「高齢者や女性にも使ってほしい」――ASUSとgoo SimSellerが目指す“SIMの広がり”:SIMブロガーイベント
MVNOが提供するSIMサービスが増えつつあるが、市場全体を見ると、SIMサービスが普及するのはこれからだろう。NTTレゾナントが開催した「SIMブロガーイベント」では、メーカーと販売店が、SIMサービス/SIMフリー端末普及についての意気込みを語った。
NTTレゾナントの「SIM通」編集部が3月18日、SIMブロガーイベントを開催した。SIM通は、SIMカードの活用法を掲載している情報サイト。イベントでは、SIM通でよく読まれている記事とともに、2014年1〜3月はSIM初心者からのアクセスが増えていることが紹介された。
スペシャルゲストとして、ASUS JAPANとgoo SimSellerを招き、SIMフリースマートフォンメーカーとSIMサービス販売店の視点からも、SIMを取り巻く現状やこだわっている点が語られた。SIM通やgooスマホ部、司会進行を務めた「アプリソムリエ」の石井寛子さんも交えたSIM対談や、ブロガーたちによる質疑応答も行われたので、そこで挙がったトピックをまとめたい。
日本で製品を投入する苦労とは――ASUS
ASUSは、日本では通信キャリアを通さずにSIMフリー端末を販売するメーカーとして知られている。Googleのリファレンスモデル「Nexus 7(2013)」をはじめ、3G通話対応の7インチタブレット「ASUS Fonepad 7」、タブレットとスマートフォンを一体にした「PadFone 2」など、ユニークなSIMフリー端末を投入している。
日本でSIMフリー端末を投入し続ける狙いについて、ASUS JAPAN マーケティング部 システムプロダクト マーケティング スペシャリストのSeiko氏は「SIMフリーの市場はまだ確立されていない面もあるが、日本のお客様からニーズがあるとみているので販売している。もっとSIMについて知ってほしいと思っているので、素人が読んでもSIMフリーについて分かるガイドブックなども作っている」と話す。また、1月17日から3月9日まで実施していた、期間中に対象SIMフリー端末を購入するとSIMカードが無料で入手できるキャンペーンには「2000人弱ほどの応募があった」というほど好調だったようだ。
ASUSのSIMフリー端末を購入しているのは「30代後半、40〜50代の男性で、リテラシーが少し高い方が多い」とSeiko氏。ただ、今後は高齢者や女性にも使ってほしいと同氏は考える。「Fonepadは老眼が進んでいても見やすいサイズ。また女性は、いろいろなものにお金をかけないといけない。(SIMフリー端末で通信費を節約して)好きなときに通信ができて情報が手に入るという使い方をしていただきたい」
日本でタブレットを発売するにあたっては、さまざまな検証が必要になり、システムビジネス部 テクニカルプロダクトエンジニアのAndy氏がその苦労を話す。
「ASUSは2011年6月からAndroidタブレットを日本で発売している。日本で発売が決まったら、台湾から新製品のサンプルを受領し、本社から提供された日本用のOSをインストールして製品の検証を開始する。その内容は、日本語、動作、通信、文字入力、タッチパネルなど。山手線に乗って通信速度をチェックすることもある。不具合があったら本社に報告し、本社が修正をかけて新しいシステムをもらって、私がOKを出すまでずっと検証を続けている」(Andy氏)
日本では通信キャリアから発売されているスマートフォンやタブレットのOSアップデートは、キャリアの判断に委ねられる部分が大きいが、キャリアを介さないASUSの製品の場合は「本社側から新しいOSのイメージを提供されて、それにOKを出せばよい」(Andy氏)。「オンラインの配信日時も日本側が設定して、本社に指示を出してアップデートを開始する。AndroidのOSはバージョンアップが早いので、少しでもユーザーの皆様に最新のOSを届けられるように頑張っている」
ブロガーからの質疑応答では「Fonepad 7がLTEに対応していない理由」が出た。これについてSeiko氏は「ASUSは世界に向けて製品を作っている。LTEはまだ世界的には安定しておらず、地域も限られている。3Gをスタンダードにして開発している。ただ、日本のお客様は目も肥えているし、LTEも普及しているので、今後はLTE端末が出てくると信じている」と答えた。
「日本だと特にiOS端末(iPhoneやiPad)の人気が高いが」という意見に対しては「物作りの理念で、お客様の求めているものに重点を置いているので、他社に対抗するという戦略はない」とSeiko氏。Andy氏は「iOSにはできなくてAndroidでできることを訴求したい。例えば『Miracast』や『Qi』などがそれにあたる」と付け加えた。
「(ASUSは)今までも風変わりな製品を出してきたので、今後も他社や皆さんが想像つかない製品を出せるという期待はある」(Seiko氏)
SIM製品を買っているのはどんな人?――gooSimSeller
goo SimSellerは、NTTレゾナントが運営するSIM商品のオンラインショップ。SIM単品のほか、モバイルWi-Fiルーター、スマートフォン、タブレットとのセット販売も行っている。gooサイト内に展開する本店と、楽天市場とYahoo!ショッピングで展開している3つの店舗がある。
goo SimSellerでは2014年の年明けからSIMに関する問い合わせが増えてきたそうで、本店担当の田谷薫氏によると、「2013年秋と比べて、(2014年の)月間の問い合わせ数は250〜300%に増加している」という。よく聞かれるのは「SIMカードは契約期間の縛りはあるのか?」「LINEは使えるか?」「今はキャリアのケータイを使っているけど、SIMを変えても今までと同じように使えるか?」など。「テレビCMや、友人や家族が使い始めたことで、SIMに対する認知度が高まっていると感じている」(田谷氏)
ただ、まだSIMをよく知らない人や、導入のハードルが高いと感じているとも多いので、「SIMをお得に活用するためのコンテンツを増やすことで、SIMへの認知度を高めていきたい。SIMのことをよく知らない女性や学生の方にも使っていただきたい」と田谷氏は意気込みを話した。
gooSimSellerで購入する人は、楽天市場は40〜60代が6割ほどで、うち男性が8割を占めるという。Yahoo!ショッピングではやや若い30〜40代が特に多く、男性8割は変わらない。Yahoo!ショッピングでは、購入者のうちSIM単品が3割、ルーターやSIMフリー端末とのセットが7割だという。アンテナピクト問題やバッテリー消費が少ないというメリットから、SMS対応SIMを買う人も多い。
楽天市場やYahoo!ショッピングでは、購入するとポイントを増加するキャンペーンなども実施し、集客のために工夫を凝らしている。本店では、SIM商品を購入して「OCN 光 with フレッツ」に新規で申し込むと、端末代を最大2万円割り引きし、最大3万3000円をキャッシュバックするキャンペーンも行っている。
SIM通プロデューサーの小池章夫氏は、SIM製品を購入する際には「月額どれほどのコストで運用したいか」「090や080の電話番号を使いたいか」「継続して使うか」の3点をまずチェックしてほしいと述べた。また日本でSIMフリー端末を使うにあたっては「技的(技術基準適合証明)」があるかも忘れてはいけないと補足した。SIMフリーのメリットには「海外でも現地のSIMを挿せば使えること」を挙げた。
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