず、無線LANでインターネット接続を行う。なお、APQ8064を搭載した端末メーカーによるスマートフォンやタブレットは、2012年内に世界で投入される見込み。「APQ」という製品名からも分かるとおり、APQ8064はアプリケーションプロセッサーであり、3GやLTEなどを搭載したスマートフォンやタブレットに搭載する際は、別途モデムが必要になる。Qualcommは将来的にはモデムも含めた1チップでSnapdragon S4 Proの製品を展開する構えだ。実際、Snapdragon S4 ProにはLTEモデム込みの「MSM8960T」という製品もラインアップされている。
APQ8064のベンチマークを試す――現行機種との差は?
会場でAPQ8064搭載のリファレンスモデルに触れる機会を得たので、さっそくベンチマークテストを試みた。まずはCPUやグラフィック性能などを測れる定番アプリ「Quadrant Professional」を使用した。3回テストしたところ、スコアは7597、7628、7590だった。クアッドコアCPUのTegra 3を搭載する「HTC One X」の4500強と比べると、APQ8064の方がはるかに高い。ただし今回の数値は、あくまでQualcomm製のリファレンス(見本となる)モデルで試したものであり、端末メーカーが開発した製品では(作り込みがまったく同一でないため)パフォーマンスが下がる可能性もあるので、参考値として考えたい。ちなみに、MSM8960を搭載した「Xperia GX SO-04D」の試作機でQuadrant Professionalを試したところ、スコアは4100〜4200だった。また3世代目のSnapdragon「MSM8260」を備える「Xperia NX SO-02D」のスコアは3000前後。数値の内訳を見ると、Memory、I/O、2D、3DはリファレンスモデルとXperia GXで大差ないが、(ある結果では)CPUがXperia GXの5618に対してリファレンスモデルは18311となっており、3倍以上の差が出ている。
逆にここまでCPUの性能が高いと、フルに性能を使う際に端末の「発熱」が気になる。Qualcomm関係者によると、「APQ8064搭載機を充電したまま数時間(APQ8064に最適化した)ゲームのデモを行っていたが、熱くなるようなことはなかった」という。QualcommはSnapdragon S4搭載機にバターを載せた実験を行っており、ある条件下においては発熱のしにくさが証明されている。ただし発熱性については端末の作り込みやサイズ、防水性能の有無などで変わってくる恐れがあるので、製品ごとに少なからず差が出るだろう。
続いて、Qualcommが開発したブラウザ用のベンチマークアプリ「Vellamo」(外部リンク)も試してみた。このアプリではAndroid標準ブラウザのレンダリング、JavaScript、スクロール速度、ネットワーク性能などを加味したスコアを確認できる。リファレンスモデルのスコアは2541だった。比較対象としてグラフに表示される機種の1つ「HTC One XL」も2000台前半なので、現行機種と比べて飛躍的に数値が高いわけではない。そもそもAndroid 4.0では2.3からブラウザのパフォーマンスが向上しており、4.0搭載機ではそれほど大きな差は出なそうだ。実際にレファレンスモデルのブラウザで「ITmedia +D Mobile」のトップページにアクセスしてブラウザを操作してみたが、操作感は現行のAndroid 4.0搭載機と同程度という印象だった。それでもTegra 3を搭載するHTC Oneのスコアは1500強なので、ここはチップの差によるものと思われる。
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