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KDDI「iida calling」がソーシャルメディアを採用した理由

» 2010年04月15日 12時02分 公開
[小笠原由依,ITmedia]
photo iida calling ver.3.1

 KDDIは昨年4月からデザインブランド「iida」のプロモーションとして、ユーザーがオリジナル楽曲を作れるWebキャンペーンシリーズ「iida calling」を実施している。電話をかけて声を録音すると楽曲が作れるといった“携帯電話本来の機能”をサービスに取り入れた同キャンペーンだが、今年3月にはmixiアプリにも移植。ソーシャルメディアを取り入れた理由を聞いた。

 最新の「iida calling ver.3.1」は、俳句のような5・7・5のテキストを入力すると、入力したテキストを歌詞にした楽曲を自動的に作成し、着うたとしてダウンロードできる。特設サイトに加え、mixiアプリで作品を作ることができる。特設サイトからはTwitterに投稿することも可能だ。楽曲は、いとうせいこうさんが所属するユニット・□□□(クチロロ)が制作した。

photo iida calling ver.3.1のmixiアプリ

 今年2月に公開した「ver.3.0」ではキャンペーンサイトのみだったが、3月の「3.1」でmixiアプリにも展開。キャンペーンサイトからはTwitterに投稿できるのに対して、mixiアプリでは友人が作った歌に対して「返事をする」という機能を搭載。友人が作った楽曲に対する返歌を作成し、2曲を続けて再生するなど、友人とともに楽曲を作って遊べる、SNSならではの仕掛けだ。

 同キャンペーンを手がけたクリエイティブディレクター・田中耕一郎さんは「3.0が俳句なら、3.1は連歌をイメージした」と話す。

ソーシャルメディア化でキャンペーンの広がりを視覚化

 昨年4月に公開した初代と、9月に公開した2は、携帯電話をコンセプトの主軸にしたサービスだった。初代は、ユーザーが専用の番号に電話をかけて声を録音すると、録音したユーザーの声をリミックスして楽曲を作成。2は、サイトで入力したテキストを歌詞にして楽曲を作れた。「電話をかける」「メールをする(テキストを入力する)」という携帯電話本来の機能を意識したキャンペーンだ。

 2/3.0/3.1では、ヤマハの「NetVOCALOID」を採用。NetVOCALOIDは、サーバ上のVOCALOIDをユーザー端末から操作し、歌わせることができるSaaS型サービスだ。「言葉を楽曲にする音声化の技術としてVOCALOIDのクオリティーが高い」と判断し、採用したという。

photo クリエイティブディレクターの田中耕一郎さん

 携帯の機能と携帯向けサイトをメインにした初代と2から一転、3ではソーシャルメディアを取り入れた。「モバイルのみでのキャンペーンは、どれくらいの人が使っているのかという広がりが見えづらかった」(田中さん)ことも理由の1つだ。Twitter、mixiアプリといったソーシャルメディアを取り入れることで情報の広がりを視覚化し、認知を高めていくのが狙いだ。

 Twitterを選んだのは「最も情報感度が高いユーザーが使っている」ため。田中さんは「Twitterはキャズムを超え始めた。同様にmixiアプリにも火が付いている。いいタイミングで2つのサービスが勃興した」と話す。

 キャンペーンで意識したのは、ソーシャルメディア側から見ても価値があるサービスであること。「ソーシャルメディアは外のサービスと関連付くことでもっと面白くなる。楽曲を投稿するという機能で、Twitterやmixiアプリ自体の体験をもっと面白いものにできる」

 逆に言えば、「企業がキャンペーンを実施する際に最も重要な視点は、ソーシャルメディアといかに相関できるかという点」ということにもなる。各メディアにしっくりくる内容であればコンテンツとして流行し、ソーシャルメディアのユーザーを満足させながらキャンペーン効果を高めることができる。

 3.0は開始から約1週間で10万件の投稿があったという。KDDIのPC向けECサイトでは、iida周辺機器の販売数がキャンペーンを始めてから「かなりの勢いで伸びた」(KDDIの藤間良太課長補佐)という。「3.0にはかなりの反響があった。費用対効果は十分ある」として、KDDIは今後もユーザーとのコミュニケーションを深めるキャンペーンを展開していく考えだ。

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