外周アンテナの感度問題など、iPhone 4に対する苦情の高まりを受けて、先ごろ、米Appleのモバイルデバイス担当上級副社長マーク・ペーパーマスター氏が同社を退社した――。少なくとも、多くのメディアは当初、そう報じていた。だが新たな報道によると、ペーパーマスター氏のAppleでの仕事はそもそもうまくいっていなかったという。
8月8日付の米Wall Street Journal紙は「ペーパーマスター氏の事情に詳しい数名の関係筋」の話として、同氏がAppleを退職したのは、「Appleの企業文化に馴染めず、またスティーブ・ジョブズCEOとの間にもあつれきが生じていたため」と報じている。また、こうした関係筋の話によると、「ペーパーマスター氏は既に数カ月前にはジョブズ氏の信頼を失い、最近は意思決定プロセスからも外されていた」という。
Appleが2008年にIBMからペーパーマスター氏を引き抜いた際にひと騒動あったことを思うと、今回の退職はとりわけ皮肉な話だ。「Appleがペーパーマスター氏を雇うのは競業禁止協定に違反している」としてIBMが起こした裁判が2009年まで続き、ペーパーマスター氏はようやく2009年4月になってAppleで働くことを認められたのだ。だが結局、その後わずか16カ月という短い期間で同氏はAppleを去ることとなった。
一方、8月7日付のNew York Times紙は、ペーパーマスター氏のApple退職について、「iPod touchに関する問題も含め、ハードウェアに関する一連の問題の責任を取ったもの」と報じている。同氏の後任には、Macintoshハードウェアエンジニアリング担当上級副社長のボブ・マンスフィールド氏が就任した。同氏は、Appleの最高執行責任者(COO)のティム・クック氏の直属となる。
iPhone 4をめぐっては、「外周アンテナに触れると受信感度が落ちる」という問題が顧客やメディアの間で話題となっていた。eWEEK編集部が社内で行った限定的なテストでも、この現象を再現できた。Appleは結局、この問題を受けて、アンテナをカバーするためのバンパーの無償提供を決定している。
「2010年9月30日までにiPhone 4を購入したユーザーには、iPhone 4 Bumper、または特定の他社製ケースを無償で提供する」とAppleの公式サイトの専用ページには記されている。また、「iPhone 4を2010年7月23日より前に購入したユーザーは2010年8月22日までに申し込む必要があり、23日以降に購入したユーザーは購入から30日以内に申し込む必要がある」という。
手続きとしては、App Storeから専用のiPhone 4 Case ProgramアプリケーションをダウンロードしてiPhone 4で起動し、Bumperかケースかを申し込む仕組みになっている。
なお、Apple幹部によると、このアンテナ問題はiPhone 4の売れ行きには影響していないという。
同社COOのティム・クック氏は7月20日の決算発表電話会見で、アナリストとメディアに対し、「供給を増やしてほしいという人たちからの連絡で、わたしの電話は鳴りやまない。われわれは現在、作れるだけのiPhone 4をすべて販売している」と語っていた。また同社によると、2010年第3四半期のiPhoneの販売台数は前年同期比61%増の840万台に達したという。
ただし、iPhone 4をめぐる問題はまだ残っている。同社は7月23日、iPhone 4ホワイトモデルの発売を「2010年内」に延期すると発表し、その理由について、「当初予想していたよりも製造が難しいため」と説明している。
iPhone 4の製造に関するこの問題が、ペーパーマスター氏の退職に関係しているのかどうかは定かではない。いずれにせよ、その決定的な理由について、Appleはおそらく堅く口を閉ざしたままだろう。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.
Special
PR