米Microsoftは、WindowsにInternet Explorer 8(IE 8)をバンドルする問題をめぐって欧州委員会と長期にわたって続いてきた係争で新たな問題に直面している。Microsoftは3月1日、バンドル問題をめぐる懸念を沈静化するために「Webブラウザ選択画面」を導入し、ランダムな順番で表示されるブラウザのリストを欧州のユーザーに提示するようにしたが、選択画面に登録されている小規模ブラウザベンダー各社は3月3日、欧州委員会に正式に異議申し立てを行った。
この申し立ては「ブラウザ選択画面は不公平な構成になっており、弱小ブラウザはユーザーが画面を横方向にスクロールしないと見えないようになっている」と訴えている。これに対し、大きな市場シェアを持つブラウザ(AppleのSafari、Google Chrome、IE 8、Mozilla Firefoxなど)は画面の中央に表示されている。
Microsoftでは、欧州のWindows 7、Windows XP、Windows Vistaのユーザー向けに選択画面を自動ダウンロードとして提供している。選択画面の配布が始まって以来、少なくとも一部のブラウザは欧州での市場シェアが上昇した。例えば、Opera Softwareでは、ベルギー、フランス、スペイン、ポーランド、英国など欧州主要諸国でダウンロードが3倍以上に増加したとしている。
しかし小規模ブラウザベンダー各社は、欧州連合(EU)の独禁法当局である欧州委員会に対して正式な抗議を提出した。
「選択画面の最終的なデザインでは、選択できるブラウザが5種類よりも多くあることを大多数のユーザーが気付かない」と小規模ベンダーが提出した申立書は述べている。この申立書に名前を連ねているベンダーは、Maxthon、SlimBrowser、Avant Force、Flock、Sleipnir、GreenBrowserだ。「これは、欧州委員会が言っている選択画面の目的と一致しない。広く利用されている12種類のWebブラウザの情報を欧州のコンシューマーに提供し、ユーザーがこれらのブラウザのどれかを容易にダウンロード、インストールできるようにすることが選択画面の目的だ」
同申立書は、小規模ブラウザベンダー各社は選択画面のデザインのわずかな変更を求めているだけだと強調している。
「われわれは今回、選択画面の大幅な見直しやデザイン変更を提案しているのではないことを理解していただきたい」と太字で強調されている。「表示中の画面の右の方にも選択肢があることを、平均的なユーザーに示す文字あるいはデザイン要素を追加するよう求めているだけなのだ」
追加すべき要素として提案されているのは、右の方にもブラウザがあることを示す文字(選択画面の右上または右下に表示)、グラフィック要素(矢印など)、画面のタイトル文字の変更などだ。
小規模ブラウザベンダー連合の推定によると、4月末までに自動更新を通じて約1億9200万台のPCに選択画面が配布される見込みだ。「このため、欧州委員会の意図した通り、欧州のユーザーがすべてのブラウザの中から選択するのを手助けするには、この問題の解決に向けて早急に動くことが不可欠だ」
Flockのショーン・ハーディンCEOは3月2日に行われた米eWEEKの取材で、弱小ブラウザにとって選択画面のデザインが重要であると語った。「われわれは大手ベンダーの資金力にはかなわないので、この選択画面は極めて重要だ。このような画面になったのは残念極まりない」。
一方、MicrosoftはeWEEKに対して、選択画面は最終的に欧州委員会の思考過程を反映したものだと説明している。
「業界の意見、そして市場シェアが大きいベンダーとシェアが非常に小さいベンダーとのバランスを考慮した欧州委員会の判断に従ったブラウザ選択画面に対して、Microsoftが一方的に変更を加えることができないのが現実だ」とMicrosoftの広報担当ディレクター、ケビン・カッツ氏は、3月2日付の電子メールで述べている。「ブラウザ選択画面の最終版は、適切なバランスをとるという欧州委員会の強い見解を反映したものだ」
昨年12月16日に公表された欧州委員会の決定には、現在の選択画面の構成の理由を説明した記述がある。
「選択画面に表示されるブラウザが多過ぎると、ユーザーが混乱する恐れがある。その結果、選択を行わずに選択画面そのものを閉じてしまう可能性が高くなる」と同文書は述べている。「5つのWebブラウザを目立つように表示し、ユーザーが横方向にスクロールしたときに、さらに7つのブラウザが表示されるようにするという構成は、市場の状況を反映したものだ」としている。
しかし今度は、これを不服とするベンダーグループが、欧州委員会のコートにボールを打ち返した格好になった。
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