この数年、NokiaやAppleなどが投入した携帯端末や、最近登場したAndroidベースの多数の携帯電話と比較すると、「HPの端末はとても競争にならない。彼らは今でもエンタープライズ部門を通じてiPAQを販売しているが、シェアは非常に小さく、HPの端末を見掛けることはない」とハイヤーズ氏は指摘する。
同氏によると、HPがこの買収で手に入れるのは、業績悪化と経営不振に陥っても優れたデバイスを開発している企業だという。
「それに加えて、非常に優れたモバイルOSであるPalmのOSも手に入る。Palmは貴重な知的財産をたくさん持っている。一方、Palm側からすれば、巨大なリソースとエンタープライズ市場への強力なチャネルを持った企業の一員になるわけだ。ここで特に重要なのは、エンタープライズという部分だ」(同氏)
米Forrester Researchのアナリスト、チャールズ・ゴルビン氏は、この買収は朗報であると同時に残念なニュースだと思ったという。
「朗報だというのは、HPがモバイル市場でのプレイヤーを目指して力強い動きを見せたことだ」とゴルビン氏は話す。「残念なのは、これが間違った動きだということだ」
「Palmのブランド、知的財産、プラットフォーム、人材には価値があるかもしれないが、HPはPalmのブランドを必要としていない。知的財産が役立つのは既存のプレイヤーの場合であり、新規参入企業ではない。それに、webOSプラットフォームが長期的に競争で生き残れるとは思えない。HPは、ずっと安い費用でPalmの人材を個人的にかき集めることができるはずだ。HPはモバイル市場で強力なプレゼンスを必要としているが、Palmがそれを提供することはできない」(同氏)
米iSuppliでワイヤレスコミュニケーションを担当する上席アナリストのティナ・テン氏は「ハイテク業界の覇権をめぐる戦いは、次第にモバイルインターネットが主戦場になってきた。モバイルワイヤレスデータユーザーからの収入(サブスクリプション、広告販売、アプリストアなどからの収入)の流れを支配できる企業が莫大な利益を手にすることになるだろう。HPはPalmの買収により、この壮大なテクノロジー戦争のプレーヤーとして自社を位置付けた」と語る。
買収が発表された4月28日、ニューヨークの法律事務所Levi & Korsinskyは、この取引に関連してPalmの取締役会が「信認義務の不履行など州法に違反している可能性」について調査中だと発表した。
この調査が問題としているのは、「同取締役会がこの取引を成立させる前に売却先探しを十分に行わず、株主に対する信認義務に違反したのではないか、またPalmの株式に対してHPが支払う金額が低過ぎ、Palmの株主に不当な損害を与えるのではないか」という点だ。
Levi & Korsinskyでは、2010年1月15日の時点でPalmの株式は1株14.14ドルで取引されたと指摘し、「少なくとも1人のアナリストが、Palmの株式の価格目標を1株14.00ドルに設定している」と述べている。
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