AppleがSIMカードメーカーのGemaltoと協力して、iPhone用の特別なSIMカードを開発していると、Gigaomが10月27日に伝えた。同サイトは、欧州の複数キャリアの関係者からの情報としている。
この埋め込み型SIMカードがあれば、顧客はAppleから直接(店舗でもWebでも)iPhoneを購入して、購入時に携帯キャリアを選択できる。アクティベーション――通常はキャリアが行う――はAppleのApp Storeからのダウンロードでできると言われている。
Gigaomによると、このSIMは以下のようなものだという。
アップグレード可能なフラッシュコンポーネントとROMエリアを備えたチップに埋め込まれている。ROMエリアには、キャリア関連の情報を除いて、ITやネットワークセキュリティに関してGemaltoが提供するあらゆるデータが含まれる。フラッシュコンポーネントは、PCや専用デバイスへのローカル経由でキャリア関連のデータを受信し、端末をネットワーク上でアクティベートできる。Gemaltoは、キャリアのネットワーク上でサービスと電話番号を供給できるバックエンドインフラを提供する。
AppleがSIMとアクティベーションを提供すれば、顧客はキャリアではなく、Appleに連絡して手続きすることになる。そうなればキャリアの影響力や、2年契約による売り上げ保証もかなり減じることになる。顧客にとっては選択肢が増え、Appleにとっては売り上げが増える。
このモデルがうまくいき、米国に持ち込まれれば、AppleはGoogleのNexus Oneが失敗した手法で成功できるかもしれない。GoogleはNexus Oneを自社サイトで直販しようとしたが、うまくいかなかった。
「GoogleのNexus Oneと違って、顧客はWebで手続きしなくても、Appleストアに行って実機を確認でき、Genius Barでアクティベーションできる」とTechnology Business Research(TBRI)のアナリスト、ケン・ハイヤーズ氏は語る。「このやり方は米国でうまくいくと思う。業界を変えるだろう。今はキャリアが携帯電話の流通を押さえているが、Appleには市場を変える影響力がある」
携帯電話メーカーは従来ソフトメーカーと協力してきたが、Appleは端末とソフトの両方を提供し、支配するという手段をとった。このトレンドに、NokiaはMeeGoで、Hewlett-PackardはwebOSで、SamsungはBadaで追随している。今キャリアが演じている役割を受け持つというのは、iPhoneのエコシステムのすべての面を支配するというAppleの決定に沿っている。
欧州の大手キャリア5社は、自らの支配力の弱まりを感じ、新たなOSの開発を協議している。このOSが実現すれば、彼らは支配力を強めるとともに、アプリケーションによって売り上げを増やせるだろう。Appleが独自SIMカードで彼らの縄張りに踏み込んでくれば、これらのキャリアが独自OSを追求し、ほかの端末メーカーに協力を持ちかける機運が高まると、ハイヤーズ氏は言う。
「米キャリアへの影響は大きいかもしれない。Appleが大きな影響力を持つことになり、有利な価格を交渉できるからだ。同社が実際に価格の引き下げ分を顧客に還元するかどうかは分からないが、AndroidやRIMのBlackBerryなどのライバルをかわすためにそうする可能性はある」(ハイヤーズ氏)
Appleは米スマートフォン市場で優勢だが、調査ではAndroidが急速に勢いを増していることが示されている。comScoreによると、7〜8月にAppleのiOSはスマートフォンの24.2%に搭載されていた。一方、Androidは19.6%で、iOSと5ポイント差だ。同社の4月の調査ではiOSは25%を占めていた。AndroidがAppleのリードに食い込んでいることが分かる。
Appleが既にAndroidからの競争圧力を感じているとしたら、GemaltoのSIMを使った新しいモデルは、市場をApple対抗で団結する方向に追い込む可能性が高い。
「もしAppleがこのモデルを進めるなら、キャリアはスマートフォン市場におけるAppleの影響力を減じるために、もっと積極的にほかの端末メーカーを支持するだろう」(ハイヤーズ氏)
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