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「“アニメの殿堂”必要」――里中満智子さんら、「原画やゲーム基板の保存場所を」と訴え

» 2009年06月04日 22時38分 公開
[岡田有花,ITmedia]

 「このままでは、漫画やアニメ、ゲームの資料を後世に残せない」――「国立メディア芸術総合センター(仮称)」設立に批判が集まっている件で、漫画家の里中満智子さんらが6月4日、都内で記者懇親会を開き、施設の必要性を訴えた。

画像 左から東京都現代美術館学芸員の森山朋絵さん、浜野保樹東京大学大学院教授、里中満智子さん、明和電機の土佐信道さん

 国立メディア芸術総合センターは、漫画やアニメ、ゲームなどを展示・収蔵する国の施設として2009年度補正予算に117億円の建設費が盛り込まれている、いわゆる“アニメの殿堂”だ。

 文化庁傘下の「メディア芸術の国際的な拠点の整備に関する検討会」が昨年7月から設立を検討してきたもので、検討会の報告書によると、都内に地上4〜5階の施設を建設。運営は民間に委託し、年間60万人の来場者を目標としている。

 同施設については、民主党の鳩山由紀夫代表などが国会で、「“国営マンガ喫茶”は不要。税金の無駄遣いだ」などと痛烈に批判。先行きが不透明になっていた。

 そんな中、施設が必要と考える有識者が「計画が流れてしまわないか不安」(里中さん)に思い、「国立メディア芸術総合センターを考える会」を発足。記者懇親会を開いて必要性を訴えかけた。

 懇親会には里中さんのほか、検討会主査の浜野保樹 東京大学大学院教授、アートユニット・明和電機の土佐信道さん、東京都現代美術館学芸員の森山朋絵さんが参加。「漫画の原画やアニメのセル画、ゲーム基板などを収集し、メディアアートを発信する拠点として、施設は不可欠」と訴えた。

画像 漫画原画の保存状況

 里中さんは、「漫画の原画は作者が個別に管理しているので、捨てられたり、なくなったり、海外の収集家に買われて流出していることも多い。このままでは100年後に漫画の資料が残らない。ハコモノ行政という批判もあるが、漫画の原画を保存するにはハコモノが必要」と話した。

 浜野教授も、ゲームの基板やアニメのセル画、アニメ制作に必要な機器などを保存・展示する拠点が必要と主張。「古い名作ゲームを基盤ごと保存しておくにはスペースが必要だが、置き場がなく、どんどん捨てられているのが現状」と訴えた。

 土佐さんは、自らが手掛けるメディアアート発信の拠点が日本にはないことが問題と指摘。森山さんは「日本のメディアアートは世界的に評価されているのに、総合的な施設がない」とし、発信拠点としての必要性を訴えかけた。

 予算があるなら、ハコモノではなく、苦しい生活の中で創作活動を行っている現役の漫画家やアニメーター支援に使うべきという意見もある。里中さんは「漫画家の生活は確かに厳しく、見返りは必要」としながらも、「労働と文化は問題が異なる」と反論。漫画家やアニメーターの生活は、社会保障で解決すべき問題とした。

 懇親会には「機動戦士ガンダム」の監督として知られる富野由悠季さんも参加予定だったが、多忙のため欠席した。

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